なつぞら(89話7月12日)
なつ:最後は その木の怪物が 悪魔の塔を倒すんです。すると がれきの中から 今まで食べられてきた子どもたちがよみがえるんです。そして木の怪物が その塔があった場所で静かにまた動かなくなる。鳥たちが集まってきて その枝にとまる。木漏れ日が降り注ぎ ヘンゼルとグレーテルを包み込む。ああ 森に平和がやって来た。
坂場:そこで 完!
なつ:はい!
神地:面白い!
なつ:ありがとう!
下山:よし とにかくこれで進めてくれ。うん。
坂場となつ:はい。
●東洋動画作画課
なつたちの「ヘンゼルとグレーテル」のストーリーが出来上がりました。
下山:それで イッキュウさん 今後はどうやって進めていくつもり?
坂場:僕が今までの話を脚本に起こして それを神地君と一緒に絵コンテにします。
神地:えっ?
坂場:手伝ってくれますか?
神地:はい… 喜んで!
麻子:ちょっと待ってよ。新人に絵コンテ描かせる気?
坂場:それに関しては 僕だって新人ですよ。時間がないんです。マコさんは奥原さんと一緒に絵コンテが出来たところから 原画の作業に入って下さい。
(麻子のため息)
そのころ 咲太郎の声の会社も動き出していました。
●西部劇「拳銃渡世人」収録スタジオ
咲太郎:この「拳銃渡世人」は30分シリーズの西部劇で 放浪するガンマンが1話ずつ事件を解決していく話です。我々はその1話だけの出演になります。
松井:へえ 西部劇なのか。
咲太郎:読んでないんですか!
島貫:こいつはそういうやつだ。字が読めるかも怪しい。
松井:芝居は覚えるもんじゃねえ 生み出すもんだ。
咲太郎:セリフを覚える必要はないんですけど 間違えないで下さいね。本番は最後まで止めずにやりますから。
雪次郎:えっ? 間違えたらどうするんです?
咲太郎:間違えたら最初からやり直しだ。
レミ子:ちょっと咲ちゃん 私の役 間違ってない?
咲太郎:間違えてないよ。レミ子は男の子だ。
レミ子:何で私が男の子なの?
咲太郎:吹き替えで子役を使うのは大変なんだよ。そこでレミ子のだみ声が生きるんだよ。
レミ子:私のどこが だみ声なのよ!
蘭子:何でもいいから やってみなさい。芝居は心よ。
レミ子:はい…。
藤井ディレクター:先生 見えたよ。どうぞ。
咲太郎:おはようございます!
雪次郎とレミ子:おはようございます!
蘭子:まあ 先生 お久しぶりです。
遊声:おお 蘭子ちゃん またよろしく。
蘭子:よろしくお願いいたします。
遊声:はい。
咲太郎今回のテレビ映画の主役 スティーブ・マッキングの声をあてられる豊富遊声さんです。
島貫:おっ あんたのこと よく知ってるよ。元活弁士の。よろしく。
遊声:誰?
松井:バカ!頭が高いんだよ お前は。先生 松井新平と申します。
遊声:はい よろしく。
雪次郎:ジョージ役の小畑雪次郎です…。
咲太郎:藤井さん。
藤井:うん?
咲太郎:今回はありがとうございます。
藤井:ああ…。遊声先生に金がかかるからね。予算を考えたら ぜいたく言えないよ。
咲太郎:頑張ります!
藤井:うん ハハ…。
♪
咲太郎:おはようございます。
効果さんたち:おはようございます。
雪次郎:咲太郎さん あの人たちは?
咲太郎:あの人たちは 効果音を作る効果さんだ。
雪次郎:えっ 音も一緒にとるんですか?
