NHK連続小説テレビ「わろてんか」3月12日第134話。
戦地の兵隊さんに笑いを届けた慰問団 わろてんか隊の活躍は国民にあっぱれと称賛され…。
てん:北村は笑いの会社です。うちらが笑いを忘れたらアカン。そう思てます。
陸軍少佐:英米の思想にかぶれた映画など もってのほか!
栞:軍部の意向に沿って孝行忠義の物語を作れという事か。
山下専務:新世紀シネマとの提携話 真剣にお考え頂いた方がええと思います。もう大きな流れには逆らえん世の中なのかもしれません。
国や軍の娯楽への介入が次第に増えていきました。それから半年 北村笑店は慰問団を国内にも派遣するようになっておりました。
昭和14年(1939年秋)
てん:あっ
亀井:それでは内地慰問団団長として広島へ行ってまいります!
てん:すんまへんけど よろしゅうお願いします。
リリコ:ホンマ 目ぇ回りそうやけど文句なんか言うてられへん。
四郎:そやな。どこ行っても皆さん 大笑いしてくれはるし。
風太:軍隊の慰問だけやないで。東京の寄席からもな お前らに出てほしいって もうひっきりなしに電話や。ほれ 手紙でもこんなぎょうさん。
てん:ああ~全国の皆さんが見たい言うてくれはるんはうれしいけど 体は一つしかあらへんしなぁ。
亀井:とにかく我々で役に立つんやったら 全国どこへでも行かしてもらいます。
てん:その心意気です。あんじょうお気張りやす。
亀井:へえ!
山下専務:社長 新作が検閲で引っ掛かったってホンマですか?
栞:社会風刺がけしからんと。それに男女の劣情を催させる場面がよろしくないらしい。
(ため息)
山下専務:内務省には。
栞:行ってご高説を伺ってくるさ。
キースとアサリ:「気合十分 すごい」「にらみ合い…」。おい!お~!
風太:重たい…重たい 重たい。キース届いたで。よいしょ!
キース:おおっ おお~!
風太:いや~キースが映画の主演張るやなんて。
キース:まだまだこれからや!俺はチャップリンみたいになる。世界のキースを目指すんや。
風太:おう 頼むで。
アサリ:よっしゃ わいも銀幕デビューするで!…いや 決まってる訳やないで。そういう気持ちっちゅう訳や。
風太:当たり前や!頭スマスマ!
アサリ:あっお前 それ悪口やぞ!はっ…専務!専務!伊能さんがな そない言うてこんでもわいら北村で映画作って 儲けたらええんちゃいまっか?
キース:せやな!映画やったら俺らの高座 見られへん日本中のお客さんにも見てもらえるしな!
風太:アホ!簡単に言うな そんな事。映画なんてな 俺らが簡単に手ぇ出せるような代物やない。でもまあ確かに お前らの言うてる事も分かる。ぎょうさん いてるさかいな。
アサリ:な!な!な!な!せや!北村で映画やりまひょ!伊能さんに手伝うてもろて北村笑店映画部 作るっちゅうのはどうや!
風太:ええかもしれんな それ。
キース:なあ!手伝うてもうてな。
アサリ:ええで!
楓:あっ 専務 ちょっと!はよ来てください。
風太:何や。
楓:すんまへん。
キース:ちゃんと…ちゃんと言うとってや!
風太:お~!おい おい! おい 社長が…。社長が勲章もらえるってホンマか?
てん:へえ おおきにありがとうございます。
風太:ホンマに勲章もらえんのか!
てん:慰問団派遣したり あちこちに寄付したりしたんが お国に貢献したて認めてもらえたらしい。
トキ:ホンマ よろしおしたな!
一同:おめでとうございます!
てん:うちが…勲章もらえるやなんてホンマ 夢のような話やわ!
楓:お笑いの意義が認められたという事です。
万丈目:そやそや!もう こないな日が来るとはな! 北村社員全員にとっても名誉な事です!
てん:ホンマ 皆さんのおかげです。ありがとう!ありがとうございます!
(拍手)
風太:よし イチ!胴上げや 胴上げ。
イチ:胴上げ!?
万丈目:さあさあ さあさあ!そんな着物のご婦人…着物のご婦人を何言うてまんねんな!
てん:専務!専務 胴上げしたら?
一同:わっしょい!わっしょい!わっしょい!わっしょい!
