なつぞら(44話5月21日)
雪次郎:人がいっぱいだわ。
なつ:ねえ~。
昭和31年 東京・新宿です。新宿は戦後の焼け跡から復興し デパートや飲食店 大型書店や映画館 さまざまな娯楽施設が立ち並ぶ文化の中心地 戦前の浅草に代わって 新しい庶民の街になっていました。なつはまだ 雪残る北海道を旅立ち 新しい春を迎えていたのです。採用試験の6月までの間 なつは川村屋にお世話になることになりました。
●新宿「川村屋」
雪之助:すっかり変わったな。角筈という町名もなくなって…。あ… けど 今も同じ場所に川村屋があるだけでほっとする。さあ 行くべ。
雪次郎:うん。
野上:いらっしゃいませ。
雪之助:あ… 野上さん!
野上:えっ?
雪之助:いや… ハハハ お懐かしい!
野上:ちょっ… ちょっとやめて下さい。あっ 北海道の?
雪之助:ええ… 小畑です。小畑雪之助です。
野上:あまりに老けてて分かりませんでした。
雪之助:ハハハハ…。野上さんは びっくりするくらい変わらないですね!
野上:苦労は顔に出さない主義なんです。
雪之助:ア~ハッハッハッハッ…! この人はね 大正元年からこの川村屋にいる 小僧からたたき上げの店員さんだ。私もよく叱られた。
なつ:お久しぶりです。
雪之助:あ~ なっちゃんは知っていますよね? これは私のせがれです。
雪次郎:小畑雪次郎です。よろしくお願いします!
雪之助:今日からよろしくお願いいたします!
なつ:よろしくお願いします。
野上:声が… 声が…。何ですか? 店先で。どこでも頭を下げれば礼儀になると思ったら大間違いですよ。
3人:失礼しました!
♪
雪次郎:この椅子 すげえな…。
光子:いらっしゃい。
なつ:マダム!
雪之助:いや いや いや… 光子ちゃんかい? アッハッハッハッ… 立派になられて。
光子:ご無沙汰しております。
雪之助:いや~ 光子ちゃん あのことは まだかれんな少女だったもんね。
(せきばらい)
野上:今は マダムです。
雪之助:あっ 失礼しました。マダム これがせがれの雪次郎です。
雪次郎:小畑雪次郎です。よろしくお願いします!
光子:お父様のように 立派な菓子職人になれるよう しっかりここで修業して下さい。
雪次郎:はい!
雪之助:いや~ マダム 私はまだそんな立派な菓子職人じゃないですよ。
野上:マダムの気遣いを無にすることはございません。
雪之助:失礼しました。
光子:どうぞ お掛けになって。それで奥原なつさんは…。
なつ:はい。
光子:あなたは ここで働く気はあるの?
なつ:それは… 本当にいいんでしょうか?
光子:ほかにやりたいことがあるのよね? 漫画映画でしたっけ?
なつ:はい。
光子:その会社の試験はいつなの?
なつ:6月に臨時採用の試験があるそうです。
光子:そう… それまではどこかで生活しなくちゃいけないでしょ? ただし そういう中途半端な人を お客様の前に出しわけにはいかないので 厨房で皿洗いでもしてもらいます。それでよければ。
なつ:いすぎるくらいです!ありがとうございます! 助かります。
光子:まあ それにしても なつさんが絵をね…。
雪之助:川村屋には昔から絵描きのような芸術家がたくさん集まってきますもね。
光子:ええ。先代の祖母が好きでしたからね。なつさんは どんな絵を描くのかしら。
なつ:あっ 見ますか?
光子:えっ? 是非 見たいわ。
なつ:是非! マダムの目で確かめて下さい。
光子:なるほど… 漫画ね これは。
なつ:はい。私がなりたいアニメーターは その絵に命を吹き込むんです。
光子:命?
なつ:はい。漫画は紙の上で物語を描きますが 漫画映画は絵が物語を演じるんです。アニメーターは役者と同じように物語を絵で演じる人なんです。
雪次郎:なっちゃん そんなら演劇部の経験 生かせるね!
なつ:そだといいけど…。
雪次郎:そんなら 東京の演劇もたくさん見た方がいいよ。
雪之助:お前は修業に生かせ。
雪次郎:どうやって?
雪之助:どうやってもよ!
なつ:マダムはどう思いますか?
光子:えっ?
なつ:私にできると思いますか?
野上:マダムに聞いて どうするんです。
なつ:そうですよね…。
光子:不安を誰かの言葉で解消するのはよくないわ。その不安と戦わないと。
なつ:はい。
光子:そういう人なら私も応援します。
なつ:ありがとうございます。
雪之助:マダム あなたは先代のマダムの遺志を立派に継がれたんですね。いや… 安心しました。
光子:なつさん この新宿も ある意味 北海道と同じように開拓者が集まる所なのよ。
なつ:開拓者が?
