朝ドラ「スカーレット」第116話、小池アンリ「川原ちゃんな 楽しいことばっかり思い浮かべるのが得意やったはずやのに うまいこといかへん 悲しいことが浮かんでしまう。どうしようもない思い出を振り返ってしまうって。なあ? 楽しい悲しいだけやのうてなってく。酔いに任せて 誰かの名前を呼んでしまう。みっともなく泣いてしまう。フフッ しゃあないな 年取ったんや。それが年を取るいうことや。ハチさん」。
そして喜美子は考えていました。年を取るということ…。子育てを終えた これからのこと…。穴窯のこと…。一人で生きていくということ…。
もしかすると、「スカーレット」の主題は年を取るということ、一人で生きていくということを、テレビの前のおじさちゃんおばちゃんに考えさせることではないかと思った、小池アンリの長いセリフでした。
スカーレット(116話2月18日)セリフ
●川原家・軒先
(回想)
アンリ:川原ちゃん ハチさん ハチさん言うて泣いてたで。
喜美子:ハチさん…?
アンリ:うん。
(回想閉じ)
照子:あっ 喜美子。
喜美子:あ~どないしたん 2人そろて。
照子:うちはこれ。敏春さんは…。
敏春:竜也が窯業研究所で武志君にようしてもろて…。
照子:お礼言うときたいねんて。竜也 真面目に通てんの。
喜美子:バナナのお裾分け頂きましたし それに何も大したことしてないんやないです。
敏春:いや~気にかけてもろうてるだけで十分 心強いんですわ。これ つまらんもんですけど…。
喜美子:え~!うちに? すいません。
敏春:武志君に言うたら お母さんとこ 持ってってくれへんか言うて。
照子:敏春さんの実家の旅館経由でな 取り寄せたええ肉やでえ。100グラム…。
敏春:値段は言わんでよろしい。
アンリ:洗濯もん出したいやけど クリーニング屋さん いつ来はる?
喜美子:クリーニング屋さん? 来はりませんよ。
アンリ:あ…こんにちは。
敏春:あ…こんにちは。
アンリ:小池アンリいいます。
敏春:熊谷です 丸熊陶業の。家内の照子です。
照子:この前…。
アンリ:今 ここに住まわしてもろてるんです。
照子:えっ。
喜美子:部屋 空いてるからなあ。
照子:ずるい。えっ ずるいずるい! ちょ…そんなん知らんかった! ずるいわ!
喜美子:わざわざ言うことないやん。
照子:な…何で教えてくれへんの!
敏春:子どもやないんやから…。
●川原家・母屋
(喜美子と武志の電話)
喜美子:アルバイト 何時まで? うん ほな 終わってからでもええし ちょっと顔出しぃ。ええお肉もろたで。うん。ほんで この前会うた 小池アンリさんもおるで。
アンリ:フフフッ うち。なあ 丸熊陶業いうたら タイルで有名な おっきなとこやな?
照子:タイルだけやないですけどねえ。
アンリ:そこの奥さんなんやろ? お手伝いさんとはちゃうよな?
照子:お茶わんでも出して 並べて下さいませんか?
アンリ:箸より重たいもん 持ったことないねん。
照子:ほな お箸出して頂けますか。
アンリ:は~い。えっ 何膳?
照子:あ~ どやろ?
アンリ:信作て 誰?
照子:うちが呼んだんです。もう来るんちゃう?
アンリ:ふ~ん。
喜美子:あかんわ。誘たけど あかん。
照子:武志?
喜美子:うん お肉だけ置いといてくれて。
アンリ:ほな 何人?
喜美子:あっ 4人です すんません お願いします。
照子:来ぃひんよ。親の世代が集まってるとこに 来ぃひん 来ぃひん。竜也も芽ぐみも誘ったけど 冗談やない言われた。
喜美子:え~ ほな ごはんは?
照子:お母ちゃんと カニ食べに行った。
喜美子:カニやったら行くん。
照子:ちゃうよ おばあちゃんはええねん 文句言わへんから。親はうっとうしいて しゃあないんちゃう。
アンリ:照子さん お子さん いはるん。
喜美子:女の子3人 男の子1人 上の子は嫁いだやんな。
照子:うん。雪子は これや。
喜美子:ええ~!
照子:年も取るわなあ。
喜美子:照子おばあちゃん…。
照子:おばあちゃんはやめてえ。
アンリ:照子さん 何 飲まはります?
照子:あ~ すき焼きやからなあ。
アンリ:おいしいワインがあんねん。後で一緒に飲もう。
照子:うちも持ってきたらよかったな。喜美子 飲まへんから。
アンリ:いや 飲むで。川原ちゃん めちゃくちゃ飲んべえやん。
照子:そうなん?
アンリ:一緒にワイン飲んだんや。なっ。
照子:喜美子 いつの間に飲んべいになったん。
喜美子:なってへんわ。あんな酔うたん初めてや。
アンリ:泣いて泣いて 大変やってん。
照子:えっ 泣いたん?
