なつぞら(58話6月6日)
なつ:絵コンテ どうなってたっけ…?
麻子:勝手に拾ったのね。
下山:マコちゃんは アニメーションにとって一番大事なものを最初から感覚として分かってる人なんだ。
なつ:それは何ですか?
下山:命を吹き込むことだよ。
●東洋動画仕上課
なつ:モモッチさん。
桃代:ん?
なつ:ここにあった動画 知りませんか?
桃代:動画?
なつ:紙です。下手な絵が描いてあったと思うんですけど…。
桃代:さあ…。
富子:それなら 大沢さんが持っていったわよ。
なつ:大沢さんって マコさんって呼ばれてる人ですか?
富子:そうよ。本当はあさこっていうんだけど。あなた あれ 勝手に作画の部屋から持ってきちゃったんだって?
なつ:あっ いや あれは…。
富子:あれは 何でも大事なラフだったらしいわよ。
なつ:ええっ!?
●東洋動画作画課
井戸原:なるほど…。
麻子:どうですか?
井戸原:これを堀内君が描いたの?
麻子:そうだと思いますが…。
井戸原:うん…。
麻子:すいません。堀内君! 堀内君 ちょっと…。
堀内:何ですか?
麻子:これ あなたが描いたのよね?
堀内:は?
麻子:前に描いて あの箱に捨てたもんでしょ?
堀内:どうしてこれが?
麻子:どうも 仕上の子が拾ってったみたいなのよ。
堀内:ど… どうして仕上が?
麻子:知らない そんなことまでは。でも どうして捨てたの?これ。いいと思う 私は。これ すごくいいと思う! ただ中割できれいに動きをつなぐだけが動画の仕事じゃないんだもの。こんなふうにしていいのよ。泣く直前に一瞬 何かを振り向いて まだ戦う目をしながら泣き伏せる。これよ。これが中割に入ることで見る人に百娘の気持ちの伝わり方は全然違うでしょ!この強くて恨みがましい目が入ることで 蛇に戻りかけた白娘の悲しみが際立つじゃない。戦いに敗れてもまだ納得がいかず 許仙は自分のものだと言いたげに 何より許仙に会いたいという気持ちがにじみ この顔から! あれ… 前に誰かに同じようなこと言ったような気がするけど…。ま いいか。この顔が泣くから より一層 白娘の絶望が伝わってくるのよ。私が言いたかったのはこういうこと。ただのきれいな中割は 動きを正確に見せるためには必要なことだけど 感情表現においては ただの記号にしかならないこともある。それ 分かってたんじゃない 堀内君も。これはただの遊びで描いただけかもしれないけど 私はこれをずっと望んでた!
堀内:僕じゃないよ。
麻子:ん?
堀内:僕が描いたんじゃない。僕はこんな稚拙な絵は描かないよ。
麻子:だって これ ラフでしょ?
堀内:ラフでもこんな絵は描かない! こんな絵を描いたと思われたら心外だよ!
麻子:じゃ 誰が描いたの?
なつ:あっ あの…。
下山:なっちゃん。
麻子:まさか…。
なつ:すいません… それは私が描きました。
仲:なっちゃんんが描いたのか!
下山:えっ… どれどれ? 見して。えっ? なるほどね。いや よく気付きましたね この表情に!
仲:うん…。あっ 井戸原さん。
井戸原:うん?
仲:彼女は 今 仕上にいるけど 本当はアニメーター志望なんですよ。
井戸原:あ そう…。いや~ 原画を描いた僕にも その発想はなかったわ。
麻子:どうして描いたの?
なつ:すいません! 人に見せるつもりで描いたんじゃないんです。勉強のために勝手にここから拾って描きました。絵をなぞっているうちに そうしてみたくなったんです。
麻子:だから どうして そうしてみたくなったの?
なつ:どうして? 白娘の気持ちになっているうちに そうなったんです。あ… 私 高校の演劇部で偶然 白蛇の化身を演じたことがあるんです。その時に自分の経験から想像して 自分の魂を動かして演じなくちゃいけないと先生から教わったんです。だから その顔は…。自分はただ許仙が好きなだけなのに それを周りからどうして悪く思われなきゃいけないのか そういう怒りが自然と沸いてきたんです。白娘はただ 許仙が好きなだけですよね? 本当は誰も傷つけたくはないし…。
麻子:もう分かったわよ! 勝手に勉強してたってことでしょ。
井戸原:ハハハハ…。堀内君 君もなかなか正直でよろしい。
堀内:は?
井戸原:君の絵も純粋な絵だと 僕は思ってるんだよ。発想のしかた一つで いくらでも変わることはできるはずだ。技術はあるんだから。この絵は今の君とは正反対だ。これを君のきれいな線でクリーンナップしてくれないか? 動画として完成させてほしい。これ 使ってもいいよね?
