なつぞら(97話7月22日)
はい 1963年 昭和38年の夏になりました。
●東洋動画作画課
堀内:来たぞ! 来た! 来た…!
なつ:1本の長編漫画映画を作るのに 大体10ヶ月はかかるんです。1年近く ここにいるアニメーターの人たちは 同じキャラクターを描き続けることになるんです。
なつは26歳。東洋動画初の原画を担当する女性アニメーターになっていました。
なつ:映画は1秒間に24コマです。私たちが作っているフルアニメーションと呼ばれるものは12コマ以上 少なくとも12枚の画が必要になります。絵が生きているように見える あの繊細な動きは そこまで細かく絵を動かさなければ作れないんです。漫画映画は気の遠くなるような作業なんです。
記者:その基礎を作る原画は責任重大ですね。
なつ:原画というものは 何と言っても キャラクターに最初に命を吹き込む大事な仕事ですから。
記者:じゃ ちょっと描いてみてもらえませんか?
なつ:あっ… はい。
記者:奥原さんの これからの夢って何ですか?
なつ:夢? それは、もちろん すてきな漫画映画を作ることです。子どもが夢中で… それこそ 夢を見ているように それを見て それが大人になってもさめない夢になっていればいいななんて思います。今の私が北海道を出て7年 そんなふうに子どもの頃の夢を見続けているようにです。
記者:なるほど。それはまさにすてきな夢だ。こちら向いた写真も頂けますか?
なつ:はい。
記者:じゃ ちょっとカメラ見て… 右手に…。あ~ いいですね。じゃ それでいきましょう。
(シャッター音)
記者:ああ かっこいい!
●おでん屋「風車」
亜矢美:あ~! うわ~! かっこよく写ってる!
なつ:いや~ この服でよかったかな…。
亜矢美:いいよ いいよ。できる女って感じよ。
なつ:何か 目立ちたがり屋みたいじゃないですか。
亜矢美:今更 ハハハ…!
なつ:だけど こんなに買って どうするんですか?
亜矢美:あっ 売るんだよ ここで。
なつ:えっ?
亜矢美:だって 欲しいってお客さん いっぱいいるもの。
なつ:誰がいるんですか?
亜矢美:あ~ 茂木社長とか。
なつ:本屋じゃないですか。
亜矢美:あっ 社長のとこから買ったんだ。アハハハ…。
なつ:ここで売ったら営業妨害になりますよ。
亜矢美:あっ そうだ 北海道のご家族にも送ってさしあげないとね。
なつ:まあ そうですけど…。
亜矢美:あと 信さん。あれ 今どこにいんだっけ?
なつ:札幌の放送局です。
亜矢美:あっ そうか まだ北海道か。あと ほかに送りたいとこある?
なつ:千遥に送れたらいんですけどね。
亜矢美:千遥ちゃんか…。うん… いや きっと どこかで見てるって。知ってるんでしょ?
なつ:漫画映画作ってることは…。
亜矢美:だったら 絶対 この記事だって見てるって。
なつ:えっ そうでしょうか…。
レミ子:こんにちは。
咲太郎:おう 母ちゃん。
亜矢美:あら 珍しいね。どうした? こんな早く。
咲太郎:今日はレミ子の新しい仕事が決まって ここに来たいって言うからさ。
亜矢美:ハハ… レミちゃん 今日も全部?
レミ子:あっ 全部。
なつ:お兄ちゃん これ。
咲太郎:ああ これか!出たか!
咲太郎の声優プロダクションもなんとか形になって 今は四谷という場所に事務所を構えています。
なつ:レミ子さん また新しい仕事 決まったんだ。おめでとう。
レミ子:男の子の声ばっかりだけどね。
咲太郎:レミ子はもう うちの貴重な戦力だよ。
レミ子:なっちゃん。
なつ:うん?
レミ子:雪次郎とは最近 話してるの?
なつ:雪次郎君と? 雪次郎君も仕事は順調なんでしょ?