喜美子:よう分からん。
アンリ:よう覚えてへん言うねん。
照子:何で泣いたん?
喜美子:大したことない。
アンリ:大したことあったで? ハチさんハチさん言うて…。
照子:ハチさん…。
喜美子:うそやろ。
アンリ:そんな しょうもないうそ 言わへん。
照子:想像つかへん。
アンリ:やってみたろか?
照子:えっ いいんですか?
喜美子:いや もう やらんでええです。
照子:見たい見たい。
アンリ:うち 昔 女優やってん。
照子:女優!?
アンリ:こんな…こんな感じで。(酔った喜美子のまねで)ハチさ~ん ハチさ~ん ちょっと違うかな…。
照子:何 今の。ほんまに女優?
喜美子:いや もう…。
照子:あれやったら うちかて…。
喜美子:いや もうやめて下さい。
照子:うちもできると思う。
喜美子:もうええ もう やめなさい。
信作:喜美子~! ビール持ってきたでえ! 百合子の作ったケーキもなあ。あ~どっこいしょ
~。
八郎:こんにちは。
喜美子:十代田さん…。
八郎:お久しぶりです。
喜美子:ほんまや どないしたん?
信作:うちに泊まってんねん。
喜美子:何で?
信作:俺が名古屋から呼び出したった。有給取って会いに来てくれたんや。
喜美子:百合子 何も言うてなかった…。
八郎:あっ これ…。
信作:おっ 百合子 よろしゅう言うてた。イチゴケーキやでえ。
喜美子:あっ 小池アンリさん。友達やねん。
信作:どうも。
アンリ:信作さんって どちらさん?
信作:はい。
アンリ:小池アンリいいます。
信作:大野です。
アンリ:大野信作さん?
信作:あっ お… 幼なじみで。
アンリ:へえ~。
喜美子:妹の旦那でもあります。
アンリ:そうなん。
八郎:あっ 十代田いいます。
アンリ:十代田さん。
八郎:はい。十代田…。
照子:ああ~! 上がろ上がろ。上がって上がって。ええから 上がって。
八郎:ああ ああ 上がろ上がろ上がろ。
信作:こっから上がらんで 邪魔くさいな。
照子:ああ ええよ ええよ。
信作:お前 何か ええ肉入ったんやて?
アンリ:頂きましょ 頂きましょ。
信作:あれ すき焼き? すき焼きさけ! ええやん!
アンリ:食べよ 食べよ ほら みんなで。
照子:食べよ 食べよ。
信作:小池さん 小池さん…。
アンリ:小池ちゃんでええよ。
信作:ほな 小池ちゃん。小池ちゃん 座って下さい。ビール ビール… ほら おばちゃん。
照子:ああ… 何 おば…。
アンリ:おばちゃん。
照子:お前もやろ。
八郎:あの…。
信作:あれは 栓抜き 栓抜き…。
八郎:あの これ どないしよか。冷蔵庫入れときますか?
喜美子:そうですね お願いします。あっ やり…! やります やります。
八郎:はい。
喜美子:すんません。すんません…。
八郎:はい…。
喜美子:ほな 栓抜きやなてん。
八郎:栓抜き…。
喜美子:あっ やりますんでてん。ほな 持ってってもろてもええですか。
八郎:ああ 持ってきます。
アンリ:あかんかった?
八郎:何かあの… お盆か何か…。
♪
喜美子:よ~し ええよ。乾杯しよかあ。
アンリ:これ 何の会?
照子:ええ肉を囲む会。
喜美子:まあ 何の意味もないです。
信作:ほな どうでもええ会にしよう。
アンリ:どうでもええ会 ええな。ほな どうでもええ会に乾杯!
一同:乾杯!
信作:あ~ 食べよ 食べよ。
照子:おいしいですね。
アンリ:おしいやろ。
照子:おい 早速 肉か。
信作:ほんま ええ肉やで これ。
八郎:おう おう。
信作:なあ。う~ん!
アンリ:それ飲んだらワインいく?
信作:うん 飲みましょう。
アンリ:飲める?
信作:何でも来いです。
アンリ:フフッ。
照子:小池さん。
アンリ:うん? あ…「ちゃん」でええよ。
照子:えっ ほな…小池ちゃん ほんまに女優やってはったんですか?
信作:女優? えっ。
アンリ:映画2本出て 辞めてん。
照子:え~! えっ 聞いたん?
喜美子:いや 聞いてない。聞きたい思うてたんです。どんな映画ですか?
アンリ:興味ある?
照子:はい!
アンリ:うん…好きな人がいてな…。
喜美子:好きな人…。
アンリ:映画 誘われた時な 好きな人がいてて。
照子:待って 何で誘われたんです?
アンリ:ミス琵琶湖や。
信作:あ~ 今で言うスカウトされたんですか?
