なつぞら(103話7月29日)
●新宿「風車」
昭和39年のお正月 なつはまた新しい年を迎えました。
亜矢美:なっちゃん 今年でいくつになるんだっけ?
なつ:今年の夏で27です。
亜矢美:27か…。
なつ:亜矢美さんは?
亜矢美:うん…! なっちゃん… このまま なっちゃん 花嫁衣装は着ないつもり?
なつ:亜矢美さんは?
亜矢美:忘れたちゃったな 年なんて。
なつ:結婚は?
亜矢美:忘れちゃったよ ハハハ…。
なつ:いつ忘れたんですか? ちょっ…!
毎年1月3日に 晴れ着姿で新年の挨拶に集まるのが東洋動画の恒例となっていました。
●東洋動画スタジオ
スピーカー:「東洋行進曲」♪世界に巻き起こす
大杉:漫画の皆さん 明けましておめでとうございます。
一同:明けましておめでとうございます。
大杉:まず皆さんにご報告したいことがあります。私 大杉満は本年より東洋動画の社長を退きます。
(どよめく声)
大杉:そして 会長になります。
(ざわつく声)
大杉:従って 私が社長として皆さんに挨拶するのはこれが最後となるでしょう。私はね 皆さん 映画会社の社長になるとは思ってもみなかった。子どもの頃から映画 活動写真の類いを見て育ったわけではありませんでしたから。私が子どもの頃から好きだったのは そろばんです。
(笑い声)
大杉:そろばんがうまくなること。それが世の中の役に立つことになると信じて生きてきました。例えばね いい鉄道とはどんな鉄道か 分かりますか? それはたくさんの人が利用する鉄道のことです。そろばんのできる鉄道マンは いいレール いい列車をつくることだけを考えない。レールの周りに家を建て 買い物ができる店を作り 娯楽をつくる。つまり街をつくって 人々を呼び込まなければ いい鉄道マンとは言えないのです。皆さんには 子どもたちが喜んで集まってくれる街をつくってもらいたい。どうか漫画の皆さん いい街づくりをして下さい。ただし! 予算と期日を守りながらそれを成し遂げて下さい。それでは本年もよろしくお願いいたします。乾杯!
一同:乾杯!
(拍手)
♪
(拍手と歓声)
神地:しかし あそこまで言われちゃうと かえってすがすがしいよな。
なつ:間違ったことは言ってないように思うけど…。
神地:間違ってないからやっかいなんだ。金にならない芸術はつくるな 勘違いはするなって露骨に言われたわけだからさ。
なつ:芸術をつくってるつもりはないでしょ 別に。
坂場:しかし 作り手の理念と経営者の理念を一緒にされては困りますよ。芸術的な野心がなかったら 我々の仕事は向上していきませんから。
下山:まあ まあ まあ まあ… 正月からそんな難しい話やめようよ。
茜:そうですよ。私はいかにも経営者らしいスピーチだと思っただけだわ。
神地:さすが茜ちゃん。
堀内:お前 そのさすがって バカにしてるだろ。
神地:そんなことないですよ。
茜:そんなことないわよ。
神地:ね。
茜:ね。
堀内:えっ…!
なつ:日本の漫画映画は あのディズニーに対抗した あの人のそろばんからはじき出されたものと言えるんですよね。そのそろばんがなかったら私もここにいないわけですね。
仲:なっちゃん。
なつ:はい。あ…!
仲:こちらが猿渡君と一緒にテレビ漫画「百獣の王子サム」の原画を担当している奥原なつです。
大杉:奥原なつさんか。どうもご苦労さん。好調だね テレビは。
なつ:はい ありがとうございます。
大杉:10年前 私はアメリカを視察して いずれ日本もテレビの時代が来ると読んでいた。その時こそ このスタジオが生きると思って造ったんだ。その時はついに来たんだよ アータ。
なつ:はい。
大杉:映画をつくる人間には まだテレビを電気紙芝居などと言って見下している者もいるがね 必ずそんなことは言ってられなくなる。それに先駆けてテレビ漫画こそ その電気紙芝居のパイオニアになるものだ。漫画と紙芝居だけにね…。違う?
井戸原:はい おっしゃるとおりだと思います。
なつ:私もそう思います。
大杉:うん。頑張ってくれたまえ。
仲:彼が一緒に演出をしている坂場一久君です。
大杉:ああ サカバ君か アータもご苦労さん。
坂場:あっ… ありがとうございます。
大杉:ハハハ… じゃ 奥原なつさん。奥原なつ…? 奥原なつ… あっ。
なつ:えっ!
大杉:アータのお兄さん 元気かね?
なつ:あ… 思い出して頂けましたか…?
大杉:アータを面接で落とさなくてよかったよ。ハハハハハハ…。
(笑い声)
なつ:落としたことは忘れてるんだ…。
●喫茶「リボン」
坂場:終わったな これで。
なつ:何がですか?
坂場:僕も君も もう映画には戻れないということだ。
桃代:そうなの?
なつ:そんなこと まだ分からないでしょ。
坂場:それをわざわざ知らせるために 仲さんと井戸原さんは 僕たちを大杉社長に紹介したんですよ。
下山:いや… そりゃ考え過ぎだって イッキュウさん。
坂場:僕が仲さんに嫌われていることは確かでしょう。
下山:まあ 仮にそうだとしてもだ…。
茜:イッキュウさんはともかくとして どうしてなっちゃんまで? 映画じゃなくてテレビ追いやったってことでしょ? 仲さんがそんなことするかしら。なっちゃんの才能を誰よりも買ってるのは仲さんなのに。
なつ:そんな才能なんてないですけど 仲さんがそんなことするとは思えません。だって 茜さんだって一緒だし。
坂場: 茜さんは いずれは戻れることもあるでしょう。
なつ:どうして私はないんですか?
