なつぞら(62話6月11日)
富子:はい…オッケーです。
山根:ご苦労さまでした!
「白蛇姫」の仕上げがやっと終わったその日 北海道から照男君と砂良さんが新婚旅行にやって来ました。
なつ:砂良さん 幸せになってね。
照男:心配すんな それは。俺がついてんだ。
なつ:頼むぞ 照男兄ちゃん。
砂良:これからは 私も待ってるからね なっちゃん 家族と一緒に。
なつ:うん ありがとう。
それから間もなくして 咲太郎の劇団の公演が幕を開けました。なつは東京で初めて本物の舞台を見たのです。
●新劇「人形の家」舞台
妻ノラ:何百万という女は それをしてきたのです。
夫:そんな だだっ子のようなことを言うもんじゃない。
妻:そうかもしれません。けど… 私は今 この時に目覚めたのです! この8年間 私は見ず知らずの他人とこの家で過ごし その人と3人の子どもまで作った…。ああ… そのことを考えると 私は耐えきれずこの身を引き裂きたくなるのです!
夫:ノラ!私がどう言っても 私はもう他人以上にはなれないのか!
妻:もし 本当の奇跡が起こるなら…。
夫:本当に奇跡? それは何だ?
妻:私たち2人がすっかり変わって…。いいえ 私はもう奇跡なんか信じない!
夫:私は信じる!
妻:私たちは変われる!私たちの生活が 本当の結婚になるなら…。さようなら。
夫:ノラ…! ノラ! 奇跡! 奇跡だと!?
●新劇「人形の家」楽屋
咲太郎:はい。
関係者:また 声かけるから…。
咲太郎:よろしくお願いします。よう! どうだった?
なつ:いかった お兄ちゃん!何て言うか… 本当にいかった!
咲太郎:そうか。雪次郎は?
雪次郎:はい… 俺は見ている間 ずっと体が熱かったです。
咲太郎:風邪でもひいたか?
雪次郎:いえ… そういうんではなくて…。
咲太郎:分かってるよ。な いい芝居だろ?
なつ:うん。亀山蘭子さんって女優さんが本当にすごかった。
咲太郎:おう 紹介してやるよ。せっかくだから会ってけ。
なつ:えっ? い… いいの!?
雪次郎:えっ えっ えっ…。
なつ:えっ…。
(ノック)
咲太郎:蘭子さん お疲れさまです。ちょっといいですか?
蘭子:はい。
咲太郎:蘭子さん 俺の妹なんです。
なつ:あ… 奥原なつです。
蘭子:あれ 咲ちゃん 家族いた? 孤児院で育ったんじゃなかったっけ?
咲太郎:育ってはいませんよ。一時 いただけです。その時 妹もいたんです。それからすぐバラバラになって 9年ぶりに再会して 今 一緒に暮らしてます。
蘭子:まあ… 新派になりそうなお話ね。どうでしたか?舞台は。
なつ:あ… いかったです! 何て言うか… 本当にすごかったです。
咲太郎:よかったと すごかったしか言ってないぞ お前。
なつ:いや ほかに言葉が浮かばなくて…。あ… 絵に描きたいと思いました。
蘭子:絵?
咲太郎:あ… なつは漫画を描いてるんです。
なつ:漫画映画です。それにまだ描いてません。あっ でも この感動は絵に描けないかなとも思いました。それくらい すごかったです。
蘭子:何だか とてもこんがらかった感想ね。フフフフ…。
なつ:すいません…。
蘭子:でもありがとう。うれしいわ。
なつ:こちらこそ。
咲太郎:それから こいつは なつの友達で北海道の農業高校で演劇をやってたやつなんです。
雪次郎:あ… 小畑雪次郎です!
蘭子:演劇部だったの?
雪次郎:はい。
蘭子:へえ… どうでしたか?
雪次郎:はい。本物は普通なんだと思いました。
蘭子:えっ?
咲太郎:お前 何言ってんの?
雪次郎:あっ 普通っていうのは 普通の人がまるでそこにいるみたいというか そういうアマチュア精神を感じるというか…。
咲太郎:お前 失礼だろ!
雪次郎:あっ いえ 普通の人が言いたい言葉を 代弁するというか 伝える力がプロなんだと思ったんです。あの 別にスターとかじゃなくて 普通の人間だから伝わる精神を持ってるのが なまら すんげえ俳優なんだと思いました。それが新劇なんだと思いました。
咲太郎:すみません 蘭子さん こいつの感想もこんがらってます。
雪次郎:すいません…。
蘭子:あなた 今 何をしてらっしゃるの?
雪次郎:はい… 新宿の川村屋でお菓子作りの修業をしています。
なつ:雪次郎君の家は 帯広でお菓子屋さんをしてるんです。お菓子とおんなじくらい 雪次郎君は本当に芝居が好きなんです。
蘭子:そう…。それでよく 芝居をやめられたわね。今日はどうもありがとうございました。
なつ:ありがとうございました!
咲太郎:お疲れさまでした!
