なつぞら(124話8月22日)
●西荻窪・坂場家
坂場:おかしいな…。もうこれ以上 痛みの間隔が縮まらなくても病院に行った方がいいんじゃないか?
なつ:どうしよう 陣痛じゃなかったら…。
坂場:とにかく病院に行こう。な。
(ブザー)
坂場:えっ? 誰だ こんな時に。
なつ:出て。
坂場:いいよ…。
なつ:早く出て!
坂場:あっ!
富士子:おはようございます。
なつ:母さん!
坂場:あっ あの…。
富士子:なつ! どしたの?
なつ:母さん 助けて…!
坂場:どうぞ…。
なつ:あっ 父さん… じいちゃんまで!
泰樹:おう…。
剛男:なつ 大丈夫か?
泰樹:何じゃ… 産まれそうなのか?
富士子:痛みはどう?
なつ:じいちゃん見たら… ますます母牛になった気分だわ。
泰樹:あ?
(牛の鳴き声)
なつ:も~…。
♪
富士子:大丈夫 おなかが張ってるだけ。赤ちゃんは何ともないから 体をよ~く温めて楽にしてれば… どう?
なつ:うん… 何か痛くなくなってきたみたい。
富士子:多分 本当の陣痛じゃないんだわ。私にも覚えがあるから。陣痛の前に その兆しみたいに 痛くなることがあるんだって 体がお産に向けて準備してるんだわ。
なつ:そうなの?
富士子:うん。本当の陣痛は あんた こんなもんじゃないわ。
なつ:そうなんだ よかった…。
坂場:助かりました。もう僕には何が起きてるのか 全く分からなくて…。
剛男:そりゃしかたないさ。男はこういう時 慌てるわばかりだからな。
なつ:女でも経験してないことは 慌てるばかりだわ。
泰樹:お前は何べんも子牛を産ませてるでねえか。学校で習わんかったか?
なつ:勝農では 陣痛の兆しまでは習わんかったわ。牛にも そったらことがあんのかい?
泰樹:うん? いや 知らん。
なつ:知らんのかい。
泰樹:ハハハ…。おっ いいもん持ってきた。
なつ:うん?
泰樹:向こうを出る時に 子牛を産んだ牛がいてな その初乳で作った。ハハ… ほれ。牛乳豆腐じゃ。
なつ:うわ~!
坂場:牛乳豆腐?
剛男:牧場でしか作れないもんだ。
泰樹:滋養をつけるのは これが一番じゃ。
なつ:ありがとう じいちゃん…。わざわざ それを届けに来てくれたのかい こったらとこまで。
泰樹:子牛が生まれたからな ハハハ…。
富士子:どうしても 自分で持っていくって 聞かないの。
泰樹:そんなこと言ってねえべ。
富士子:言ったしょや。お前らだけで行くのかって さも不満そうに。
泰樹:聞いただけだ。
剛男:もう80過ぎて 汽車の長旅は疲れるだろうから 飛行機にしますかって聞いたら それだけは絶対に嫌だって。
なつ:飛行機怖いの?
泰樹:ん? そんなことねえべ。
富士子:じいちゃん それでも会いたかったのよね なつに。
泰樹:まあ これが最後になるかもしれんからな。
なつ:もう そったらこと言わんでよ。でも じいちゃん… 私もじいちゃんに会えてうれしい。ありがとう。こんな狭い部屋じゃね…。
剛男:心配するな。父さんたちは どっか安い宿 探すから。
なつ:したけど…。
坂場:あ… あの もしよかったら お義母さんだけでも ここに泊まって頂けませんか? そしたら なつも僕も安心しますから。
富士子:いいの?
なつ:できたら そうして。お願い 母さん。
富士子:分かった。
なつ:ありがとう。
坂場:あっ ごはんを作ります。なつもまだ 何も食べてないので。
富士子:私も手伝うわ。
坂場:ああ…。
富士子:まあ 台所 きれいに使ってるんだね。
坂場:ああ… いえ。
富士子:坂場さんが いつもごはん作ってくれてるの?
坂場:交代制でやってますけど 僕の方が忙しくないので。
富士子:あっ そのノート。
坂場:いつもお世話になってます。
富士子:本当かい? 適当な料理で驚いたでしょ?