咲太郎:そうだよ。セリフだけを入れ替えるわけにはいかないんだよ。向こうでレコードを流して 音楽も新しく入れるんだ。だから間違えるなよ。みんなに迷惑がかかるからな。
雪次郎:はい…。
藤井:やあ いこうか。
一同:はい よろしくお願いします。
藤井:はい。
スピーカー(藤井)「それじゃ 初めての方 セリフをしゃべる時はマイクに近づいて。イヤホンから原音が出るので…」。
藤井:それを聞きながら 映像の口の動きとセリフを合わせて下さいね。それじゃ いってみましょう。
スピーカー(藤井)「回して下さい」
(ノック)
遊声:「ベティさんですか?」
蘭子:「ええ 私に何か?」
遊声:「仕事の依頼の伝言をもらったんですが」
蘭子:「あなたがレオさん?」
遊声:「ええ そうです」
蘭子:「早速だけど あなたを雇いたいの 私の夫として」
遊声:「どういうことです?」
蘭子:「私と結婚して下されば それでいいの。形式だけのことよ。お待ちになって」
(ため息)
蘭子:「息子のデービスです。この子の父親になってほしいの」
レミ子:「おじさんは誰?」
遊声:「さあね おじさんにも分からない」
蘭子:「今日からあなたのお父さんよ」
レミ子:「お父さんは死んだよ。戦争で英雄になったんだ」
蘭子:「デービス さあ またあっちに行ってなさい」
遊声:「お気の毒に」
蘭子:「その死んだ父親の父親 つまり あの子の祖父は鉄道会社を経営している大富豪です。そして もうじき あの子を私から奪いに来るんです。私はあの子を手放すことなんてできない。あなたに守ってほしいの」
遊声::「そういうことなら判事に頼むべきだろ。俺じゃない」
蘭子:「無理なの!」
(いななきの声まね)
蘭子:「あっ レオさん 来ましたわ!」
島貫:「さ~あ 今日こそは 孫を返してもらおうか」
蘭子:「返す?」
島貫:「判事からも法律上の許可を取ってきたんだ。諦めるんだ。あんたにはもう 子どもを扶養する権利は…」
蘭子:「判事からお金で買ったの?」
島貫:「ハッハ~ 何を言うかね。話は終わりだ。さあ ジョージ とっとと…」
遊声:「おいおい ちょっと待ってくれ」
島貫:「あっ ああ… おお… あんたは…」
蘭子:「あの子の… あの子の新しい父親です」
島貫:「あんたの… 新しい男か? ハハ… それじゃ 考えるまでもない。ますますここには…」
遊声:「子どもを奪うことはないだろう」
雪次郎:「あんたは引っ込んでろよ!ゴロツキだろ?痛え目に遭うぜ。ウッ…」
藤井:ダメだ! ああ ストップ! ストップ! ちょっと止めて。
咲太郎:すみません!
(ため息)
藤井:口と全然合ってないだろ! あんた 何見てしゃべってんだ!
咲太郎:島貫さん まず映像見て 口と呼吸 合わして下さいよ!
松井:お前ね 芝居というのは間なんだよ。
島貫:自分の間で芝居をしなかったら 役者の個性は死ぬんだ。
咲太郎:吹き替えは それじゃできないんです!
松井:こいつには無理だ。吹き替えってのはな 人の間を盗むんだよ。
島貫:そんな泥棒のまねができるか。お前じゃないんだ。
松井:あ?
藤井:ジョージ!
雪次郎:はい。
藤井:それから なまってるよ!お前 どこの生まれだ?
雪次郎:北海道の十勝です。えっ なまってましたか?
咲太郎:まなってた。
藤井:大富豪のお付きがなまるなよ!はあ… 頭からもう一回いくよ。
咲太郎:頼むよ みんな!
雪次郎:すいませんでした。「あんたは引っ込んでろよ。ゴロツキ…」
蘭子:「あんたは」
雪次郎:「あんたは引っ込んでろよ」
蘭子:「あんたは」。
雪次郎:「あんたは引っ込んでろよ!」
一同:「あんたは!」
♪
島貫:「話は終わりだ!さあ ジョージ とっとと…」
遊声:「おいおい ちょっと待ってくれ」
島貫:「おう? あんたは一体 どこの…」
蘭子:「あの子の新しい父親です」
島貫:「あんたの新しい男か? それじゃ 考えるまでもない。ますますここにはデービスを置いておくわけには…」
遊声:「力ずくで子どもを奪うことはないだろう」
雪次郎:「あんたは引っ込んでろよ! ゴロツキだろ?痛え目に遭うぜ」
スピーカー(藤井)「ダメだ!ストップ!」
雪次郎:えっ? なまってましたか?
島貫:お前 いい加減にしろよ バカヤロー!
松井:お前もだよ! 俺の出番はいつ来るんだよ!
