テレビ朝日・帯ドラマ劇場「越路吹雪物語」(27話2月13日)。身体検査で一度ははじかれた森継男にまで召集令状が届いて出征。
見送るお時さんが「待ってますから。森さんが宝塚に…編集部に帰って来るのちゃんと雑誌守って待ってますから」に、目頭が熱くなる昼下がり。
しかし時すでに遅し。日本各地にアメリカ軍による空襲があり、やがて広島と長崎に原爆が落とされ、昭和20年8月15日、ついに日本は敗戦を受け入れて戦争終了。
もう空襲はないって事だよね? もう誰も兵隊に行かなくていいって事だよね? 外地に兵隊に行った人は帰ってくるって事だよね? 満州にいた人も帰ってくるよね? 八重ちゃん帰ってくるよね?
コーちゃん美保子の楽観的予想が、逆に幼馴染の旧姓片桐八重子(やえちゃん)の苦難の道を予感させ、やえちゃん、生きてて欲しいと願うテレビの前のおじさんおばさんたちです。
それにしても今回はナレーションが異様に長く、真矢ミキさん、お疲れさまでした。それに、コーちゃんたちの安来節の見事さ。
あのコスチュームと踊りは、絶対に滝本美織さんの女優歴史に刻まれること、間違いなし。 朝ドラ「わろてんか」の安来節乙女組に完勝です。
それから、今頃SNSで話題になっているようですが、中川慶子役(芸名:淡島千景)で出演している花乃まりあさんが、女優の綾瀬はるかさんにそっくりな件。
これについては、すでに書いておりますので、よければこちらをご参照ください。
越路吹雪物語(23話2月7日)花乃まりあ登場。せっちゃんはミスワールド日本代表
出典:テレビ朝日「越路吹雪物語」番組公式サイト
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越路吹雪物語(27話2月13日)
美保子:お時さん!森ちゃんに召集令状が来たって。
時子:えっ…。
信子:遅い遅い!
慶子:順番でやってるからちょっと待ってね。
美保子:うん。
淑子:私まだ刺してない人いるか探してくるね。
美保子:あれ?肝心の森ちゃんは?
信子:ちょっと風に当たってくるって。
時子:中庭だと思う。
慶子:女だらけで恥ずかしくなっちゃったみたいですよ。
美保子:『歌劇』の編集部員のくせに?ねえお時さんちょっと呼んできてよ。そろそろ稽古に行かなきゃなんない子もいるしさ。
時子:私?
美保子:うん。ちゃんと顔見せろって。
信子:うんそりゃそうだ。今まで散々取材に協力してあげたんだもんね。それに森ちゃんもいい記事書いてくれたし。
慶子:そうそう。
セツ:無愛想だけど記事に愛があるんですよね。
時子:わかった。
美保子:おっ私も私も。
信子:ねえねえねえねえ。森ちゃんってさお時さんの事好きなんじゃないかな。
美保子:はっ?
信子:だって森ちゃんお時さんが来てからちょっと変わったじゃない?丸くなったっていうか。
セツ:私もそれは思ってた!
信子:でしょ?お時さんもまんざらじゃなかったりして。
美保子:ないない。
慶子:なんでわかるんですか?
美保子:お時さん見てればわかるよ。
信子:どうだか。コーちゃん人の恋には鈍そうだからな~。
美保子:何よそれ。
信子:ほい。
時子:森さん。たばこ吸われるんですね。知らなかった。
森継男:今日はなんとなくね。
時子:みんな待ってますよ森さんの事。今も…この先も。それ吸い終わったら戻ってきてくださいね。でないと私が怒られます。
森継男:小さい頃からずっと…体が弱かった。子供の頃は自分で勝手に大人になれば普通になると思ってた。でも大人になってわかったのは僕の心臓はポンコツだって事だった。
回想秋子:僕の心臓ポンコツになっちゃったみたいだって。
森継男:今まで悪かったな。いろいろ嫌な事を言って。駄目な人間ほど誰かを見下したくなる。それが僕だ。
時子:そんな事ありません。確かに森さんの言う事に腹が立った事もあります。それでも森さんの事を駄目だとかポンコツだとか思った事ありません。だって森さんの心臓頑張って動いてるじゃないですか。森さんだって頑張って生きてるじゃないですか。
美保子:お時さんと森ちゃんはさなんかもっと…違うと思う。
信子:違うって?
