なつぞら(55話6月3日)
昭和31年10月 上京して半年余り なつは念願の東洋動画に入社しました。多少の不安もありましたが それよりも何よりも 今 なつの目の前には夢にみた世界が広がっていたのです。
●東洋動画・仕上課
山根課長:え~ 今日から皆さんに働いて頂くここが仕上課の作業室です。仕上というのは 作画の人たちが描いた絵を 透明なセルロイドに書き写し 色を塗ってセル画というものに仕上ることです。書き写すことをトレース 色を塗ることを彩色 この2つが仕上の仕事です。覚えて下さいね。仕上はこれからますます 猫の手も借りたいような状態になってきます。そのために皆さんは激しい試験を通って臨時に採用されたわけです。つまり 即戦力として見込まれたわけなので 実際に仕事をしながら その技術を磨いていってもらいたいと思ってます。え~…。あっ…。あっ すいません…。こちらが皆さんの大先輩 石井富子さんです。詳しくは石井さんから。石井さん お願いします。頑張って ハハハ…。
富子:大先輩といっても 私もまだ30歳です。ここで働く人たちはみんな若いです。本格的に総天然色の漫画映画を作るのは 日本でここが初めてなのです。ちなみに世界では漫画映画をアニメーションと呼んでいます。
なつ:アニメーション…。
富子:アニメーションに欠かせないものがセル画です。映画館で観客が見るのは このセル画の絵なのですから。皆さんはこれを作る仕事をするんです。いいですね?
一同:はい。
富子:トレースの方はいきなりやれと言っても難しいので 皆さんにはまず 彩色をやってもらいます。今 製作している映画「白蛇姫」の色見本がここにあります。試験ではセルに好きな色を塗ってもらいましたが 実際は こういった色を正確に塗らなくてはいけません。1本の映画を作るのに 作画の人たちは数万枚の絵を描き 我々仕上も それを数万枚のセルに仕上なくてはいけません。漫画映画は気の遠くなるような作業です。分からないことは教わりながら早く仕事を覚えて下さい。よろしくお願いします。
一同:よろしくお願いします。
なつ:やっと会えた… 白蛇姫に…。
♪
なつ:奥原なつです。よろしくお願いします。
桃代:森田桃代です。よろしくお願いします。
なつ:森田桃代先輩… ですね。
富子:奥原なつさん。
なつ:はい。
富子:まずはこのカットをお願いしますよろしくね。
なつ:はい!
桃代:ダメよ。
なつ:えっ?
桃代:手袋して。
なつ:あっ…。
桃代:中にセルが入ってるから。セルは素手で触っちゃダメって言われなかった?指紋がついちゃうから。
なつ:そでした。すいません…。わあ… かわいい…。あの~ この紙は…?
桃代:えっ? ああ 動画用紙は外して セルだけをそこに置いて 色を塗るの。
なつ:あ… あの 先輩!
桃代:はい?
なつ:この絵 全部外してもいんですか?
桃代:それはいいけど。後で戻せば。
なつ:はい。ありがとうございます。
♪
なつ:わあ…。かわいい…。なまら かわいい…!
桃代:なまら? 何してるの?
なつ:先輩 やっぱり すごいです。こんな絵 こんな動き 私には描けません。
桃代:それは当然でしょ。ちゃんとそういう人が描いてるんだから。
なつ:どんな人が描いたんでしょ…。
桃代:その袋に名前書いてあるでしょ。
なつ:えっ? あっ 仲さんだ! 仲さんが描いたものなんだ。
桃代:知り合いなの?
なつ:はい。私も仲さんみたいになりたいと思って ここに入ったんです。
桃代:ん? あなたも作画をやりたいってこと?
なつ:あ… でも 仕上も頑張ります。頑張ります!
♪
なつ:うっ ダメだ…。
桃代:どうしたの?
なつ:いや… これが映画館に映されるかと思うと 緊張しますね。手が震えてはみ出しそうです…。 試験の時はこんなこと なかったんですけど…。
桃代:大丈夫よ はみ出しても消せるから。
なつ:えっ そなんですか!
桃代:うん。
なつ:いかった。失敗しても大丈夫なんですね。
桃代:いや 大丈夫じゃないけど。まあ すぐ慣れるわよ。
なつ:はい。先輩はもう何年もやってるんですか?
桃代:半年。今年の4月からだから。
なつ:えっ…。
桃代:ん? 私 19歳よ。
なつ:私と同じですか?
桃代:だから 先輩なんて呼ばなくてもいいの。
なつ:あ… いや 先輩は先輩です。
桃代:フッ…。慣れたらモモッチって呼んで。
なつ:モモッチ?