蘭子:お疲れさま。
なつ:どしたの? 雪次郎君。
雪次郎:いや…。
なつたちにとって この出会いもまた 一つの運命かもしれません。
●おでん屋「風車」
なつ:びっくりしました。人形は出てこないです。人形は奥さんなんです。子どもの頃 父親に人形のようにかわいがられてて 大人になってから 旦那さんに人形のようにかわいがられてた奥さんが 最後に目が覚めたと言って 家を出ていってしまうんです!
亜矢美:うんうん… 確か そういう話だ。
咲太郎:目覚めることが この芝居のテーマなんだから。
なつ:私は無理やり 家を出ようとした時 母さんにたたかれたことがあった。そんで 目が覚めた。
咲太郎:お前の場合は 牛の家だろ。牛はたたけばいいが 人間はそうはいかないからな。
なつ:牛だって たたいちゃダメだ。
亜矢美:うんだ うんだ。
咲太郎:長い間 女は家の中に閉じ込められてきた。それを解き放とうという運動なんだよ この芝居は。
雪次郎:運動なんかじゃないです。
咲太郎:えっ?
雪次郎:芝居は運動なんかじゃないです。
亜矢美:あれ… 何か いつもと目が違わない?
雪次郎:演劇や文学の目的は 問題の解決にあるんじゃないとイプセンは言っています。その目的は人間の描写です。人間を描き出すことです。イプセンは 詩人や哲学者として それを描いたんです。そしてそれを見た観客も 詩的や哲学的になることなんですよね。
亜矢美:キャ~ 見事にそのとおりになってる。ね ね ね…。
咲太郎:お前 よく勉強してんな 本当に。
雪次郎:いや いくら本を読んでも分からなかったことが あの人の演技を見てよく分かったんですよね。実感できたんです。
亜矢美:亀山蘭子?
雪次郎:はい。
なつ:人間の描写か…。うん… あんな芝居も絵に描けたら すごいな。
なつは蘭子さんの芝居を思い浮かべて「白蛇姫」のワンシーンを描きたくなりました。
(回想)
仲:結論から言うと 不合格でした。
なつ:自分が描きたいものに 自分の手が追いついていかないんです。自分は下手なんだって よく分かりました。特に きれいな線を描こうとすると全然ダメで それが悔しくて…。
(回想終わり)
それからなつは 動画の線をきれいに描くクリーンナップの練習を続けていました。それができなければ どんなに気持ちを込めても使い物になりません。
作画から仕上げまで「白蛇姫」の仕事が終わると なつたちは うそのように暇になりました。
●東洋動画仕上課
富子:時間がある今 この間にトレースの練習をします。トレースは見てのとおり 動画の線を崩さず セルに写し取ることです。同じ仕上げの仕事でも その技術には年季が必要で 彩色より向き不向きがあると思います。自信があるっていう人はいますか? 誰も挑戦したい人はいませんか? 奥原さん… あなたは作画に行きたいんじゃなかったっけ?
なつ:あ いえ… 作画になりたいとは思ってますが もちろん 仕上げもちゃんとやりたいです。仕上げで使える人間になりたいです。
富子:自信があるの?
なつ:う~ん… やってみなければ分かりませんが ずっと動画のクリーンナップの練習をしてたので きれいに線を描くのは大丈夫だと思います。というより… 思いたいです。
富子:あら そう。ならここに座って やってごらんなさい。
なつ:はい。
富子:これを描いてみなさい。
なつ:はい。
富子:墨をすって そのペンで描いてみて。正確にね。
なつ:はい。
富子:1回ごとに ペン先をスポンジで拭いて。
なつ:はい。
富子:へえ~。なかなかうまいじゃない。
なつ:ありがとうございます!
富子:それじゃ もう一度 同じ絵を描いてごらんなさい。
なつ:おんなじものを?
富子:そう。それじゃ もう一回 同じものを。
なつ:はい…。
富子:もう一回。 もう一回。それじゃ もう一回。 それじゃ もう一回。
なつは 同じ絵を10枚も描かされました。
富子:それじゃ トレースしたセルを 全部重ねてごらんなさい。
なつ:はい。ああっ…。
なつよ 線がずれまくってるぞ。まだまだってことだな。
●感想
雪次郎の言葉足らずなのか、それともイプセンの言っている意味が分からないのか、どっちにしても朝から難しいことを言われて、お口アングリ鈴木杏樹。
ネタバレになりますが、この芝居観覧をきっかけに、雪次郎は川村屋を辞めて劇団「赤い星座」に入ってしまいます。
それを知った帯広の家族たちが東京にやってきて、雪次郎捜しとその説得に当たるというのが来週辺りでしょう。
「なつぞら」も放送回数の半分近くまでやってきて、今の展開なので、やはり、奥原なっちゃんが30歳前後になった辺りで終了かなと予想です。
天陽君のモデルとなった人が30歳の頃に亡くなっているので、もしかしたら悲しい出来事も描かれるかも?と書いて、明日もよろしくお願いします。
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●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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