朝ドラ「スカーレット」第6話、昭和22年(1947)冬。常治不在中に借金取りが家に乗り込んできて、大ピンチの川原家。
そしてもはや定番となった直子の自由奔放さ。「川原百合子さ~ん。呼ばれたら「は~い」やで。川原百合子さん。「は~い」は?」
なんとも末恐ろしい表現力。夢に出てこないでと願いつつ、心穏やかな週末をお過ごし下さい。
「スカーレット」6話10月5日
●川原家
マツ:出ていったで 草間さん。
喜美子:ええ!?
草間さんが残した短い手紙は 漢字が交っていて 喜美ちゃんはまだ全部を読むことができませんでした。
●丸熊家
照子:さあ うちの信作とで 厳しく教えたげるわ。
喜美子:は~い!
●川原家
(昭和22年(1947)冬)
信楽に来て 初めての冬がやって来ました。水道も電気もなかった喜美ちゃんの家に…。
常治:よっしゃあ いくで。
一同:お~!
電気がつきました。
喜美子:電気や~。
更に出来たのは… お父さんが仕事の合間に作った 自慢のお風呂です。新しいお風呂は天国です。天国を支えるのは喜美ちゃんです。炎の大きさを確認しながら温度を見極め 適切な量の薪をくべます。最初の頃は加減が分からずよく失敗しました。
常治:はあ~。あ~つ~! 喜美子~!
喜美子:えっ?
何度も何度も失敗し 叱られやり直し おかげで温度調節は玄人並みに鍛えられました。
常治:はあ~ ええ湯加減やぁ。
喜美子:おっしゃ!
畑を耕し小さな畑も作り ようやく収穫できるようになりました。畑の世話も喜美ちゃんの役目です。
喜美子:あ~ん…。
直子:川原百合子さ~ん。呼ばれたら「は~い」やで。川原百合子さん。「は~い」は?
喜美子:静かに食べえ。
マツ:問屋の集まり?
常治:おう。おやじさんが調子悪いよって 代わりに行け言われてな。戻り 週明けになるかもしらんわ。
マツ:気ぃ付けて。
常治:おう。お土産 買うてくるな。ええ子にしとけよ。喜美子 留守の間 頼んだで?
喜美子:はい。行ってらっしゃい。
常治:おう。行ってきます。
直子:行ってらっしゃい。
常治:おう。
♪
マツ:えっ!? また足らんの?この前 持ってたお金は?
常治:オゥちゃんにラジオ頼んだんや。ラジオの代金や。今どき ラジオの1つや2つ持たんでどないすんのん。
マツ:困ったなあ。すぐに羽 生えて… 飛んでくなあ。
常治:バタバタ バタバタ…。いらっしゃい。
マツ:飲み過ぎて おやじさんの顔 潰さんといてよ?
常治:分かってる。ほな 行ってくる。
マツ:お早うお帰り。
♪
本木:ちょっと見てきますわ。
工藤:お宅… 川原さん? 川原常治いう男を訪ねてきたんですけど…。
常治:だ… 誰や それ?
工藤:お宅…?
本木:川原いう表札 見つけましたわ!
常治:ああ そこな! そこの川原っちゅう男か。あっ おらんで。さっき出てったわ。しょうもない男やろ? あの大阪で借金こさえて逃げてきたいう…。ちゃう? そやろ? その川原やろ?
工藤:知っとんかい?
常治:せやから さっき出ていったって。はよ追いかけた方がええで。琵琶湖… 琵琶湖の向こうまで行って ず~っと逃げる言うとったで。
工藤:ほんまか おい。
常治:ほんまや。
工藤:ほんまか お前。
常治:はよ追いかけな。ほら。
工藤:ほんまか お前。
常治:いやいや ほんまやて。ず~っと向こう。ず~っと向こう。琵琶湖の向こう。はよ行った方がええ。早う。ほらほら ほらほら。あんなん捕まえて ギャ~したったらええねん あんなやつ。はあ…。
●信楽山小学校
望月:ええですねえ。川原さん すっかり読み書きできるようになって。絵もほんま上手ですね。
照子:誰のおかげ? 読み書きできるようになったん 誰のおかげかしら~?
喜美子:はあ…。
照子:ついこないだまで 毎週のように家に招いて 算数まで教えてあげた。誰のおかげ?
喜美子:何してほしいのん?