雪次郎君も 努力のかいがあって 吹き替えの当たり役を得ました。
●録音スタジオ
藤井:全体的にゆっくりなんですよね これね。
蘭子:はい。
藤井:何か セリフ足しましょうか。
蘭子:はい…。
雪次郎:じゃあ…「あなたも私も」って 足したらどうですか?「おいしく作れた方が 今日は夕食を作るの。あなたも私も おいしいものが食べたいでしょ」。
蘭子:いいかも…。あっ どうですか?藤井さん。
藤井:お~ いいね ハハハ。小畑 さえてるじゃないか お前 ハハハ…。
♪
蘭子:「分かったわ。どっちが夕食を作るか 料理で決めましょう」
雪次郎:「ナンシー 一体 何の話をしてるんだい?」
蘭子:「おいしく作れた方が 今日は夕食を作るの。あなたも私もおいしいものが食べたいでしょ」
雪次郎:「はあ… どっちが勝ったとしても 2人とも もう十分 おなか いっぱいになってるよね」
アメリカのシチュエーションコメディー「ビューティフル・ナンシー」で 気の弱い夫の声を演じています。気の強い妻役の亀山蘭子さんと共演を果たした この番組は 大人気となりました。
●おでん屋「風車」
咲太郎:どうも 劇団で妙なうわさが立ってるらしんだ。
なつ:うわさ?
亜矢美:雪次郎君の?
咲太郎:うん。あの亀山蘭子と雪次郎が恋仲になっているとか。
なつ:えっ! うそでしょ?
レミ子:劇団の中じゃ すっかり事実として扱われてるわね。
なつ:えっ でも 本当じゃないでしょ?
咲太郎:ああ それは分からない。
レミ子:雪次郎の本音をなっちゃんに聞きたかったのよ。
なつ:いや 私だって分かりませんよ そんなこと。
咲太郎:劇団の恋のうわさっていうものは まず当たってるんだ。な 母ちゃん。
亜矢美:まあね。そういうとこは 昔っから変わんないわな。
咲太郎:なつの職場は そんなことないか?
なつ:ある。いや だけど…。
●雪次郎のアパート部屋
(ノック)
雪次郎:はい 開いてるよ。何だ なっちゃんか。
なつ:元気?
雪次郎:どうしたの?
なつ:借りる。
雪次郎:うん。
なつ:う~ん 実はね… これ。
雪次郎:週刊誌?
なつ:私が取材を受けて これに載ったんだわ。
雪次郎:えっ 本当かい! どれ どれ どれ どれ どれ どれ どれ…。どこ どこ どこ?
なつ:ここ。
雪次郎:うわ~! こんなにでっかく載ってますもね! かっこいいな! これ 柴田牧場の人たち 知らせたのかい?
なつ:それはまだ これから。恥ずかしくてさ…。
雪次郎:すぐ知らせなきゃ! うちにも知らせるわ これ買うようにって。いや これ 帯広でも買えるべな? これ。
なつ:うん 多分…。ねえ 演劇は? 楽しくやってんの?
雪次郎:えっ 何で そんなこと聞くんだ?
なつ:うん…。
雪次郎:何か聞いたのか? 咲太郎さんやレミちゃんから…。
なつ:うん…。
雪次郎:俺と蘭子さんのことだべ? まあ そういう うわさになってるのは知ってる。
なつ:うん。
雪次郎:でも 何でもねえんだ。
なつ:あっ そうなの? 何だ…。
雪次郎:なっちゃん 俺はな あの人に早く追いつきたい。俺の中に強くある思いは 魂は やっぱりそこなんだわ。なっちゃん… 好きだ何だとそったらこと言ってる場合でねえんだ。
なつ:そう…。
雪次郎:うん。芝居が好きなように 俺は蘭子さんが好きだ。
なつ:うん。何か安心した。
雪次郎:何に安心したんだ?
なつ:雪次郎君は 昔の雪次郎君のままだから。
雪次郎:昔のようにセリフは なまんねえよ。
なつ:んだな。
雪次郎:んだ。
(笑い声)
雪次郎:あっ 写真の方が美人だな。
なつ:はい?
●東洋動画作画課
なつ:おはようござま~す。
一同:おはようございます!
堀内:「夢を見続けていたい。奥原なつ」
なつ:もう… ちょっと やめて下さいよ!そんなことするために わざわざ 1冊ずつ買ってくれたんですか!?
