NHK連続小説テレビ「わろてんか」3月15日137話。
風太:よっしゃ。ほなそろそろ定例会議 始めんで!今月から映画法が施行されて検閲がかなり激しゅうなった。けどや 北村笑店の映画第一作目「お笑い忠臣蔵」は必ず成功させる。なあ伊能さん!
てん:台本はどないな状況です?
楓:はい もうすぐ初稿が書き終わります。
万丈目:ちょっとね読ましてもらいましたけど 笑えて泣けて なかなかええ仕上がりやと思いますわ。
栞:ところで配役の事なんだが…。
アサリ:わいは大石内蔵助でどうですやろ。
キース:まあまあ まあまあ俺は堀部安兵衛でええわ。
イチ:キース師匠 アサリ師匠!ここいてはったんですか。もう出番ですよ。
キース:もうそんな時間か。
風太:本業遅れるようなな ろくでもなく奴は映画出させんぞ!おい。はよ行け おい。
アサリ:分かった。
風太:頭スカスカやないかお前!早く。
万丈目:ちょっと行かしてもらいますわ。じゃあ楓君 原稿頼んだで。
楓:へえ。
亀井:すんまへん。
風太:定例会議や言うてるやん。何で?
てん:亀さん!
亀井:ああっ社長!ただいま慰問から戻ってまいりました。
リリコ:ただいま!戻ってきたで。
てん:皆さんお帰りやす。
リリコ:もう日本一周ぐらいしたんちゃうか?
四郎:ホンマ 大阪恋しゅうてな。
てん:えらいご苦労さんでしたなぁ。
風太:ほんで どやった?
亀井:いや~どこ行っても大盛況で。特にミス・リリコアンドシローの外地報告漫才が大人気で。
てん:ええとこに帰ってきてくれはりました。
楓:それでは続けて ほりが父 弥兵衛と夫 安兵衛が討ち入りに向かうのを見送る場面。どうぞ。
リリコ:疲れた言うてんのにホンマ 人使い荒いわ。
四郎:なんで僕が夫役やないんですか?
てん:雰囲気 見るだけですさかい。
四郎:雰囲気って 僕ら実際に…。
楓:どうぞ。
リリコ:「ともに過ごした時は短くとも堀部の娘 妻として生きられたは果報の極み。この世で叶わずともあの世にてまた…」。
楓:四郎さん お父ちゃんが目立ったらあきまへんで。
四郎:すんまへん。
楓:リリコさん どうぞ。
リリコ:「ご無事で必ずお戻り下さい」。
栞:これだと検閲に引っ掛かるかなぁ。
楓:やっぱりそうでしょうか。
てん:へ?
栞:討ち入りに行く夫に 命を惜しませるような事を言うのは…。
てん:けど それが女子の本心や思うんやけどなぁ。
楓:どないしたらええんやろか。
四郎:やっぱり僕が安兵衛やった方がええんちゃいますか?
栞:じゃ試しにやってもよう。ねえ。
栞:えっちょっと待ってくれ。四郎君が ほりか?じゃリリコ君。試しに?
リリコ:うちが?
栞:うん 試しに。いや可能性を見てみる。
リリコ:ホンマに?
てん:そや! 赤いしごき帯や!
楓:え?
てん:ほりが 安兵衛と初めて出会うた時 赤いしごき帯 手渡すやないの。楓さんお台本やとその時 ほりは必ず返しに来てほしいて 安兵衛励ますやないの。あっちょっ リリコさん すんまへん。すんまへんな。
ほり(てん):ともに過ごした時は短くとも 堀部の娘 妻として生きられたは果報の極み。この世で叶わずともあの世にてまた 堀部の娘 妻として生きとうございます。一日も早いご本懐 お祈り申しております。
安兵衛(栞):あい分かった。
楓:見えた…すてきやわ!
リリコ:赤いしごき帯だけでホンマは帰ってきてほしいいう気持ちがよう伝わるわ。
四郎:しごき帯だけで そんな分かるか?
リリコ:分かるわ!そういう女子の気持ちが分からんからあんたはアカンねん!
四郎:あっそんな…分かりませんよね?
栞:いや僕には分かったよ。
四郎:うわっ!嘘!
リリコ:分かるわ誰でも。
四郎:分からへんわ!
