なつぞら(69話6月19日)
咲太郎:千遥のために描くんだよ。お前言ったよな? 漫画映画は子どもの夢なんだって。その夢を千遥に見せてやれよ。
●東洋動画作画課
仲:じゃ 次は…。
なつ:おはようございます。
井戸原:うん?
なつ:遅れて すいません…。
井戸原:今 キャラクターの検討会をしているとこだ。牛若丸は仲ちゃんの絵で決まった。
なつ:はい…。 いいと思います!
井戸原:君は出さないのか?
なつ:えっ まだいいんですか?
井戸原:そのために遅刻してきたんだろう?
なつ:はい!これです。
井戸原:うん。これは… 常盤御前だ。
なつ:はい。
仲:じゃ 次は常盤御前を検討しようか。
下山:はい。
なつは 千遥への不安を抱えながら アニメーターとしての第一歩を踏み出しました。
なつ:みんな うまい…。
仲:やっぱり みんな 美人に描こうとしてるな…。牛若丸の母親という点では 僕はこの絵に一番 母性を感じるんだけどな。
なつ:えっ…!
井戸原:それはまた 仲ちゃんの なっちゃんびいきなんじゃないのかい?
仲:ひいきで作品は決めないよ。一つの意見。
堀内:しかし 常盤御前がただの母親でいいんでしょうか? 常盤御前は 再会を願って会いに来た牛若丸を 冷たく突き放しますよね? それで絶望する牛若丸が前半の山場になる。最初から いい母親みたいな顔していたら 牛若丸が絶望しても 客は感情移入しないんじゃないですか?
井戸原:う~ん それはあるな…。最初は常盤御前と悪者のように描いた方が 見る人に衝撃を与えることになる。その点では 僕はこの表情にひかれるんだけどね。
茜:あれ もしかして 堀内さんが描いたんですか?
堀内:違うよ。
井戸原:これ 誰が描いたの?
麻子:私です。
下山:やっぱり 絵には描く人間が出ますね。
麻子:どういう意味ですか?
下山:えっ いや… 女性の内面は やっぱり女性が鋭く捉えてるなっていう意味ですけど…。
仲:う~ん なっちゃんとマコちゃんの対決か…。マコちゃんは 何でこうしようと思ったの?
麻子:常盤は 初め その美貌と知性で1000人の女の中から選ばれ 侍女のような身分で召し抱えられたにすぎませんでした。そこから源義朝の側室に上り詰めたんです。常盤御前はしたたかで強い女性なんです。
中:う~ん…。なっちゃんは どう思うの?
なつ:私は… そんな怖い顔の母親を 子どもに見せたくありません。
麻子:は…?
なつ:いや 子どもだって いろいろ考えながら見ると思うんです。ただ怖いだけの母親 見せられて 後で優しくなっても それじゃ 納得できないんじゃないですか?
麻子:顔が怖いからって 根っから優しくない人だと思わないわよ 子どもだって。
なつ:そでしょうか? 子どもには どんなに怒られた時でも 母親の愛情は伝わると思うんです。
麻子:何の話をしてるの? あなた。
なつ:えっ…。漫画映画は 子どもが見るものです。子どもが夢を見るように 見るものだと思うんです。
仲:まあ 確かにこっちの常盤御前も こっちの常盤御前も 内面的には両方あるはずなんだよ。
井戸原:そう。結局 2人とも中途半端ってことだろうな。一面的で人物の奥行きが感じられない ってことだろう。
なつ:はい…。
麻子:はい…。
井戸原:よし じゃ 次行こう。
一同:はい。
●東洋動画・中庭
(ため息)
下山:何かあった?
なつ:別に何も…。
下山:別に何も か…。うそだね。あった。明らかに何かあった。明らかにいつもと様子が違う。
なつ:そんなに明らかですか?
下山:うん 明らかだよ。だって その服装 前にも見たことあるもん。
なつ:えっ?
下山:とうとう 前と全くおんなじ服装で来ちゃったよ ハハハ…。証拠見せようか? あのね これね…。
なつ:いいです! いいです…。そんな… 毎日替えるのは無理ですよ。夏はそんな重ね着しませんし。
下山:まあ それは許すけど… 何かあったんなら話してみなよ。本官に話して 楽になれ。
なつ: 警察…。あ… あの 私の住んでるおでん屋に よく来るお客さんの話なんですけど… 親戚の家から幼い妹が一人で家出をしたんです。その家では警察に届けたって言ってるんですけど もし その子どもに何かあったんなら そういう知らせがその家にあるものですか? 途上で暮らす子どもも 亡くなる子どもも まだたくさんいた戦後間もない頃です。そういう子どもがまだ生きてると思いますか?