仲:なっちゃん おはよう。
なつ:おはようございます。よかった 仲さんまでしてなくて。
仲:今日10時に 会議室に来てくれる? 大切な話があるんだ。
なつ:はい。分かりました。
仲さんは 今や 会社の中間管理職 作画課長になっています。
写真:あっ はんこじゃなくて大丈夫です。
仲:本当に?
♪
茜:私も呼ばれてるのよ そこに。
なつ:あっ 茜さんも?
茜:大切な話って何だろうな。
神地:あれじゃないの? 今度 茜ちゃんと競争させようってことじゃ?
茜:何の競争よ。
神地:ほら 美人アニメーター! マコさんの時みたいに。
なつ:マコさんとそんな競争した覚えはない!
神地:冗談だよ…。
茜:もう… あんまり調子に乗ってると そのうち 冗談じゃ済まされなくなるからね。
下山:でも あれじゃないの?
茜:もしかして…。
なつ:あれ?
下山:♪空をこえて ラララ 星のかなた ゆくぞ
●東洋動画会議室
仲:今年の1月から 手塚治虫さんのプロダクションが製作してる「鉄腕アトム」がテレビで放送されてることは知ってるね。
茜となつ:はい。
仲:その「鉄腕アトム」が テレビ漫画として大ヒットしてる。そこで うちでもテレビ用のアニメーションテレビ漫画を製作するテレビ班を作ることになったんんだ。なっちゃんは原画として 茜ちゃんは動画として そのテレビ班に行ってもらいたい。
井戸原部長:君たちには 長編映画を外れて テレビ漫画に専念してもらいたい。
なつ:もう映画には関われないんですか?
仲:今は東洋動画らしく このテレビ漫画を成功させることが何よりも先決なんだ。
露木:坂場君はこのテレビで ようやく 演出家として世に出られることになった。君たちの若い力に期待してるよ。
山川:放送は今年の12月からだ。企画はここにいる猿渡君から出たもので 彼にも原画を描いてもらう。題名は「百獣の王子サム」と決まった。
なつ:「百獣の王子サム」?
猿渡:舞台は架空のジャングルです。そこにライオンに育てられた人間の少年が一人いるんだ。姿形は人間だから 動物たちからは差別を受けるわけね。その少年サムが さまざまなトラブルを解決していって やがては百獣の王の子として 動物たちから認められるようになる。そういう話ね。
なつ:面白そうですね。
猿渡:でしょ!
茜:猿渡さん いつの間に こんな企画を考えてたんですか?
猿渡:僕はテレビをやりたかったからね。こっそり企画を出してたんだよ。
なつ:あの 仲さん 一つだけ聞いてもいいでしょうか?
仲:うん。何?
なつ:東洋動画らしくというのは 「鉄腕アトム」とは違うやり方で作れっていうことでしょうか?
山川:いや…「鉄腕アトム」と同じやり方で作らなければテレビでは成立しないだろうね。低予算で しかも時間もない中で作って あれだけヒットさせていることに「鉄腕アトム」の価値はある。
なつ:そうですか…。
坂場:仲さんは あれをアニメーションだと認めていますか?
仲:えっ?
坂場:僕は少なくとも 東洋動画らしい アニメーションの作り方だとは思えません。仲さんはどう思っていますか?
仲:もちろん あれはアニメーションではないと思っているよ。
坂場:それでも作る価値があると思いますか?
なつ:イッキュウさん…。
なつよ 新しい時代の波が押し寄せてきた。君はその波に翻弄されるのか?それとも乗るのか?
●感想
と、文字起こし中に室内照明がダメになり、暗闇の中で奮闘する自分を褒めたい7月22日の朝。
昭和38年の夏ということで、一気に4年が過ぎてなつは26歳。雪次郎も26歳で蘭子さんは一体幾つなんだ?と記憶を辿っても、それに関した情報は一切なし。
あくまで“年上の女性”ということで、恋仲に年齢は関係ないさ~!♪ と劇団四季風に叫んで、明日もよろしくお願いします。
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●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。
●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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