てん:わざわざ お電話頂いてすんまへん。
栞:泣きながら知らされてね。
てん:けど これもいろいろ面倒見て頂いてる伊能さんのおかげです。ホンマにありがとうございます。
栞:困ってるからね。あやかりたいくらいだよ。
てん:アハッ そや キースさんの映画の件 ホンマにいろいろお世話になりました。封切り みんな楽しみにしてます。
栞:ああ。
てん:それに刺激うけたんか 専務や芸人さんらが 北村でも映画作りたいて言い出して。
栞:そりゃ新しいライバルの出現だ。
てん:アハハハ。
トキ:おてん様 また煮物作り過ぎてしもて…。
栞:そ…それじゃ近々 事務所に顔を出すよ。うん それじゃ。
トキ:これ どうぞ。
てん:ひゃ~おいしそやなぁ。
トキ:あと これ。見とくれやす。「女太閤 北村てん社長 笑いの慰問団派遣で貢献す」。
てん:はあ~女太閤やなんて…。
トキ:ううん 女経営者として世間様から評価されたいう事です。おめでたいやないですか。
てん:そうか?
トキ:へえ。
つばき:お疲れですね。
隼也:いや…。お母ちゃんが「女太閤」て えらい褒められてるわ。
つばき:あっホンマや!どないしはりました?
隼也:僕はこのままでええんかな思てな。ここは? おっ。ここは?
東京 内務省
役人:お待たせしました。
栞:はい。
役人:こちらの作品 拝見しましたが 男女が接吻する場面はいかがなものかと。
栞:接吻する場面…そんな場面は撮っておりませんが。
役人:確かに接吻の直接的な描写はありませんが 女性がつま先立ちした足元を映す事で 接吻が連想されれば同じ事です。カットしておきました。
栞:その場面は作品の肝の部分です。そこをカットしろと?
役人:見た者が自由恋愛を謳歌したいと思ってしまう可能性があります。
栞:自由恋愛だって差し支えないでしょう。
役人:西洋風の軟弱で退廃的な恋愛は 命を惜しまず戦うべき若者に悪影響を与えかねません。何度も同じ事 言わせないで下さい。
キース:え!?俺の映画が上映中止に?
栞:本当にすまない。
てん:そんな…もう出来上がってるのに何でです?
栞:男女の接吻を思わせる場面のほか 12か所が切られた。
キース:…んな アホな!うわっ 俺の渾身のシーンばっかりやないか!
栞:自由な恋愛が下劣だなんて世も末だ。このまま切られた状態であれば上映はできるんだ。だが それではもはや別の映画になってしまう。
風太:検閲がそない激しゅうなってるとはなぁ。漫才も落語もどうなるか分からん。
栞:娯楽に対する締めつけはこれからもっとひどくなるだろう。
キース:まあ しゃあない。納得でけへん漫才 高座にかける訳にはいかんのと同じや。
伊能商会社員:次々 検閲に引っ掛かるんは 一体どういう事や?
伊能商会社員:上映中止なら大損や。ただでさえ映画事業は赤字続きやのに。
山下専務:やめなはれ。今までのようなやり方は もう通用せんのやないでしょうか。
新世紀キネマ・工藤:このところ 映画業界の情勢も変わってきましたし ご心痛もおありでしょう。正直 理想の旗を振り上げるばかりの伊能社長のやり方では このご時世 国の反感を買うだけだ。伊能商会の死活問題になるんじゃないでしょうかね。
てん:提携?新世紀キネマとうちが?
新世紀キネマ・工藤:ええ。わろてんか隊のご活躍を拝見させて頂いて これからの映画に必要なのは こういう意義ある笑いだと思いまして。東京の映画と大阪の笑いが一つになれば もっとお国のお役に立つ事ができます。
てん:せっかくのお話ですけど うちは伊能フィルムと提携してますさかい。
新世紀キネマ・工藤:伊能フィルムと組んでいてもこの先 なかなかうまくいきませんよ。
てん:あっ もしもし 伊能さんですか?
山下専務: いえ どちら様でしょうか?
てん:北村笑店の北村と申します。
山下専務:ああ 北村社長。
てん:あの…伊能社長は?
山下専務:伊能は会社を辞めました。
てん:え!?
新世紀キネマ社長 工藤隆一郎として登場したのが、俳優の栗原英雄さん。NHK大河ドラマ「真田丸」で、真田パパ(真幸)の弟・真田信尹(のぶただ)を演じておりました。
昌幸から他国との交渉や情報収集、調略を任されていて、時には暗殺などの汚れ仕事もやってのけた真田信尹が、新世紀キネマ・工藤の姿とダブり、ガンバレ!小野但馬守政次です。
#リトルナイトミュージック 稽古中の栗原です。#わろてんか また新たなキャラクターをやらせていただきました。人の出会い役の出会い感謝です。
今日という日は忘れない。
今を生きる、精一杯生きることが未来に続くのだと刻まれた日。
使命があるなら引き受けよう。#LNM また新たなキャラです♪ https://t.co/PpwoIjVKHL— 栗原英雄(ほぼ本人) (@polon0702) 2018年3月11日
※このコラム内の写真は全てテレビ画面からの引用で、その全ての権利はNHKにありますので予めご了承願います。
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