光子:ええ。文化の開拓者…。あなたのように新しいことに挑戦したいという若い人たちが これからどんどん集まってくると思うわ。この川村屋もそんな新宿でありたいと思ってる。ここから あなたも頑張りなさい。
なつ:はい!
光子:ようこそ 開拓者の街へ。
♪
光子:皆さん 手を休めず ちょっと聞いて下さい。明日から見習いとしてここに入る小畑雪次郎君です。
雪次郎:よろしくお願いします!
光子:それから 奥原なつさんです。ここで雑用をしてもらいます。
なつ:奥原なつです。どうぞよろしくお願いします。
光子:それから 戦前の川村屋で修業をされていた小畑さんです。
雪之助:小畑雪之助です。雪次郎の父でございます。え~ このなつの後見人でもあります。どうか 2人をよろしくお願いいたします。
光子:戦後 お店を再開した時から職人たちの職長をしてもらっている杉本さんです。
杉本:杉本平助です。
雪之助:お世話になります。どうか せがれを厳しくご指導下さい。
雪次郎:お願いします!
杉本:ま ここは軍隊じゃないから そうかたくならずに。
雪次郎:よかった。
雪之助:よかったじゃない!
雪次郎:はい!
なつ:あっ マダム。
光子:ん?
なつ:私 お土産持ってきたんです。
光子:お土産?
なつ:はい。うちの牧場で作ったバターです!
光子:北海道のバター?
なつ:これをインド風バターカリーに使って下さい!
光子:えっ? そのためにわざわざ北海道から持ってきたの?
なつ:はい。あっ…。うん 大丈夫です。腐ってません。
光子:これをうちのカレーに?
なつ:是非 カリーに!
♪
雪次郎:うわ~…。
なつ:う~ん…。
雪次郎:うまそう!
雪之助:懐かしいもなあ 川村屋の香りだ。
野上:今日は特別ですよ。あのバターでは お客様には出せませんから。賄いとして調理しました。
なつ:まかない?
雪之助:従業員が食べる食事だ。
なつ:じゃ 野上さんも食べて下さいね 十勝のバターカリー。
野上:それはどうなんでしょう…。川村屋の味にはなりませんから。落書きが芸術にならないように。ハッハッハッハッハ…。
♪
光子:まあ おいしい!
杉本:はい。いいバターですよ これは…。
♪
雪次郎:うん… うめえ!
雪之助:このカリーはね 先代のマダム… 今のマダムのおばあさんにあたるマダムが その昔 インドの独立運動をしていたインド人革命家を助けたことから ここで作られるようになったんだわ。
なつ:インド人の革命家?
雪之助:そう。その革命家はイギリス政府に追われて 日本へ逃げてきたんだわ。そこでマダムがその革命家を川村屋にかくまった。そのインド人がこのカリーを伝えたんだわ。
雪次郎:本場のカリーを伝えたのか…。
雪之助:いわば これは命懸けで守ったマダムのカリーだ。革命が生み出した川村屋の味だ。それが今もこうして残ってる。
なつ:すごい…。
雪之助:名物となるものはね その店の… その人間の覚悟だ。
なつ:その覚悟を 今のマダムも受け継いでるんですね。だからあんなに強くて優しいんだ…。そんなマダムに私の兄は借金をしたんです。
雪之助:カリーじゃなくて借りを作ったか。ハハハハ…。
雪次郎:それは別に言わなくてもいいべさ。
雪之助:あ~ すまんすまんすまん。
なつ:あの おじさん 歌を聴きに行きませんか?
雪之助:歌かい?
なつ:去年の夏 母さんと聴いたんです。兄と同じ ムーランルージュにいた人の歌で…。お兄ちゃんのことを何か 新しい情報知ってるかもしれんから。
●クラブ「メランコリー」
カスミの歌:ビルの向こうに沈んだら 街にゃネオンの花が咲く おいら貧しい靴みがき ああ 夜になっても帰れない
レミ子:ねえ おじさん 磨かせておくれよ ほら まだこれっぽっちさ てんでしけてんだ えっ お父さん? 死んじゃった… お母さん 病気なんだ…。
(拍手)
カスミの歌:墨に汚れたポケットのぞきゃ
なつは その歌を聴きながら靴磨きとして 兄や妹と過ごしたあのころを懐かしく思い出していたようです。でもな 東京は街も人もすっかり変わったぞ。
カスミの歌:つらいのさ
なつよ 気を付けろ
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●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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