NHK連続小説テレビ「わろてんか」3月21日142話。
昭和18年 北村笑店が買い取った通天閣が家事で焼け落ちました。試練の時が始まります。
お楽:ただいま戻りました。
イチ:ただいま戻りました。
てん:お帰り。
昭和19年(1944年)3月
てん:買い出し ご苦労さんやったなぁ。
風太:どや 食料 手に入ったか?
イチ:へえ。かぶらにごんぼ それから…。
お楽:じゃがいも ぎょうさんもろてきました。
イチ:どうでっか?
風太:イチよ~やっと役に立ったな。
イチ:おおきに ありがとうございます。
大阪府庁:ごめんください!
風太:へえ!どなたさんで?
大阪府庁:大阪府庁の者です。
風太:…だってさ。ええ じゃがいもに育ったな。これ。庭潰して畑にしたかいがあったわ。 これ。
大阪府庁:社長さんは どなたさんです?
てん:へえ うちですけど。ホンマにこれはうちの畑で採れたもんですさかい。なあ。
大阪府庁:私は買い出しの取り締まりに来たんやありません。
風太:違うんかい!何や ギャーギャー ギャーギャー言いやがって お前・
大阪府庁:空襲による火災の被害拡大を防ぐため この辺り一帯を建物疎開する事になりました。
風太:建物疎開?
大阪府庁:はい。この寄席は速やかに閉鎖して取り壊してもらいます。
キース:立ち退きだけやのうて壊すちゅうんか。
風太:火事が広がらんよう さら地にして防災地帯を作るらしい。
アサリ:何や それ!
四郎:そんな殺生な!
リリコ:藤吉っつぁんの魂こもったこの小屋 壊せる訳ないやろ!
一同:そうや!
アサリ:お客さんかて ようけ入ってるんや!
イチ:従業員はどないなりますやろか?
お楽:クビですか?
てん:そんな事ありまへん。ここの取り壊しの事も粘り強う掛け合うてみます。
トキ:社長も勲章もろたり会社も慰問に協力してるんやさかい 考え直してもらえるかもしれまへん。
風太:まあ みんな 余計な事考えんと しっかり高座を務めてお客さんを笑わしたってや。ええな!
てん:お気張りやす。
てん:そうですか。
(戸の開閉音)
てん:おおきに。ありがとうございました。
てん:もしもし 夜分遅くに失礼します。建物疎開の件で…。
隼也:ああ…藤一郎。もっと力込めなアカンで。
藤一郎:うん!
隼也:「うん」やのうて…。
藤一郎:はい!
つばき:ああ 大家さん おはようございます。
隼也:おはようございます。
大家:北村さん 役所からの通達です。
隼也:はい。
大家:この長屋が建物疎開する事になりました。
隼也:え?
大家:ひとつき以内に立ち退くのことになったので ご協力よろしくお願いします。
隼也:いや そんな急に言われても…。どこに行けと?
近所のおっさん:近所もみんな同じだ。お国のため 喜んで協力するんじゃないか。何だ その顔は。
隼也:いえ。
近所のおっさん:この非国民が!
風太:藤吉 すまん。いろんなとこ 話をしに回って…。けど 取り壊しは撤回できんかった。
トキ:おてん様…。
てん:風太 ご苦労さんでした。ホンマ おおきに。寄席が消えても北村の心が消える訳やない。藤吉はんやったら きっとそう言わはるわ。
てん:このテーブルもよう使い込んだわるわ。
トキ:ここにみんな集まって話し込んだりもの作ったり。
風太:ご苦労さん。さあ そろそろ名札外そか。
亀井:こいつは疎開。こいつは戦死しよった。
風太:このコンビも戦争がなかったらスタアになれてたのにな。
てん:ホンマ 悔しいな。
てん:お疲れさんです。ちょっと休憩しまへんか?
キース:ありがとう。
四郎:頂きます。
てん:なかなか片づかへんなぁ。
キース:その気になったら こんなとこ すぐに片づくんやけどなぁ。
四郎:ぎょうさん 思い入れがありますさかい。
キース:名残惜しいっちゅうか。
アサリ:ええもん めっけたで。
四郎:おお~!
キース:おお~!
アサリ:えらい古いめくりが物置にあったんや。
キース:おっ 文鳥師匠や。
てん:あ~!
四郎:万丈目さんと歌子さん。
アサリ:おっ 大物出たで。
四郎:えっ どちらさん?
アサリ:出た出た! 岩さんや。
四郎:岩さん?
アサリ:怪力岩男。伝説の芸人や。
四郎:あのクルミ割る人?
アサリ:あっ知っているか?
てん:どないしはったん?
リリコ:笑い声が聞こえへんなぁ。うちらがここで漫才してたんが夢のようや。
楓:社長。これ うちが預かってもよろしいですか?
てん:あ…台本?
楓:時局柄 今ではできへん漫才台本 ぎょうさんありますけど いつの日か 再演してほしい思てます。
リリコ:ええなぁ。
てん:また大阪中にお客さんの笑い声 響かせましょ。
風太:これを外す時が来るやなんて。
トキ:ホンマ 思いもしませんでしたわなぁ。
てん:ここまでやってこれたんはこの家訓のおかげです。おおきにありがとうございました。
てん:お義母さん 藤吉はん すんません。けど笑いの灯いは決して絶やしません。
キース:外すで。
アサリ:おう。
大阪で笑いの殿堂と名をとどろかせた南地風鳥亭はその歴史の幕を閉じました。北村笑店のそのほかの寄席も閉鎖や取り壊しを迫られました。
風太:残った寄席は天満風鳥亭と4軒だけや。けど 芸人らは大忙しで頑張ってるわ。
てん:飛鳥ちゃん 今日も勤労奉仕?
飛鳥:へえ。兵隊さんのために軍服作ってます。
大阪市役所:ごめんください!
トキ:うちが。は~い!お待たせし…。
大阪市役所:大阪市役所から来ました。北村隼也さんのお宅ですか?
トキ:へえ。けど 今 隼也は別のところにおりまして…。
大阪市役所:お母様ですか?
トキ:あ…いえ。あの…お待ち下さい。おてん様 おてん様!
大阪市役所:北村隼也さんの召集令状です。おめでとうございます。
※このコラム内の写真は全てテレビ画面からの引用で、その全ての権利はNHKにありますので予めご了承願います。
スポンサーリンク
スポンサーリンク