●大野雑貨店
喜美子:信作 まだ熱出たん?
陽子:ちゃんと食べさせてんのになあ 体 弱あてかなわへん。
喜美子:渡したいもんあって来たんやけど…。
大野:喜美ちゃん ジョーさん いつ戻るんや?
喜美子:あっ ラジオや。来週 言うてたかな?
大野:ほう。ほな それまできれいに磨いとくわ。
喜美子:えっ それ うちの?
大野:もう お金ももろてるで。
喜美子:やった~! すごいでぇ!
陽子:あっ 渡したいもんて 何?
喜美子:あ…。
陽子:うん?
♪
照子:受け取ってくれた?
喜美子:ああ…。
照子:何て言うてた?
(回想)
陽子:これ 恋文ちゃうの?
大野:ませた子やなぁ。
陽子:ほやけど 自分の子が好かれて悪い気しいひん うれしいわ~。
(回想閉じ)
喜美子:喜んでた。
照子:ほんま? ほな 待ち合わせ場所に来てくれるやんなぁ。
喜美子:えっ?
♪
陽子:「墓地で待ってます 照子」。
●丸熊家の墓がある墓地
喜美子:墓地なんて 普通来えへんで。
照子:知らんの? 若い男と女が 人目を忍んで会ういうたら こういうとこ来るんやで。
喜美子:人目を忍んで 何すんのん?
照子:いかんことやろ。
喜美子:いかんことって?
照子:いけないことよ。いけないことをしたくなるのが 人を好きになるってことなのよ…。
喜美子:はあ…。
照子:お兄ちゃんも ここで会うてた。
喜美子:お兄ちゃん?
照子:あっ!
喜美子:あ… よう来たな。熱あるんちゃうの?
照子:もう向こうやし 来て。
喜美子:大丈夫なん?
信作:来いひんかったら余計 熱が出そうやったから…。
喜美子:ああ。ほな ごゆっくり。何?
信作:ほんま言うて もうつらいねん。考えるとしんどい。「もうやめてえや」って言うてほしい。
喜美子:自分で言え。自分で!
♪
照子:帰った!? 何でここまで来といて。
喜美子:いけないこと したないんとちゃう? 照ちゃんとは。
照子:うすうす分かってわ。窯元の娘と雑貨屋の息子じゃ身分が違い過ぎる。
喜美子:ほな そういうことで。
照子:今日 お兄ちゃんの誕生日やねん。
喜美子:えっ?
照子:挨拶してってえや。うちのお兄ちゃんが眠ってやる。お骨はないけどな。学徒何とかいうのんで戦争行って 帰ってきいひんかった。年の離れたうちのこと… 信作のこともようかわいがってくれた。去年まで一緒にここでおめでとう言うてくれたのに…。
回想信作:ほんま言うて もうつらいねん。考えるとしんどい。
照子:ここや ここ!
喜美子:うわ~ ここか~!
照子:ちょうど この木に寄りかかっててん。
喜美子:お兄ちゃんはどっち?
照子:あの辺から うち のぞいててん。遠おて 相手のおなごの顔は 見えへんかった。
喜美子:せやから お兄ちゃんは どっちにおったん!?
照子:お兄ちゃんは こっちや! ほんで おなごがこっちや。出征する前の日やった。
喜美子:あ~ こんな いけないことしてたん…。
照子:もっと いけないことよ。
(喜美子に接吻)
照子:こんな感じやったんよ。いつか うちらも こんないけないことをする日が来るんやねえ。
喜美子:せえへんわ!絶対こんなこと ようせんわ! 何してくれんねん!ペッ! 汚っ…。もう帰るで!
照子:楽しかったなあ。
喜美子:楽しないわ!
照子:楽しかったから お友達になってあげてもええよ?
喜美子:いらんわ! べえ~だ!
照子:あ… 待って!
喜美子:待てへん!
照子:待って!
喜美子:待てへん!
●川原家
喜美子:ただいま。
マツ:お帰り。
喜美子:お昼 何するん?
マツ:お風呂たいてくれる?
喜美子:ええけど…?
マツ:お客さん 来てるで…。
工藤:琵琶湖の向こうまで行かされてな 体 えらい冷えてもうてん。
本木:お父さん帰ってくるまで おらせてもらいます。
大阪から来た借金取りです。「どないしよう…」。震える思いで懸命に考えます。そのころ… 信楽に向かっている人がいました。
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