坂場:はい。
富士子:うん?
坂場:あ いえ…。
富士子:アッハハハハ…。
剛男:坂場君は 今でも家で仕事してるのか?
なつ:うん…。
剛男:したら 子どもが生まれても なつが働きに出て 魚場君がここで赤ん坊の世話をするってことかい?
なつ:うん… しばらくは。
剛男:しばらく?
なつ:1年後には イッキュウさんも 仕事に出る予定なんだわ。
剛男:したら 子ども どうすんだ?
なつ:どこかに預けるしか…。そういう保育園を探すしかないの。1歳くらいになったら 預かってくれる所もあるって聞くから。
剛男:1歳の赤ん坊をかい…。
なつ:したけど… しかたないしょ そったらこと言ったって…。
泰樹:それも覚悟して結婚したんだべ。今更 弱音吐いてる場合でねえ。
なつ:うん… そうだね。じいちゃん。
泰樹:うん…。
坂場:ちょっと味を見て下さい。
富士子:うん…。 あっ 私のよりおいしいわ。
坂場:いやいや… お義母さんの味を作りたいんですよ。
富士子:なんも。坂場さんの味になればいいしょや。
坂場:はい…。
♪
なつ:う~ん 懐かしい…。
富士子:イッキュウさんも食べてごらん。
坂場:あ… はい。うん… 豆腐というより あっさりしたチーズですね。
剛男:それ 乳製品だからね 一応。あっ そうだ! たんぽぽバターも持ってきたんだ!
なつ:本当?
富士子:えっ 早く出さなくちゃダメでしょや。すぐ冷蔵庫入れないと。
剛男:いや すまん。牛乳豆腐ですっかり忘れてたわ。ほら。
なつ:わ~! ハハ…。夕見子は今 農協じゃなくて こっちの工場に勤めてるんだよね?
剛男:うん。そこで牛乳も市場に出したいと思ってな 夕見子は今 一生懸命 紙のパックの開発に乗り出してるさ。
なつ:ああ 牛乳の紙パックか…。本格的に たんぽぽ牛乳に向けて やってるんだね。
剛男:うん。
なつ:いつか こっちでも買えるようになればいいのに。
坂場:あっ しまってくる。
なつ:ありがとう。
富士子:したけど 夕見子もこれからどうなるか…。
なつ:どしたの?
富士子:実はね… できたの 夕見子にも。
なつ:ん?
富士子:赤ちゃんが生まれるの。
なつ:うそ!
剛男:それが本当なんだ。
泰樹:うん。
富士子:つい最近 分かったばかりなんだわ。
なつ:なして すぐ教えてくれないの!
剛男:だから なつには東京行って知らせるべって。
なつ:えっ…。で いつ生まれるの?
富士子:今年の秋だって。なつが春で、夕見子が秋。
なつ:へえ~ したら同い年でないの!
富士子:そうだわ。まるであんたら2人とおんなじだわ。
なつ:うれしいわ!
坂場:おめでとうございます。
剛男:あっ ありがとう。
なつ:したら 雪次郎君も大喜びでしょ。
富士子:それが大変みたい。
なつ:えっ 大変?
●帯広「雪月」
とよ:あんたね 仕事仕事って うちの跡取りに何かあったらどうすんの!
夕見子:はあ? 誰が跡取りって決めたんですか? 私は跡取りを産むつもりはありません!
とよ:産むつもりはなくても 生まれてきたら そりゃ もう立派な跡取りなんだわ! 男でも女でもね!
雪次郎:ばあちゃん やめてくれや! 俺が仕事に行っていいって言ってるんだも。
雪之助:雪次郎 これはもう お前だけで決めていいことじゃねえべや。
妙子:夕見子さん どうしても仕事を続けたいって言うなら 私を殺してからにしてちょうだい!
雪次郎:そったら問題でもねえべ!
とよ:いい覚悟だ。継がせる気がないなら この店 潰してから行けばいいべ!
雪次郎:勝手に潰すな!
夕見子:はあ~?
雪之助:諦めれ 雪次郎。これはもう 男には止められんわ。
雪次郎:おやじ… おやじ!
夕見子:嫌~!
