NHK大河ドラマ「麒麟がくる」第12話「十兵衛の嫁」。その前に前回の「将軍の涙」の名場面を再現。
近江の朽木に落ちのびた将軍・足利義輝。そこに今川と織田の和睦仲裁を要請すべく明智十兵衛が参内し…。
足利義輝:明智十兵衛 面を上げよ。
十兵衛:は…。
義輝:そなたに会うのは3度目じゃな。
十兵衛:は?
義輝:一度は本能寺の門前。そなたは藤孝と切り結んでおった。見事な腕前じゃと感じ入った。
十兵衛:は…。
義輝:2度目は藤英の館で声を聞いた。そなたは藤英にこう申していた。私が幼き頃 父から教わったのは将軍は武家の棟梁であれせられるということ。武士を一つにまとめ 世を平らかに治めるお方であると。更にこう申した。今 世は平らかではありませぬ。将軍のお膝元で将軍のご家臣同士が争われている。それに目を塞ぎ背を向けて関わりなしとされて…それでは世は平らかにならない。将軍がひと言お命じににならねば…争うなと。それを聞き わしがどれほど励まされたか分かるか? 美濃にそういう武士が一人いる。己は将軍であろう。何故 世を平らかにできぬ。ひと言 争うなと命じよと。そう申してわしの背をたたいた武士がいる。
十兵衛:恐れ多きことにござりまする!
義輝:もはや そのように叱ってくれる者がおらぬのじゃ。そなたの申すとおりじゃ。いまだに世は平らかにならぬ。わしの力が足りぬゆえ…このわしも かかる地でこのありさまじゃ。
三渕藤英:何を仰せられます!
細川藤孝:力が足りぬのは我ら!
近習:我らが非力ゆえ!
義輝:わが父 義晴はおのが病弱ゆえ わしが幼き頃より かんで含めるように仰せであった。強い子になれ 声は大きく よい耳を持ちよく学べ。さすれば立派な征夷大将軍になろう。世を平らかにできよう。さすれば麒麟がくる。この世に麒麟が舞い降りると…。わしは父上のその話が好きであった。この世に誰も見たことのない麒麟という生き物がいる。穏やかな世を作れる者だけが連れてこられる不思議な生き物だという。わしはその麒麟をまだ連れてくることができぬ。無念じゃ。明智十兵衛。
十兵衛:はっ。
義輝:この文の中身 しかと承知いたした。今川と織田の和睦の儀 もっともな申し出じゃ。両者に使いを出し和議を命じよう。この両者なら耳を傾けるはず。それでよいか?
十兵衛:はっ!
義輝:十兵衛。麒麟がくる道は遠いのう。
という流れからの第12話です。
【麒麟がくる】12話のネタバレあらすじ
将軍・義輝の思いに胸打たれた十兵衛は、やるせない思いを抱えて美濃に戻ってきた。
澄んだ冬空が広がるある日、十兵衛は従弟の左馬助に誘われ鷹狩りに出かけた。しかし、のんびりと馬を走らせているうちに皆とはぐれてしまい、昔、よく遊びに来ていた妻木壮にたどり着く十兵衛。
井戸端で休んでいると、ふいに声をかけられた。妻木家の娘、熙子(ひろこ)だった。寒さを凌ぐようにと囲炉裏で温めた石を十兵衛に渡す心優しい熙子。
一昨年の夏、光安の使いで米を運んできた時以来の再会だった。子どもの頃、お嫁においでと言って下さいましたという熙子に対して忘れたふりをした十兵衛だったが…。
十兵衛はそのことをしっかりと覚えていた。そして一つ年下の熙子も嫁入りしていないと聞き、叔父の光安も母の牧も自分の婚姻を望んでいる…。
今日 ここへ 皆とはぐれるべくしてはぐれてきたような気もします。この十兵衛の嫁になりませぬか。
頬を赤く染め、嬉しそうに涙ぐむ熙子だった。
天文二十年(1551年)、尾張と三河の国境で織田信秀と今川義元は、将軍・足利義輝の仲立ちで和議を結んだ。
この結果、今川は尾張に接した重要な拠点を手に入れることになり、織田の前途はもはや風前の灯となっていた。
その年の暮れ、末盛城で病に伏す信秀は、信長と信勝の息子二人を呼びつけた。それぞれの家老、平手政秀と佐久間盛重が後方で息を詰めて伏していた。
自分に万が一のことがあった場合、末盛城は信勝に与える。信長はこれまで通り、那古野城で力を尽くせ。
そう言い渡す信秀だったが、それに反発した信長はすぐに座を立ったのである。
帰蝶の待つ部屋に戻った信長は不満の思いをぶちまけた。この城も家老の佐久間も、お気に入りの柴田勝家も、大事なものは全て信勝に与える。
これは全て、溺愛する信勝に家督を継がせたい母上の企みだ、悔し涙をぼろぼろ流す信長を見て、帰蝶は居ても立っても居られず…。
信秀の居室に向かう帰蝶。ちょうどそこには土田御前と信勝が出てこようとしてて、隙を見て信秀の居室に入り込む帰蝶。
さらに部屋にいる侍女を嘘の用事で去らせると、意を決して信秀に呼び掛け…。
自分は尾張に命を預けた身、信秀にとって信長がどれほどの人間かを教えて欲しいと懇願。
信秀はしばらく黙っていたが、やがてうっすらと目を開き、かすかな声で何事か言った。
帰蝶は聞き逃さぬよう、必死で耳を寄せるのだった。
ふて腐れている信長の元に戻った帰蝶は信秀の言葉を伝えた。
信長は自分の若い頃に瓜二つだ。その長所も短所もまるで自分を見ているようで愛おしい。そして最後に、尾張を任せる、強くなれと。
信長はそれを聞き、感極まったように唇をかみ、黙って部屋を出て行ったのである。
天文二十一年(1552年)春、十兵衛と熙子の祝言が行われ、明智荘が喜びに包まれたのも束の間、利政が国衆を招集し戦の準備の命を出したのだ。
実は、美濃ではある事件が起きていた。
利政の元に、土岐頼芸自らが育てたという自慢の鷹が贈られてきた。ところがその鷹の爪に毒が仕込まれていたのである。
近習の一人がその犠牲になり、利政の怒りが爆発。
土岐様と一戦交えるまでじゃ。おのおの覚悟せよ!
重臣たちはどちらに就くか決めかねていたが、利政の嫡男・高政は迷うことなく土岐頼芸側に就くことを選択。
共に父上を倒すのじゃ!
思案に暮れる十兵衛であった。