「新型コロナウイルス ハイリスク高齢者への対策」かかりつけ医の必要性

バラエティ・スポーツ

3月4日の午後1:50分からEテレで放送された【視点・論点】「新型コロナウイルス ハイリスク高齢者への対策」、この番組内容を文字にしてみました。

出演は、日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦さん(福井県医師会会長 専門は慢性期医療。福井県で長年、慢性期医療や介護施設の運営に携わる)。

いずれ、誰にでも平等にやってくる高齢という事実。それを踏まえて今回の新型コロナウイルス感染拡大で、少しでも池端幸彦さんの貴重な言葉を知っておいた方がいいのではという考えからの文字起こしです。

それに、3月1日から始まったNHKプラス。

パソコンやスマートフォン、タブレットで総合テレビやEテレの番組を放送と同時に視聴できる素晴らしいシステムを有効活用したいという思いもあり、まずは【視点・論点】でトライです。

それにしても、池端幸彦さんの指摘はごもっともです。こういう方に大臣になってほしいものです。

「新型コロナウイルス ハイリスク高齢者への対策」

昨年12月に 中国・武漢市で初めての患者が報告された新型コロナウイルス感染症は、その感染が世界中に広がり 今や未知の領域に突入しつつあり、我が国でも3月3日現在ですでに26都道府県、計999名の感染者が報告されています。

このため、政府からはこの1~2週間が感染拡大防止に極めて重要な期間であるとし 多くの方が集まる全国的なスポーツ 文化イベントなどは 今後2週間の中止、延期、または規模縮小 さらに全国の小中高の学校と特別支援学校についての臨時休校が要請されました。

新型コロナウイルス感染症対策の基本的な考え方を示した図です。

現時点が感染早期の段階であるとすれば これから、3のように患者の増加のスピードを抑え、以下の流行のピークを下げられるか。そして4のように感染者の増加に合わせて医療対応の体制強化ができるのか 今まさに正念場を迎えようとしています。

しかし、ここでもう一つの重要な対策として いかにしてこの感染者の重症化を防ぎ、その命を守るかという点があります。

もちろん子どもたちの健康・安全を第一に考えることも大変重要ですが、まだ有効なウイルス薬がなく、対症療法が中心の現時点では致死率が高いといわれている高齢者や基礎疾患を多く持っている方々は より死の危険にさらされていることになります。

中国国内で感染が確認された5万5924人のWHOによる最新のデータ分析では、80歳以上の感染者の致死率は21.9% 実に5人に1人であったと報告されています。

逆に19歳未満の感染者は全体の2.4%にとどまっており、症状も比較的軽いようです。やはり、高齢者や基礎疾患を多く持った方々が重症化するリスクが高いことは明白であり、細心の注意が必要となります。

では、高齢者に対する対策はどのようなものがあるのでしょうか? まず高齢者に限らず重要なことは、感染症に対する基本的な対策をしっかり守ることです。

感染症対策の柱は、

1、感染源であるウイルスの排除

2、感染経路の遮断

3、本人の抵抗力の向上

この3原則に尽きます。1については、やはり、たんなどの分泌物やおう吐物、排せつ物などに触れないために、せきエチケットや手洗いの励行、手袋の着用などの標準予防策、いわゆるスタンダード・プリコーションが中心になります。

2については、感染経路は主に経口を含む接触感染と、飛まつ感染といわれていますので、ウイルスを持ち込まないこと、持ち出さないこと。そして、広げないことが重要です。

最近言われているように、換気の悪い密集空間に行くのを避けることも大事です。そして特に高齢者施設などでは、委託業者の出入りや面会の制限、さらには職員だけでなくボランティア、実習生の出勤前の体温測定などの対策も必要となります。

そして、特に高齢者に留意していただきたい点が、3の高齢者自身の抵抗力の向上です。ただ、新型コロナウイルスについては、まだワクチンが開発されていませんので、やはり栄養、運動、睡眠を必要十分にとっていただくことが基本になります。

この点に対する周囲の配慮や見守りは、在宅、施設に限らず大変重要な視点です。特に高齢者の肺炎は、発熱やせき、たんなどの一般的な症状が少なく、食欲が落ちただけなのに、単純X線写真や胸部CTなどで発見される例も多く、より注意が必要となります。