美保子:うん…。恋とかじゃなくて人と人っていうか…。第一お時さんに恋をしてドキドキワクワクしてるようなそんな感じ全然ないもん!そんなの恋じゃない!
森継男:お前とコーちゃんが仲いいのよくわかる。
時子:…えっ?
森継男:全く逆の性格のようで実は似てる。
時子:私とコーちゃんが?そんな事ありませんよ。だって私あんなにチャーミングじゃないですし。
森継男:まあ自分ではわからないものなのかもな。この戦争もうまずいかもしれない。
時子:えっ?
森継男:こんな体で一度は徴兵からはじかれた僕までも出征させられるんだ。そこまで日本軍は切羽詰まってるって事なんだと思う。戦争が続いても…いつか終わるとしても…この先日本はどうなるんだろうな…。さあ戻るか。うるさくやいのやいの言われるのがちょっと憂鬱だけど千人針のお礼はちゃんとしとかないとな。
時子:待ってますから。森さんが宝塚に…編集部に帰って来るのちゃんと雑誌守って待ってますから。
森継男:もしお前がその時編集長なんかになっていたらすぐに他の仕事を探す。女の下でこき使われるなんてごめんだからな。
時子:だったら私は編集長権限として絶対に辞めさせません!優秀な編集部員は必要ですから!
それから時子も千人針を心を込めて刺し森の武運長久を祈りました。森はその祈りの布を大事そうに抱え宝塚をあとにしたのでした。体の弱さ故にお国のために戦場で戦えない事があれほど悔しかったのが嘘のように今はえも言われぬ不安を胸に抱きながら。
慶子:満州の愛し君は元気ですか?
美保子:うん。2人目の子供がおなかにいるって。
慶子:えー!コーちゃんさんと同い年なんですよね?この八重ちゃんって。年は同じでもいろんな人生があるもんだなあ~。
美保子:本当。でもさちょっと残念。
慶子:何がですか?
美保子:前はねきれいな絵葉書で送ってくれてたんだけど最近は普通の色気もなんにもない葉書なんだもん。
慶子:満州もこっちと同じように物がないんですかね。
美保子:まあたまたまかもしれないけどね。
慶子:でも満州には空襲ないんですよね?それはうらやましいよなあ~。
美保子:うん…。
信子:コーちゃん!劇場で公演出来る事になったって!
美保子:えっ!!大劇場返してもらえたの?
信子:あっ…それは無理。でも宝塚映画劇場で定期公演してもいいって許可が下りたって!
美保子:定期公演!
信子:そう!
慶子:大劇場でやってた演目が出来るって事ですか?
信子:そう!!
慶子:やったー!!宝塚の舞台に立てる!!
3人:やったー!!
こうして宝塚歌劇団は映画館の舞台で公演を打つ事になりました。それは大劇場とはあまりにも舞台の規模が違う細々としたものでしたが、それでもコーちゃんたちにとっては夢のような出来事だったのです。しかし米軍による市街地を狙った空襲が勢いを増して度重なり、宝塚歌劇団の映画館での公演も中止を繰り返す事になりました。
美保子:空が真っ赤…。こっちにも来るかな。
時子:空襲警報鳴ってないから大丈夫よ。
美保子:ねえあの噂って本当かな?
時子:噂?
美保子:この前の大阪の空襲のあと帰っていくB29が上空からビラまいたって。
時子:ああ…歌劇団があるから宝塚には爆弾落としませんよっていう?
美保子:うん…。美しいお嬢さんたち心配しなくていいですっていうあれ。本当かな?
時子:どうだろう?私はそんなビラ見た事ないし。
美保子:でももし本当だったら私たちずるしてるみたいに思われちゃうのかな。
時子:そんな事…。
美保子:だってきっと…あの下ではたくさんの人が…。
生きている事、戦争の中を生き延びている事がずるいなんてそんなわけない、そう言いたい時子でしたが戦争でいとも簡単に多くの命が奪われていく現実を前に、それを口にする事はどこかためらわれるのでした。
6月23日沖縄戦が終結。日本本土への空襲が繰り返され各地の都市が焼け野原と化していきそして8月6日…
広島に原子爆弾が投下され続く9日長崎にも原子爆弾投下、そして8月15日、日中戦争からの8年にわたった戦争が終わりました。
美保子:そうなんだ…。あれは負けたって言ってたんだ。時ちゃんわかった?