てん:何やの?話って。
風太:いやいやいや 通天閣の件や。そろそろ決めなアカン。おう 金の事やったら心配あらへん。あんな ほら あっどれや?これ…。ほら 広告料や見物料取って長い目ぇで見たら損はしぃひん。ほれ。藤吉やったら「大阪一の会社が通天閣買わんとどないすんねん!」言うて即決や!
てん:そうかもしれんなぁ。
風太:うん。
回想藤吉:あれが通天閣やで。日本一の高い塔や。あのてっぺんまで笑い声 響かせたる。
イチ:どうぞ。
伊能フィルムの助監督たち:お久しぶりです!
栞:皆 どうした?
風太:皆さん 伊能さんがうちで映画作らはるって聞いて駆けつけてくれはったんや。
伊能フィルムの助監督たち:使てもらえませんでしょうか。お願いします。
一同:お願いします!やらせて下さい!
栞:彼らは優秀な助監督や撮影・証明の技師たちだ。どうだろう 彼らに手伝ってもらうのは。
てん:もちろんです。
風太:せっかく来てくれはったしなぁ。
てん:うん。
栞:ありがとう。皆 よろしくお願いします。
一同:おおきに ありがとうございます!
てん:よろしゅうお願いします。
栞:ありがとう。ありがとう!
風太:さあ 皆さんも来てくれがった。機材もフィルムも買う。もう後戻りできひんで。
楓:さすが伊能さん。北村のあれをよう分かってはりますな。まさに人は財なりです。
てん:こないにぎょうさんの人が慕うて来てくれはる。伊能さんのやってきはった事が間違うてなかったんや。
栞:うん。
技師たち:よし ここに置こう。載せますよ。よいしょ。
栞:題名ですか? 「お笑い忠臣蔵」です。お笑いです お笑い。「お笑い忠臣蔵」です。はい お願い致します。ありがとう。
風太:宣伝しよう思うてな。
てん:ええから。
風太:待て待て待て!何で?何で?や…やめろって おい! やめろ!やめろって おい。曲がってもうたがな。ええやないか これ。油断も隙もないな。
栞:危ないよ。あ~それ 真剣だよ。
キース:えっえっ危なっ!危なっ!
アサリ:お前…。
キース:ハハハハ 嘘だよ 嘘 嘘。
てん:嘘?
てん:甘いもんでもどうです?
栞:楓さん ここの討ち入りなんだが もう少し派手にできないかな。
楓:そしたら 雪ん中でツルッとみんなですっ転んだ方が面白いんとちゃいます?
アサリ:「討ち入りだ~!アイタッ」。
栞:つかまって。
てん:「アイタッ」。
キース:「討ち入りだ~!アイタッ」。
栞:つかまって。
てん:「アイタッ」。
一同:「アイタッ」。「アイタッ」。
栞:ハハハハ これは見た事がない討ち入りだよ。
てん:確かに緊張が一気に解けて何や笑えますわ。ねえ!
栞:いや近々 伊能フィルムが新世紀キネマに吸収されて大規模な国策映画の制作に乗り出すらしい。こうなる事は分かっていたけど さみしいもんだね。
てん:「伊能栞元社長の暴走に原因」? ちょっと何です?これ。
栞:好きなような書かせておけばいいよ。会社も含めて多くのものを失ったが こうなると殊更 僕は間違ってなかったと思うよ。僕は今ここで映画を作れて幸せだ。
回想栞:日本中を感動させたい。
回想てん:ほな うちらは日本中を笑わせます。
回想栞:どっちが先か競争だ。
てん:あん時から伊能さんは夢を追ってどんどん新しいことに挑戦してずっと生き生きしてはる。まだ うちらの競争 勝負ついてまへんえ。
栞:ああ 負けないよ。
てん:うちもです。
風太:社長 見ぃひんかったか?
売店の子:今 上に行かはりました。
風太:おおきに。よいしょ。どないしたんや?こんなとこで。
てん:通天閣か 買おか。こんな時代やからこそ うちらが旗振って大阪 元気にせんとアカン。
風太:そやな。いや~よう言うた! さすが俺らの女太閤さんや。
※このコラム内の写真は全てテレビ画面からの引用で、その全ての権利はNHKにありますので予めご了承願います。
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