NHK連続小説テレビ「わろてんか」3月10日第133話。
亀井:バンザ~イ!
一同:バンザ~イ!
風太:我々わろてんか隊は皇軍演芸慰問の使命を見事完遂し 大成果とともに隊全員無事での帰還をご報告致します。
てん:皆さん 大変なお役目 ご苦労さんでした。
(拍手)
風太:いやいや いやいや 帰ってきてから取材やら挨拶やらで えらいこっちゃ。団長なんかな やるもんやない。
てん:そやけど 今日は はよう家に帰ってあげてな。おトキちゃんも飛鳥ちゃんも首長うして待ってるさかい。
風太:まあ そういう訳にもいかんやろ。あっ そや 新聞社の局長が第二陣のわろてんか隊 やってほしい言うてたで。
てん:第二陣!?
風太:う~ん いや まあ とりあえず みんなに聞いてみんと。
てん:そや…向こうはどやった?怖い目に遭わへんかったか?どないした?
風太:いや まあ 確かに奥の方の駐屯地で大砲の音 聞いた事があったな。遠くの方や。大した事ない。
てん:そやけど…。
(戸が開く音)
イチ:お帰りやす。
てん:リリコさん?
楓:どないしはったんです?
風太:兵隊さんの手紙 天満に届けに行ったんやろ?
四郎:へえ 行きました。
リリコ:戦死してはった…。頼まれてた住所に手紙届けに行ったら 若い女の人が出てきて 手紙見たら急に泣きださはったんや。しばらく泣いて「あの人は英霊になりました」て。
回想兵隊:ありがとうございます。
リリコ:いやや…。うち こんなん いやや!
てん:専務 さっき話してた第二陣の事やけど…。やめた方がええんとちゃうやろか。
風太:ただいま!
飛鳥:お父ちゃん!
風太:飛鳥!ただいま戻ったで。よいしょ。おう 元気やったか?おい。
飛鳥:うん!
風太:ちょっと見ぃひん間におっきなった~ハハハ!
トキ:お帰りやす。戦地慰問 ご苦労さまでした。ごはん できてます。
風太:待たせたな。堪忍な。そや 飛鳥!飛鳥ちゃん ほれ。そや そや そや お土産や。何かな 何かな? ん! ほれ!
飛鳥:ありがとう!
風太:アカン… アカン おトキちゃん。おトキちゃんに何も買うてきぃひんかった。ごめん。
トキ:そんなん いらん。あんたが無事に帰ってきてくれたんが一番のお土産や。
てん:伊能さんの言うとおりでした。戦地に安全なとこはない。北村の家族 危ない目に遭わせるとこやった。
亡霊藤吉:な~に しょげてんのや。てんばあちゃん。
てん:おばあちゃん!?
亡霊藤吉:そりゃ そやろ。孫ができたんやから おばあちゃんや。
てん:うちには 子ぉはいません。そやさかい 孫もいぃひん。
亡霊藤吉:強情やな。なあ てんが慰問団を送ったんは何でや?
てん:兵隊さんにわろてもらお思たからです。
亡霊藤吉:その亡くなった兵隊さんも ミス・リリコアンドシローの漫才見て わろうてくれはったんやろ?
てん:そうです。
亡霊藤吉:それだけで慰問に行ったかいがあった。胸張ってええ事や思う。
風太:わろてんか隊 第二陣 やろ思います。
電話先の栞:一度うまくいったからといって次も無事だという事はないんだぞ。
風太:分かってます。
電話先の栞:何のためだ?何のためにそこまでする?
風太:これは行ったもんにしか分からん。そやから また てんの事とあと… トキの事 頼んます。
てん:軍隊慰問第二陣の話 正式に依頼がありました。
風太:俺は社長が反対しても慰問団は続けるべきやと思う。
トキ:けど 危ない事あらへんの?
楓:そうや。大陸の奥地まで戦火が広がってるて。ますます危ないわ。
キース:おれは行ってもええで。
アサリ:ほな わいも行くしかないなぁ。
リリコ:うちも行くわ。ええやろ?四郎さん。
四郎:もちろん。リリコと一緒や。
万丈目:ほな 台本作家も必要やな。
楓:何で…皆さん えらい目に遭うたんとちゃいますの?
トキ:そや。手紙預かった兵隊さん 戦死しはったし…。
四郎:確かに兵隊さんは明日をも知れん命です。
リリコ:せやけど…な。その人らを笑わす事ができたんは芸人冥利に尽きるわ。
万丈目:もし 漫才見てくれはった次の日に亡くなってしまう兵隊さんがおったとしても わてらがやった事は無駄やなかったって そう思えるようになったんです。
風太:俺らが行かなアカンねや。
キース:お国のため 会社のためやのうて 言うたら…自分らのために行くんや。そやさかい 心配せんでええ。
アサリ: 社長 そういうこっちゃ。
てん:北村は笑いの会社です。うちらが笑いを忘れたらアカン。そう思てます。よう分かりました。おトキ 楓さん 承知してもらえるか?
楓:ほな 今度は新作 持ってってもらわんとな。
トキ:必ずご無事で戻ってきてくださいね。
てん:おおきに。ほな わろてんか隊 続けさせてもらいましょ。
一同:よっしゃ。
(拍手)
リリコ:うちは せっかく覚えたから 漫才にあっちの言葉使いたいわ。偉いさんに聞かれたら まずい事 全部 いろんな外国語にするんや。
四郎:いやいや…お前 そんな事したら普通に兵隊さんにも意味分からへんがな。
リリコ:そら あんたが通訳して怒られたらええねん。
四郎:何やねん それ!もう!
アサリ:わいは兵隊さんのバカバカしいネタがええわ。
キース:おお~!
万丈目:ほな 連隊長が壷にこっそり隠してる水あめを 二等兵が盗み食いするちゅうのは どうや?
キース:お~ええやないか!それで それで?
万丈目:いやそれだけや。
キース:何や それ!
てん:さっき みんなの話 聞いてた時 新一兄さんの言葉 思い出したわ。「人間はお金や地位や名誉を競い合い 戦争までするアホな生きもんや。そやからこそ 笑いが必要になったんや」て。
風太:人はいつか必ず死ぬ。けど その悲しみを乗り越えるために 笑いがある。つらい時こそ笑うんや。
てん:笑いの底力 見せたりまひょ。
風太:おう 藤吉 もう少し やらしてもらうで。見守っといてや。
てん:よろしゅうお願いします。
北村笑店は このあとも外地だけでなく日本各地にも慰問団を送り続ける事になるのです。
※このコラム内の写真は全てテレビ画面からの引用で、その全ての権利はNHKにありますので予めご了承願います。
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