下山:う~ん…。
なつ:そんなことは奇跡ですか?
下山:あのころは 警察も混乱していたかもしれないけど そこにいるのは やっぱり人間だからね。僕がまだ新米で 派出所に勤務していた頃 近くの飲食店から逃げ込んできた 娘さんがいたんだ。生活に困って娘を売るっていう記事が新聞に載っていた頃だから その子はその店が怖くなって逃げたんだ。
なつ:逃げてきたんですか?
下山:店との間には あっせん業者が入っていて まだその時点では 違法とは言えないって 警察の上司は判断した。だけど そこにいた僕の先輩は諦めなかった。法律を一生懸命勉強して 戦後定められた日本国憲法の中に「何人もいかなる奴隷的拘束も受けない」という条文があるのを発見して それを根拠に娘を自由にしたんだ。
なつ:勝手にですか?
下山:うん。上司も飲食店の店主も怒ってね。先輩は 辞職も覚悟してた…。あっ 今 その子は先輩の知り合いの旅館で元気に働いてるよ。奇跡なんてもんは 案外 人間が当たり前のことをする勇気みたいなもんだよ。その勇気を持ってる人間は どこにでもいるよ。
なつ:その先輩は 下山さんじゃないんですか? だから警官を辞めたんですか?
下山:僕? ハハハハ… いやいやいや…。僕なんて 勤務日誌に似顔絵ばっかり描いて 怒られてた人間だよ ハハハハ…。え~ だから辞めたんだ ハハ…。きっと そのお子さんも 誰かに助けられてるんじゃないかな。
なつ:そですよね…。
下山:ほら… 早く食べなよ それ。
なつ:はい…。
下山:ゆっくりね…。
なつ:頂きます。
●東洋動画作画課
仲:なっちゃん マコちゃん。
2人:はい。
仲:ちょっと。2人の絵を合わせて ちょっと描いてみたんだけど こんなのでどうかな?
なつ:すごい…。どうしたら こんな絵が描けるんだろう…。
仲:なっちゃんは 誰かを思い浮かべて常盤御前を描いたの?
なつ:あ… はい。北海道にいる母を…。
仲:うん やっぱり お母さんか…。お母さんを描くのが悪いわけじゃないんだけど 自分の母親には優しさばかりを求めてしまいがちだからね。お母さんだって 一人の女性だし 内面にはもっと怒りや苦しみ 悲しみだとか 子どもが見たくないものだって いっぱい持ってるはずだろ?
なつ:はい…。私は子どもの気持ちばかり考えて 常盤御前のことを 考えてなかったかもしれません。
麻子:私は 生い立ちだとか 理屈ばかり考えてました。
仲:どれも大事なことだよ。それに なっちゃんの悩みは正しいと思うよ。子どもが見て 本当だと思ってくれるような絵を 僕らは探し続けていかなきゃいけないんだから。子どもの力を侮ったら それで終わりだ。
なつ:子どもの力…。
仲:ね。マコちゃん。
麻子:もちろんです。
なつ:あの マコさん… さっきはすいませんでした。生意気なこと言って。
麻子:だから 謝らなくていいのよ。口に出したことは 仕事で責任取るしかないのよ 私たちは。
なつ:仕事で?
麻子:じゃないと 本当に認めるなんて できないでしょ。
仲:仕事で認め合うしかないのが アニメーターのつらいとこだ。なっちゃんはもう アニメーターなんだから。
なつ:はい。
なつよ 今は頑張るしかないぞ。
●感想
下山さんが語ってくれた娘さんの話。もしかして、その飲食店から逃げ出した娘が千遥じゃないかと妄想。
もしそうだとすると、今は旅館で働いているということで、千遥は無事に生きている、やがてその旅館に社員旅行で行ったなっちゃんが、千遥と再会するという奇跡を書いてみて 明日もよろしくお願いします。
スポンサーリンク
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
なつぞらネタバレあらすじと感想を最終回まで!キャスト一覧と結婚相手予想も
朝ドラ全99作品一覧とイチオシ人気投票実施中(第2回)一番面白いのは!?
スポンサーリンク
スポンサーリンク