なつ:はい… ありがとうございます。
井戸原:はい。
なつ:堀内さん 勝手にすいませんでした! どうかよろしくお願いします!
堀内:それが僕の仕事ならやりますよ。
井戸原:それがいいよね。
仲:なっちゃん もう仕上に戻りなさい。今は仕上が君の大事な仕事だからね。
なつ:はい。失礼します。
●東洋動画仕上課
富子:奥原さん どうだった?
なつ:はい すいません。ちゃんと謝ってきました。
富子:あなた どういうつもりなの? 勝手に動画を持ち出して。
なつ:私はただ 動画の勉強をしたくて…。
富子:仕上はやりたくないというわけじゃないでしょうね?
なつ:そんなことはありません。
富子:だったら 今は彩色の仕事に集中しなさい。
なつ:はい。すいませんでした。
桃代:大丈夫?
なつ:はい。
桃代:ただの塗り絵かと思ってたけど そうじゃないのよね これも。
なつ:えっ?
桃代:私もちゃんと漫画映画のことを勉強したいと思えてきたわ あなたを見て。だって楽しそうなんだもの。
なつ:楽しいですよ! 私も今日初めて その楽しさが少し分かったような気がしたんです。
桃代:今日? 何かあったの?
なつ:いや… 今は彩色に集中しないと。
桃代:私 子どもの頃から絵を見るのも描くのも好きだったのよね。普通の高校で美術部でもなかったんだけど…。だから絵を仕事にできるなんて思ってなくて。
なつ:絵を仕事にしてるじゃないですか。
桃代:そうなのよね… してるのよね。だったら自分にも もっと何かできることがあるのかなって…。
なつ:ありますよ。モモッチさんはそんなに上手じゃないですか。楽しさに限りはないと思うんですよ どんなことでも。ただ… 自分がそれを求めるかどうかの違いで。だって日本のアニメーションはまだ始まったばっかりなんですよ。
桃代:あなた 自分のやりたいことに対しては割とずうずうしいのね。
なつ:はい。そういうとこ 開拓者のじいちゃんに鍛えられたんです。やるとなったら もうやるしかないしょ。ああ…。
桃代:ちょっと 何やってんのよ!
●東洋動画所長室
仲:どうですか? 露木さん。
露木:ん? うん いや いいと思うよ。けどね 演出の立場から言わせてもらうと 演出や原画に指示されていないことを 動画の子が勝手に描くっていうのは どうなんだろうな。こういうことを許したら悪い前例になりかねない。
仲:いや しかし 原画を2人でこなしてる以上 実際 手が回らなくなることもありますよ。そこを動画に補ってもらうことがあっても しかたないんじゃないですか?
山川:人手不足は分かるけどさ だからといって 仕上に入ったばかりの子を そうすぐに作画に移すというのはね…。
仲もともと 彼女は6月のアニメーターの試験に受かってたはずなんです。
井戸原:大杉社長に反対されたんだろ?
仲:いや それは誤解されただけですよ。身内に変な人がいるって…。でも その誤解は解けたんです。
山川:解けてはいないよ。仕上に入れる時に 大杉社長にお伺いを立てたけど 社長は見事にそのことを忘れていただけだ。
仲:それなら そのまま忘れていてもらいましょう。
山川:しかし この絵はほかの人がクリーンナップしたんだろ?
井戸原:はい 僕の下の堀内君が。彼女の描いた絵はこっちのラフです。
露木:あっ ちょっと貸して 見して。はいはい…。えっ… これがラフかい…。まるで素人の絵じゃないかよ。
仲:絵のうまい下手なんて 描いていくうちに上達しない人はいませんよ。
露木:だけど センスは…。
仲:まして 十九 二十歳の感性は今しか使えないものでしょう。彼女を今から鍛えれば どこまで伸びるか分からないと僕は思うんです。
露木:仲ちゃんがそこまで言うのなら どうだろう? こうしたら。もう一度 試験を受けてもらうんだよ。
仲:えっ?
●喫茶「リボン」
そして その翌日の昼休みです。なつは仲さんに呼ばれてランチをごちそうになりました。
仲:君をもう一度 試験しようと思っている。
なつ:えっ?
仲:社内部の試験だ。それに受かったら 君をアニメーターにする。どうする?
なつ:やります。やらせて下さい!
なつよ… まずは口を拭け。
●感想
「なつぞら」で一番長いセリフが誕生しました。大沢麻子、通称マコちゃん 正しくは、おおさわあさこが口にした堀内君への言葉。
なんとなく貫地谷しほりさんの目が充血していたようで、朝ドラヒロイン経験者は大変なんだなあと同情しきりの木曜日の朝です。
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●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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