雪次郎:おやじ!
夕見子:嫌~!
●西荻窪・坂場家
なつ:夕見 大丈夫?
富士子:ハハ 大丈夫さ。
なつ:まあ そうだね。みんな うれしいんだね。
富士子:うん。
泰樹:それだけじゃねえんだ。照男にもできたんじゃ。
なつ:えっ… 子どもが?
剛男:実はそうなんだ。
なつ:まさか 照男兄ちゃんにもできたの!?
富士子:まさか! 照男じゃなくて 砂良さんにだわ。
なつ:そんなことは分かってるよ 母さん。
富士子:えっ? あ… そうね。
なつ:えっ 2人目?
泰樹:そうじゃ。来年の1月に生まれる。
なつ:あ… したら冬かい? すご~い!
富士子:本当に不思議なこともあるもね。
坂場:ちょっとしたベビーブームですね。
泰樹:まあ 牛にはよくあることじゃ。
剛男:いや 牛舎の話ではないですから。
泰樹:ハハハハ…。
なつ:じいちゃん 牧場はどう?
泰樹:牧場はもう照男のもんじゃ。菊介も砂良さんもおる。わしのやることはもうない。
なつ:じいちゃん…。
泰樹:照男が立派に わしの夢を継いでくれた。ハハハ…。
(ブザー)
なつ:誰か来た。
坂場:今度は誰だろ? は~い。
咲太郎:よっ!
光子:こんにちは。
坂場:あっ お義兄さん 光子さん。
富士子:あら。
坂場:あ… どうぞ。
咲太郎:あれれ これはまた 皆さん おそろいで!
剛男:咲太郎君 どうも。
咲太郎:こちらこそご無沙汰してます。
光子:北海道から出ていらしてたんですか?
富士子:今朝 着いたばかりで…。あっ ご結婚おめでとうございます。
咲太郎:あ… また たくさんのジャガイモ 送ってもらってありがとうございます。
光子:本当にすみません。本当においしいですね。北海道のジャガイモは きっと世界一です。
泰樹:牛乳も。
光子:あ… はい。牛乳も。
剛男:そんなことしかできなくて。
咲太郎:何よりもうれしいですよ。
光子:ちょっと あなた いつまで手に持って話してるの。
咲太郎:あっ そうだ なつ いろいろ買ってきたぞ ほら。
なつ:え~!
一同:おお~。
咲太郎:ベビーベットも明日届くからな。
なつ:お兄ちゃん 光子さん ありがとう!
坂場:すみません。
咲太郎:まあ こんなことしかできないけどな 俺も。
泰樹:まるで咲太郎に孫でも生まれたみたいだな。
富士子:ヤキモチ焼かなくてもいいしょや。
泰樹:なんも焼いてねえべや!
(笑い声)
咲太郎:まあ とりあえず…。
坂場:ありがとうございます。
♪
咲太郎:それじゃ 宿なんて言わずに うちに泊まって下さいよ。部屋は余ってますから。あ… といっても 俺の家じゃなくて 彼女の家ですけど。
光子:どうぞ いらして下さい。
剛男:いいんですか?
光子:もちろんです。
咲太郎:何日でもいて下さいよ。
なつ:お兄ちゃん ありがとう。
咲太郎:こうやって みんな お前のそばについてるんだ 安心して産めよ なつ。
なつ:うん…。
♪
なつ:ううっ… ああっ…。
富士子:なつ! なつ!
なつ:母さん 痛い…!
富士子:大丈夫 大丈夫… イッキュウさん!
なつ:ううっ…。
富士子:イッキュウさん!
坂場:はい?
富士子:陣痛が来たみたい。
坂場:えっ!
なつ:ううっ… 痛い… この前と全然違う!
なつよ いよいよ生まれるのか? 私の孫が…。
●感想
当初は「坂場さん」で、途中から「イッキュウさん」に変わる、義母の婿への呼び方。この辺りの微妙な物言いが、実社会でも参考になるわいと。
それにしても家族とはいいもので、子どもの頃、あれだけ孤独だったなっちゃんの周りには、いまやたくさんの人がいて、出産を応援してくれている…。
引きこもりの人に、ぜひとも見てほしいと思う「なつぞら」です。
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●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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