桃代:森田桃代でしょ。なぜか みんな モモッチって呼ぶのよね。
なつ:モモッチ先輩。
桃代:先輩はいらないから。
なつ:モモッチさん。
桃代:そのうち さんも取っていいから。あなたは何て呼ばれたい?
なつ:う~ん 私は名前がなつなので 割と早めに なっちゃんと呼ばれることが多いですね。
桃代:ふ~ん。あのね なっちゃん。
なつ:はい。
桃代:慣れてきたらでいいんだけど 話す時はなるべく手を動かしながら話そうか。
なつ:はい すいません!
桃代:うん。
♪
富子:うん なかなか うまいじゃないの。
なつ:え 本当ですか? ありがとうございます。
富子:それで何枚目?
なつ:1枚目です。
富子:遅い!
なつ:すいません…。
富子:まあ 初めてだからしかたないけど。丁寧なのはいいことです。筆に水をつけ過ぎるとムラになるから気をつけてね。
なつ:はい。
富子:モモッチ お願いね。
桃代:はい。
なつ:あの モモッチさん。
桃代:え?
なつ:これ 牛みたいに白黒なんですけど 仲さんが考えた架空の動物なんでしょうか?
桃代:ああ パンダでしょ。中国にいるらしいわよ そういう熊が。
なつ:熊なんですか! いるんですか 実際にこういうのが…。
桃代:脚本に書いてあって まあ 誰も見たことはないらしいけど。
なつ:へえ…。あの 台本は配られないんでしょうか?
桃代:台本?
なつ:はい。この絵が一体 どんな話のどのシーンなのか それが分かったら もっと色を塗ってても気持ちが入ると思うんです。きっと楽しいんじゃないでしょうか?
桃代:脚本はないけど 絵コンテならあるわよ。
なつ:絵コンテ?
桃代:うん。映画の設計図みたいなものだって。
なつ:それ見たいです!
桃代:あ… 仕上課にも 1冊だけあるから 空いてる時間に見られるわよ。
なつ:はい。ありがとうございます。
桃代:あなた そんなに好きなの? 漫画映画。
なつ:う~ん 好きっていうほど まだ知らないんです。だから どんなことでも知りたくて。
桃代:それは 好きってことじゃないの。
なつ:モモッチさんは 好きじゃないんですか?
桃代:好きとか嫌いとか考えたことない。高校で求人を見て ほかの仕事より面白そうと思ったけど。
なつ:私は ずっと作りたいと思ってたんです。漫画映画を。
♪
なつ:よし。できた。
(チャイム)
桃代:ちょうど お昼だ。よかったわね 1枚できて。
なつ:はい。モモッチさんは?
桃代:私は10枚。
なつ:すごっ…。
桃代:このカット袋が何百 何千とあるんだからね。
なつ:はい…。
桃代:でも あなたもすごいじゃない。
なつ:えっ?
桃代:これって やりたい仕事だったんだ。
なつ:そですよ!
なつは お昼休みに食事をとるのも忘れて 絵コンテを見ていました。絵コンテとは映像の構図やカメラの動きなどが書き込まれたものなのです。
陽平:なっちゃん!
仲:ようこそ アニメーションの世界に。
なつ:仲さん 陽平さん。
仲:おや なかなか おしゃれだね なっちゃん。
なつ:あ いや これは… まだ修業中です。
陽平:お昼は食べたの?
なつ:いえ。あの 絵コンテ見たくて…。
仲:ああ。あそこから 俺たちがいろいろアイデアを膨らませて絵を動かしてるんだ。作品のことを知りたければ こっちにも見に来なよ。
なつ:えっ いいんですか?
仲:いいに決まってるじゃないか。もう同じ仲間なんだから。
なつ:ありがとうございます。
そしてなつは 自分の仕事が終わると すぐに仲さんたちの部屋に向かいました。そこは作画課と呼ばれるアニメーターたちの仕事場でした。
●東洋動画・作画課
下山:あれっ 君…。
なつ:あっ…。
下山:本当に来ちゃったんだね ここまで。
なつ:下山さん!
下山:えっ 僕のこと覚えててくれたの?
なつ:もちろんです。元警察官の!
下山:あっ そう そう そう。
回想下山:バン! バン!
下山:バン!
なつ:えっ?
下山:いや… バン! バン! バン!
なつ:ううっ! あっ…。
麻子:ちょっと!
なつ:ごめんなさい…。
なつよ まあ あまり浮かれずに頑張りなさい。
●感想
本日は、モモッチ先輩のこの言葉に尽きるかと。
あのね なっちゃん。慣れてきたらでいいんだけど 話す時はなるべく手を動かしながら話そうか。
新入社員アルアルということで、今週もよろしくお願いいたします。
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●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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