坂場:君の場合は…。
桃代:あっ イッキュウさんとつきあってるから?
なつ:えっ?
桃代:いずれ 2人は結婚するって思われてるからってこと?
なつ:ちょっと。
坂場:それがあくまで うわさですけどね。
なつ:それは無責任でしょう。
坂場:無責任?
なつ:ただのうわさだと思うなら どうして否定しないんですか?
坂場:君は すればいいよ…。
なつ:えっ?
茜:ねえ 実際はどうなのよ? 2人はつきあってるんでしょ?
なつ:違います。ね?
坂場:はい。
なつ:はあ… どうして そんなうわさが流れたのかな…。
桃代:だってイッキュウさんとなっちゃんほど 馬が合ってる人いないでしょ?
神地:確かに合ってる 合ってる。
なつ:ねえ もしかしてモモッチが仕上課で流してるんじゃないでしょうね?
桃代:違うわよ。なかなか進展しないから最近は言ってないわよ。
なつ:最近って…!
坂場:仲さんに言えばいいことです。僕とは何も関係ないと。仲さんに そうあなたは主張して下さい。
なつ:そんなことは言えません!
坂場:えっ?
なつ:そんなこと言えば 仲さんを疑ってるみたいじゃないですか!
下山:そうだよ。そんな人間じゃないって 仲さんは。それにそこまでイッキュウさんを憎む必要だってないだろ?
神地:分かりませんよ。自分の作品を守るためなら。
下山:えっ?
神地:うちの映画はますますダメですよ。仲さんに頼った動物ものばかりで 童話的な世界から抜け出そうとしない。代わり映えしませんよ あれじゃ いつまでたっても。俺一人が頑張ったってどうしようもない。仲さんもかわいそうだ。
下山:俺一人って またおっきいこと言うね。
神地:また破天荒な「ヘンゼルとグレーテル」みたいなものを作りたいな。今度はちゃんとした長編映画で。
坂場:それが 今は許されていないということです。
なつ:だけど 今はテレビを頑張れってことじゃないですか。
坂場:あなたは今のテレビで満足していますか?
なつ:テレビのパイオニアになれって大杉社長の言葉に 私はうそがないと信じます。
下山:そう それでこそなっちゃんだ!
坂場:一番大事なのは 予算と期日を守ることですか?
なつ:それでも頑張るんです!
♪
なつ:全く あんなに煮えきらないやつだとは思わなかったわ…。つきあってるのか つきあってないのか そのくらいはっきりしてよ…。
●新宿「風車」
なつ:ただいま…。
一同:お帰り!
なつ:皆さん 明けましておめでとうございます。
一同:おめでとう!
カスミ:ございます!
なつ:元ムーランルージュの新年会ですか。いいですね。
茂木:なっちゃん ほら おいで おいで。おお 晴れ着姿 ほら ちゃんと見せてごらん ほら…。
なつ:茂木社長もいらしたんですか。
茂木:いや いるよ。
なつ:藤正親分 おめでとうございます。
藤田:うん。きれいだ。
なつ:やめて下さい。
藤田:このまま嫁にも行かねえなんて もったいねえぞ。
茂木:いやいや… 嫁に行く方が もったいないです。
藤田:ハハハハ…。
カスミ:ここには もったいない女ばかりがいるわよ。
レミ子:そのとおりです。
咲太郎:まあ なつも座れよ。嫁に行かなくてもいいからさ。
なつ:何それ。その前に ちょっと着替えてくるわ。
茂木:そのまんま… そのまんま ちょっとお願い 一杯だけ お酌して。こんなきれいなべべ着て もう ハハ…。よし じゃ…。
なつ:はい どうぞ。
茂木:はい ありがとう。
咲太郎:指名料 取るからね。
茂木:どうぞ どうぞ。嫌なことは しめい料…。ね なっちゃん。
なつ:ダジャレは控えて下さい。
カスミ:ねえ 雪次郎君は田舎に帰ったんだって?
なつ:はい。
松井:あいつももったいないよな せっかく吹き替えで売れだしたのによ。
島貫:いや それなのに辞められたんだから大したもんだ。偉い。
松井:お前も辞められたらよかったのにな。
茂木:今年はせっかく うちの新しいビルも完成して 角筈屋ホールっていう劇場まで出来るのに…。雪次郎君にも亀山蘭子と一緒に立ってほしかったな… 残念だ。
なつ:帯広のお菓子屋さんを継ぐという もともとの夢があったんです。だから残念じゃありません。
松井:亀山蘭子と何かあったんじゃねえのか?
島貫:スキャンダルか…。
藤田:亜矢美にもあったよな 昔。
なつ:えっ… えっ?
亜矢美:ちょっと…。
なつ:スキャンダルが?
藤田:スキャンダルじゃねえ。あれは悲恋だ。
藤田:そうよ…。その悲恋が岸川亜矢美を一躍 ムーランのスターにしたことは間違いねえ。新宿で知らねえ者はいねえだろ。
亜矢美:やめて下さいよ そんな昔の話。
なつ:ダメですか? 亜矢美さん その話 聞いたら。
亜矢美:むか~し むか~しの思い出。
なつ:亜矢美さんが結婚しないのは その思い出だあるからなんですか?
なつよ 亜矢美さんの恋 今の君は何を思うのかな。
●感想
華丸師匠の指摘通り、大杉社長のスピーチが長い!というかセリフが多くてお疲れさまです、角野卓造さん。
新年会に結婚式etc. 役職や立場が上の人ほどスピーチは簡潔にという教訓を得た今日は、7月29日。東京は梅雨明けして週の頭の月曜日。お互いに頑張りましょう。
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●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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