NHK連続小説テレビ「わろてんか」3月22日143話。
大阪市役所の役人:北村隼也さんの召集令状です。おめでとうございます。
てん:ありがとうございます。
風太:あと4日後には入隊や。
トキ:どないすんの?
風太:どないもこないもあるか。一刻もはよう知らせんと間に合わんどころか てんと会うて話す時間ものうなる。今すぐ行ってくる。
トキ:どこへ?
風太:川崎や。てんの事 よう見とけ。それとな 隼也に電報打っといてくれ。
トキ:分かった。気ぃ付けてな。
風太:おう。
隼也:電報もろて 覚悟はできてましたけど実際に手にすると 何や…。
つばき:どうぞ。
風太:お前は英語ができる。内地勤務か少なくとも前線には行かんやろ。つばきさん 大丈夫や。これは二人の当面の生活費や。
隼也:いや これは…。
風太:ええ! 隼也 お前はとにかく すぐに大阪帰ってこい、てんに藤吉に挨拶してから入隊せえ。
隼也:おっちゃん。お願いがあります。
てん:藤吉はん…。隼也が戦争に行きます。
幽霊藤吉:隼也は大丈夫や。俺に似て運がええからな。
てん:どういう事です?
幽霊藤吉:幸運の女神さんがついてるからに決まってるやろ。お前の事や。そやからな まずはお前は暗い顔せんと「ん廻し」でもして わろうてやれ。落語や。運がようなるよう「ん」がつく言葉言うて 一つ言うごとに田楽が食べれるっちゅう噺や。
てん:知ってますえ。
幽霊藤吉:おう。蓮根人参大根先年 神泉苑の門前の薬店 玄関番 人間半面半身 金看板「根本万金丹」 銀看板「根元反魂丹」瓢箪看板
てん:ああ 何や分からんわ。
幽霊藤吉:ホンマやな。そや ほなら オチは知ってるか?
てん:知ってます。「あっちで半鐘がジャンジャンジャンジャン こっちでジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャン 消防ポンプがウ~ウ~ウ~」。 何やったっけ?
幽霊藤吉:あれや「鐘がカンカン」。
てん:あっ せや!「「鐘がカンカンカン」。
幽霊藤吉:おお~「何や この田楽 生やないかい」。
てん:「お前のは火事やさかい あんまり焼かん方がよかろう」。
幽霊藤吉:ようできました。
てん:何十年 寄席で働いてる思たはるん。
隼也:ごめんください。
てん:どなたさんですか?
隼也:僕です。
てん:へえ。
隼也:朝はように すみません。一目会うて ご挨拶をと。勝手に家飛び出して連絡もせんと申し訳ありませんでした。許してもらえるとは思てません。そやけど…。
てん:入り。
隼也:おおきに。
隼也:お母ちゃん 恥重ねる事 承知で一つお願いがあります。つばきと藤一郎の面倒 見てやってもらえませんやろか。今 僕らが住んでる川崎の長屋が建物疎開で 住む家がのうなってしまうんです。つばきの実家も遠方に疎開したさかい 頼る事もできへんし。
てん:二人は?
隼也:今日 風太おじちゃんと一緒に。
(戸の開閉音)
トキ:おはようさんです!隼ちゃん!
隼也:おばちゃん…。
トキ:隼ちゃんや…。よう…帰ってきはったな。
隼也:はい。
(戸の開閉音)
トキ:おてん様!おてん様 ええもん お持ちしました。
てん:ひゃ 小豆! ようこんなに。
トキ:なんとかあちこち駈けずり回って。
(戸の開く音)
キース:お邪魔します~。
アサリ:開いたで 開いたで!
キース:隼也 帰ってきたんやて?
てん:今 知り合いのとこ ご挨拶行ってます。
キース:そうか 残念やなぁ。ほれ 卵 もうてきたで。
トキ:卵なんて よう手に入りましたな。
てん:こない贅沢なもん すんません。
キース:構へん 構へん。隼也の出征祝いや。
アサリ:それからこれ 白米も持ってきたで。
てん:ひゃ ホンマに?おおきに!
アサリ:ああ。
トキ:師匠 張り込まはったな。
キース:わいらのボンがお国のために兵隊行くんや。
アサリ:せめて白米で祝てやらんとな。
てん:皆さん おおきに。ホンマにありがとう。
キース:うまいもん食わしたってな。
アサリ:頼むな。
隼也:うわぁ…豪勢やな。
てん:おトキやら キース・アサリ師匠らが 持ってきてくれはったんや。
隼也:ありがとうございます。
てん:お国のために出征する人への祝い膳や。つばきさんと藤一郎の事は うちで面倒見さしてもらいます。家も身寄りもないもんをほっとく訳にはいかへんさかい。
隼也:ありがとう お母ちゃん。ホンマにありがとう。
てん:ほら はよ食べんと冷めるえ。
隼也:はい。頂きます。うまい!
てん:頂きます。もう そない慌てんと。
(戸が開く音)
リリコ:こんばんは!隼也! 隼也 いてるか?ああ…お帰り 隼也。
隼也:リリコちゃん。
リリコ:元気にしてたか?出征 おめでとうございます。
隼也:ありがとうございます。
リリコ:あんたがアメリカさんと戦うやなんてなぁ。
隼也:家族守るためや。
リリコ:ん?何や。あんたも抱き締めたいんちゃうか?代わったろか?
てん:何 アホな事 言うてますの! もう。
リリコ:食べてる最中にごめんな。子ぉも大きゅうなったやろ。
隼也:もう6つや。
リリコ:あんたの子で藤吉っつぁんの孫やったら 男前に違いないな。
(電話の着信音)
てん:はい もしもし 北村です。うん分かった。気ぃ付けてな。今から汽車に乗るらしい。明日の朝 つばきさんと藤一郎 連れてくるて。
隼也:うん。
リリコ:いや~藤一郎に会うの 楽しみやわぁ。
てん:そやなぁ。
初孫 藤一郎との初対面に緊張するてんでした。
スポンサーリンク
スポンサーリンク