時子:うんなんとなくね。
美保子:もう空襲はないって事だよね?
時子:ええ。
美保子:もう誰も兵隊に行かなくていいって事だよね?
時子:そうね。
美保子:外地に兵隊に行った人は帰ってくるって事だよね?
時子:うんそうね。
美保子:じゃあ満州にいた人も帰ってくるよね?八重ちゃん帰ってくるよね?
秋子:八重ちゃんって?
美保子:新潟の頃の幼なじみ。結婚して満州に行ったんだけど…あれ?満州国って戦争終わってどうなるの?まあいいや。とにかく戦争は終わったんだもんね。
時子:うん。
美保子:八重ちゃんにも会える。
日本の海軍に接収されていた宝塚大劇場は敗戦によって今度は米軍に接収されてしまいました。
●宝塚で舞台練習
開けなさい!開けなさい!
どうしたのだハーミア。バラ色のほほが色あせている。
我慢が出来ないのです。身分が違うというだけでまことの恋が引き裂かれる!
あの人が行ってしまう!
それでも宝塚歌劇団はその灯を消す事なく宝塚映画劇場や大阪の劇場での公演を続けていました。演目は戦前の華やかさを取り戻し、それに加えて戦時中は敵性音楽として禁じられていた海外の楽曲も使えるようになると、ジャズを中心とした新しい音楽があふれる舞台も誕生し、確実にその活気を取り戻していました。
私のジャーニーよ
とはいえ全てがうまくいっていたわけではなく…
美保子:もう駄目だ…。おなかがすきすぎてめまいがする…。
慶子:田舎のある子はいいよなあ…。お米や野菜や干物を送ってもらえて…。
美保子:はあ…実家が東京の街中じゃなんにもないもんねえ…。
慶子:コーちゃんさん なんかマダムからの差し入れとかないですか?
淑子:ここにもいましたよ東京組が。
悠子:お昼もすいとんちょっとだけだったでしょ?もうおなかすいちゃって…。
淑子:どうしたんですか?
美保子:なんか匂う…。
慶子:そう?
美保子:魚焼いてる匂いだ!ああ!
悠子:そういえばさっきセッちゃんがチコさんの部屋に七輪抱えて入っていったの見ました!
美保子:それだ!
慶子:チコさんの実家って確か海のそば!
美保子:よし!魚をすくいに行くよ!
悠子:えっ!?
美保子・慶子・淑子・悠子:♪アラエッサッサァー 寄ってらっしゃい見てらっしゃい!お代の魚は見てのお帰りに!いよっ!
戦後日本の食糧難は戦時中にも増して厳しいものとなっていました。それでもコーちゃんたちはたくましく笑ってそれを乗り越えていくのでした。あともう少し辛抱すればまたあの大劇場の舞台に戻れると信じて。
内田部長:こっちにも載ってるぞ!「越路吹雪はショー・ストッパーである」
平山編集長:おっそっちもですか。
内田部長:いい響きだなあショー・ストッパー!
時子:あの…ショー・ストッパーってなんですか?
平山編集長:歌手が一曲歌い終わったあと客の拍手が鳴りやまなく次の曲にいけずにショーがストップしてしまう。それほどの歌を歌う歌手の事だよ。
時子:コーちゃんがそうっていう事ですか?
内田部長:ああ。耳が肥えている進駐軍の米兵たちがそう認めてるんだからたいしたもんだ。こりゃ将来が楽しみだなあ。
時子:へえ…コーちゃんが。
そして翌1946年昭和21年の4月、宝塚大劇場がついに歌劇団の元へと返ってきました。ここから戦後の宝塚歌劇団の黄金時代が始まりそれはまた越路吹雪の輝かしい時代の始まりでもありました。しかし光には常に影がつきまとうもので…コーちゃんがそれを知るのはもう少し先のお話。
越路吹雪物語キャスト紹介とネタバレ感想を最終回まで(大地真央&瀧本美織主演)
※このコラム内の写真は、テレビ朝日「越路吹雪物語」公式サイトからの引用になりますので予めご了承お願いいたします。
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