また、高齢者の命を守るという観点から、さらに1つ重要な視点を挙げておきたいと思います。

この新型コロナウイルスは、未知のウイルスであったため これまでは感染拡大の防止が中心であり、そのために不要不急な外出は控える、換気が悪く不特定多数の人が集まる集会は自粛するなどの対策がとられています。

もし、この流れのまま、高齢者の集まる集いやデイサービス、デイケアなどの通所サービスまでも自粛する対策がとられた場合、確かに新型コロナウイルスの感染の機会は減らせるかもしれません。

しかし一方で、高齢者が一定期間、家などに閉じこもることになれば、たちまち生活のリズムが狂い運動量が落ち、食欲もなくなる悪循環により 日常生活動作、いわゆるADLも低下し、低栄養や廃用症候群を起こす危険が高くなってしまうのです。

廃用症候群:過度の安静や活動性の低下によって身体に起きる症状

その結果、基礎疾患そのものが悪化したり、フレイルによる体力低下 免疫力低下により 他の感染症にかかってしまったり、感染症が進んでしまう可能性すら考えられます。

フレイル:年齢に伴って筋力や心身の活力が低下した状態

この辺りが、高齢者と一般成人、子どもさんたちとの大きな違いであることも十分理解しておく必要があります。

さらに、慢性疾患を多く抱える高齢者が、新型コロナウイルスの感染症だけを恐れるあまり、医療機関への受診も手控え、内服を中断したりすれば、基礎疾患の憎悪により体調を一気に崩し、場合によっては基礎疾患の悪化による死亡の危険すら考えられます。

まさに「木を見て森を見ず」となり「高齢者の命を守る」という基本的な考え方からすれば、本末転倒になりかねません。

やはり、こんな時だからこそ、強調しておきたいことは、普段からかかりつけ医を持つことの重要さです。

大病院の専門医と違い、かかりつけ医はその高齢者の多くの病気を診るだけでなく、家族構成や住まい、さらにはその性格までも熟知しており、時にはその生き方、死に方、いわゆるアドバンス・ケア・プランニングまで理解していることも多いのです。

そのようなかかりつけ医であれば、ある時は電話で、ある時はご近所や民生委員さんなどを通じて声をかけたり、時には外来を往診に切り替え、病状確認や適切な指導、専門医への紹介をしたりとさまざまな方法で患者さんを支えるすべを持っています。

こういう時のためにも、こうした、かかりつけ医との関係を、ぜひ普段から築いていただきたいものです。

一方で、仮にこのまま感染が蔓延期に移行するとすれば、地域包括支援センターなどが把握している情報を生かして独居や老老介護の見守り、関係機関への情報提供を努めていくことで、新型コロナウイルス感染症が直接の原因ではない、いわゆる災害関連死を防ぐことにつながると思います。

このような対策も、ぜひ考えていただきたいところです。また、現在の水際作戦がすでに月単位の長期戦になっている現状を考えますと、今後はさらに医師や看護師だけでなく、リハビリテーションスタッフや介護福祉士、管理栄養士、、介護支援専門員など 多くの職種との連携のもと、行政と一体となり情報交換を密にし、地域で高齢者の生活と人生を守っていく体制が必要だと思います。

実は日本は、2009年の新型インフルエンザ、パンデミックの際に、最も人が死亡しなかった先進国でもあり、日本の今後の動向は、世界中が注目しています。

これまでの対策について、一般報道も含め、いろいろと厳しいご意見も出されていますが、これだけの大規模でやっかいな新しい感染症対策は、近年では初めてのことです。

いろいろとご批判はあろうかと思いますが、それはそれであとでじっくり検証することとして、世界一の超高齢大国の日本が、今こそ官民一体となった対策、そして日本国の冷静な行動と団結力によって、国民一人一人の命を守り抜く、そういった覚悟が必要な時ではないでしょうか。

●字幕を追って書き起こしましたが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●内容に関してはその著作権等、一切の権利権限はNHKさんにあります。

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