スピーカー(藤井)「おい どうなってんだよ! 直ってないじゃないか!」
咲太郎:すみません! もう一度お願いします!
雪次郎:すみませんでした。
遊声:おい。本当に頼むよ。
雪次郎:はい…。
結局 これが7回も繰り返されまして…。
(ノックとドアが開く音まね)
島貫:「話は終わりだ!さあ ジョージ とっとと連れてこい」
遊声:「おいおい ちょっと待ってくれ」
島貫:「うん? あんたは誰だね?」
蘭子:「あの子の新しい父親です」
島貫:「あんたの新しい男か? それじゃ考えるまでもない。ますますここにはデービスを置いておくわけにはいかないね」
遊声:「力ずくで子どもを奪うことはないだろう」
雪次郎の代わりに遊声:「あんたは引っ込んでろ! ゴロツキだろ? 痛え目に遭うぜ」 「ハッ!」「ウッ!」 「俺はデービスの父親だ」
●喫茶「リボン」
麻子:あなたのお兄さんが声の会社を始めたの?
なつ:そうなんです。兄は声優と言ってますけど。外国のテレビ映画の吹き替えが主な仕事らしいんです。
茜:あっ 私 それ よく見てるわよ。最初は違和感あったんだけど 慣れてくると自然に感じてくるのよね。私のおばあちゃんなんて「この外人さん 日本語がうまいね」だって。
なつ:茜さんの家にはテレビがあるんですね。
茜:うん。割に早い時に買ったのよ。
麻子:その会社の俳優の人たちを今度の短編映画に使えってこと?
なつ:いや… そうじゃないですけど 声を探したいと思った時には 兄に相談することはできます。
麻子:分かった。話はそれだけ?
なつ:あっ いや…。
麻子:まだ何かあるの?
なつ:マコさんは… 今度の短編映画 あまり乗り気じゃないですか?
麻子:えっ…。
なつ:「ヘンゼルとグレーテル」面白くないと思ってますか?
麻子:面白くないと言ったら どうするの?
なつ:やめます。私はマコさんが納得してないと嫌なんです。私はマコさんと一緒に作りたいんです。もちろん みんなが納得いくものを。日本で初めて原画になる女性はマコさんしかいないと思っています。この会社に入った時からマコさんは私の目標なんです。だから納得のいく漫画映画を作ってほしいんです。それを私も一緒に作りたいんです。
麻子:あなたって ずるいわ…。
なつ:えっ?
麻子:そうやって 何でもいちずに自分の情熱だけを貫こうとするんだから。周りに悩んでる人は 何も言えなくなるでしょ。
茜:それは 少し分かる。
なつ:えっ… 本当?
麻子:でも ものを作るには大事なことよ。それがないとすぐに妥協するからね。だから私のことなんて気にしなくていいの。あなたは作品のことだけを考えてなさい。
なつ:マコさん 私は…。
麻子:それでいいって言ってるの!
茜:そうね… なっちゃんには結局 それしかできないかもね。
なつ:そんな! えっ それじゃ 私が人のことを考えられないみたいじゃないですか。
麻子:怒らなくていいのよ。それが若さってもんでしょ。私だって そうありたいのよ。
茜:マコさんだって まだまだ若いですよ。
麻子:若くないとは言ってない。
茜:あっ すみません…。
麻子:とにかく やるしかないんだから あれこれ考えずに頑張りましょう お互いに。
なつ:はい…。分かりました。
茜:さあ なっちゃん 氷解けちゃうよ。これ 飲んだら帰ろう。
なつ:はい…。
茜:ちょっと そんなに慌てて飲まなくても大丈夫だよ。
なつ:喉渇いてて…。
茜:緊張してたもんね…。
●感想
松井と島貫の存在がなんだかなあと思う西部劇「拳銃渡世人」の吹き替え。「ヘンゼルとグレーテル」の話になって、お茶の間受けはどうなんだろう?と思った矢先に、視聴率20%を切ったとのニュースがあり、やっぱりなあと。
でも、明日からは夕見子がやってきて、みんなを引っ掻き回すようなので、またまた数字も復活することでしょう。
改めて、世の中のおじちゃんおばちゃんは、人と人の気持ちの絡みが見たいんだわと書いて、あしたもよろしくお願いします。
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●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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