アンリ:うん 友達のお父さんが映画会社の人やってな 好奇心で初めの1本… う~ん 二つ返事で出てしもた。
信作:ちょっと それ タイトル聞いてええですか。
アンリ:「吹き荒れる青春の日々悔いあらためよ」。
信作:何を吹き荒れるんて?
アンリ:昭和21年の映画やった。
喜美子:戦争終わった翌年や。
アンリ:あんたら まだ子どもやったろ。
喜美子:うちは7歳やったか…。
信作:あ~ほな ハチは9歳やな。
八郎:うん。
アンリ:ハチさん…? ハチさん いわはんの?
八郎:あっ 十代田八郎いいます。
アンリ:ああ そうか…。
八郎:はい…。
アンリ:ふ~ん。うんうん。
照子:あの 映画の話 戦争終わった翌年。
アンリ:うちはそのころ 乙女やった。
照子:あっ 年齢 言わへん。
アンリ:言わへんわ 花の乙女や。好きな人がおってな もともともいいなずけや。ほんまに優し人でな…せや ここんとこがふわふわやってん。
信作:どこ?
アンリ:ここ。ここがな 柔らかくてふわふわで お餅みたいやった アッハッハッハッ…。
照子:お餅ぃ。フフフッ。映画は何で2本で辞めたんです?
アンリ:うん… 2本目で終わりにせえ言われてな その人に。もう やめとき言われてな。
照子:ほんで辞めたんですか?
アンリ:うん まあ ざっくり言うと 仕事より男の方を取ったいうやつや。うちはただ 好きな人といることを選んだだけや。8年前に亡くなるまでなあ ほんまに仲よう寄り添うたで。
照子:そうですかあ。
アンリ:ほんまに優しくて あったかくて…フフッ ここんとこがお餅みたいやった。
信作:ほやから どこですか。
アンリ:えっ…?
照子:ほやから そこ言うてるやん。ここや。
アンリ:十代田さん。
八郎:はい。
アンリ:ハチさんは よう飲まはるんですか。
八郎:ああ まあ たしなむ程度です。
アンリ:川原さんのお父さんは よう飲まはったそうですよ。ちゃぶ台ひっくり返した時もあったんやて。家族みんなでいてた頃 どんだけうるさかったか…。朝からもう怒りっ放しの笑い放しの それはもう にぎやかな毎日やったって。今は1人やからな…。春から息子さんと一緒に暮らす予定も流れてしもて…。朝起きて聞こえるのは鳥のさえずり 木々のざわめき言うてたな。風の音が寂しいって。川原ちゃん この前 ワイン飲んで酔っ払うてなあ。
(照子のせきばらい)
アンリ:ええやん もう聞いてもらおう。川原ちゃんな 楽しいことばっかり思い浮かべるのが得意やったはずやのに うまいこといかへん 悲しいことが浮かんでしまう。どうしようもない思い出を振り返ってしまうって。なあ? 楽しい悲しいだけやのうてなってく。酔いに任せて 誰かの名前を呼んでしまう。みっともなく泣いてしまう。フフッ しゃあないな 年取ったんや。それが年を取るいうことや。ハチさん。
八郎:はい。
アンリ:川原さんな 白髪見つけたんやて。
照子:いや うちもあるよ。あるやんな?
信作:ないわ 俺は。
照子:いや よう見えてん… ちょっと見せてみぃ。
アンリ:はい! 終わり。うちの話はもう終わり。なっ 飲もう。なっ?
信作:飲みましょう。
アンリ:あっ そや。せっかくやから うちが出た映画のクライマックスのシーン教えたろ。
照子:お~ いいんですか?
アンリ:ダンスシーンやで。
信作:ダンスシーン?
照子:ダンスシーン…。
信作:俺? 俺?
アンリ:ダンスシーンや 踊れるか?
信作:ダンスシーン… あ…はい まあまあ…。
アンリ:あっ もう1人 女優。
照子:あっ やるやる!
アンリ:あんな うちらが踊ってるとこ 邪魔しに来んねん。
照子:します します。
アンリ:ええか? ほな。いくよ ワンツー スリー。
信作:あ~ はいはい。
アンリ: ワンツー スリー…。はよ はよ 邪魔にしに来ぃ。ワン ツー…。
信作:邪魔しに来い…。
照子:い… 今ですか? どう…。
信作:どういう邪魔のしかたや…。
照子:今 今 あっ えっ 何?
喜美子:うちもやる!
照子:あっ やろう!
信作:ハチも ハチもやろう。はい。
八郎:え…。
信作:ええから。
八郎:ええよ ええ…。
信作:ワン ツー スリー…。
八郎:何でやねん。
信作:おれも分からんけど…。
八郎:知らん同士がやってもあかんやろ!
信作:知らんやん!
喜美子は考えていました。年を取るということ…。子育てを終えた これからのこと…。穴窯のこと…。一人で生きていくということ…。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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