NHK連続小説テレビ「わろてんか」3月29日149話。
栞:おてんさんのお茶久しぶりだ。
てん:どくだみのお茶ですけど。ホンマようご無事で。
風太:敵国でどないなってるか分からんし俺も心配したんやで。これっくらいやけどな。
栞:実はマーチン・ショウのつてで向こうの映画会社にいたんだ。そこで信じられる仲間ができた。
てん:仲間?
栞:ああ。日本との開戦直前に 彼らが転勤という名目で中立国にある映画会社の支店に僕を送り出してくれたんだ。
てん:そうでしたか。
栞:大阪で空襲があったと聞いて君たちの事をずっと案じてた。なんとか日本に進出する企業の案内役という形でこっちに戻ってこれたんだ。
てん:ホンマによかった。
風太:そやな。
栞:僕に何かできる事はないか?僕は北村の人間だ。大した事はできないかもしれないが再建のために働かせてほしい。風鳥亭を建て直す資材が必要ならあちこち当たってみる。力業だが進駐軍にでも…。
てん:伊能さん。おおきにありがとうございます。けどみんなまだまだ食べるんで精いっぱいです。芸人さんも一人もいたはらへんし。そんな時に寄席を再建するやなんてうちらにはできまへん。申し訳ありまへん。すんまへんな。
栞:いや。
風太:家族同然や思てる芸人が戦死したりけがして廃業したりしててんは何もできひん自分を責めてんねや。何より隼也が帰ってきぃひん。このままやったらてんは歩きだせへん。
風太:おいお前ら全然進んでへんやないか!
一同:すんまへん!
風太:すんまへんてお前 はよどかさんと。荷物置く場所ないやろ。はよせえ!
てん:風太!伊能さん!
栞:あちこち当たってみたがどこも資材不足で難しいな。とにかくこうやって手に入ったもんでコツコツやるしかないな。
風太:なあてん!
てん:うちはまだ…。
栞:ライバルが立ち止まっていたら引っ張ってでも歩かせる。横に並んでこそのライバルだ。さあ手伝って。
風太:さあ馬力入れるで~!
一同:へえ!
風太:ご苦労さん。まあそれ飲んで休んでくれ。
手伝い:ありがとうございます。頂きます。頂きます。
風太:1杯30円や。
手伝い:え~っ!?
風太:冗談やそんなん。25円や。
手伝い:え~っ!?
栞:ありがとう。
てん:久しぶりに体動かして汗かいたら何やすっきりしました。
栞:よかった。
てん:結局伊能さんにはいつも助けてもらうばっかりで。
栞:日本は戦争に負けた。愛する人や家族を失って皆生きる気力を失ってる。そんな時だからこそエンターテインメントが必要だ。やっとだ。やっと日本にも自由な文化が花開く時がやって来た。今度こそ自分の作りたいものを作れる。だから君ももう一度歩き始めるんだ。夢はまだ終わっちゃいないだろ。隼也君が帰ってきた時胸を張って迎えられるようになるためにも。ね!
(ノック)
風太:ちょっとええか?伊能さんにお客さんや。
山下:伊能商会に戻ってきてもらえませんでしょうか。
風太:あ…横から何やけどなあんたが伊能さんを追い出したんやろ?何言っ…。
てん:風太。
山下:どの面下げてと思われるんは百も承知です。けどお願いします!会社を…社員を助けてやって下さい!
一同:お願いします!
栞:頭を上げてくれ。君たちをとがめるつもりはない。だが…。僕は今北村の人間だ。その上での協力という事なら力を貸してもいい。
山下:おおきにありがとうございます!
一同:ありがとうございます!
栞:ただし条件がある。北村笑店との業務提携を再開して 不動産事業部にある人材や物資で風鳥亭再建に協力してほしい。どうだろう。
山下:喜んで。
てん:風鳥亭の再建?
風太:え~まずは伊能さんがうちの役員に復帰されて伊能商会との業務提携をまた始めた事をご報告します。
てん:うちらには今何もない。そやけどこの景色空が大きゅうて頭塞ぐもんがない。
楓:北村笑店 天に向かって伸び放題や!
てん:ホンマや。伸びる!伸びる!どないしたんや風太。
風太:いや…。てんがわろた。てんが…戻ってきてくれた。
栞:ここが僕たちの始まりだ。きっと焼け跡からだからこそできる寄席がある。
(アコーディオン)
通行人:あっちあっち!
風太:おいどこ行くんや。おい!やっとけよ!
一同:へえ!
リリコの歌:「赤いリンゴに」
てん:すいませんごめんなさい。
♪口びるよせて だまってみている青い空 リンゴはなんにもいわないけれど リンゴの気持はよくわかる リンゴ可愛いや可愛いやリンゴ♪
(拍手)
てん:リリコさん四郎さん…。
リリコ:戦争が終わってすぐ 命からがらここに寄ったんやけど誰もおらんかったんや。
四郎:こいつ守り通せたんで食いぶちだけはなんとか。
てん:そうか。ホンマにまた会えてよかった。こうしてお二人にも会えたんやさかいうち笑いの神さん信じるわ。風太が命がけで守ってくれた看板や。この看板があるとこが大阪の…いや日本の笑いの1丁目1番地や。うちらの風鳥亭を再開して新生北村笑店を旗揚げしましょ。
てんの夢が本格的に動き出しました。
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