朝ドラ「エール」第13話、三郎が連帯保証人になったことで多額の借金を背負うことになった喜多一。それを返済するために義兄の茂兵衛に融資を頼み、その見返りとして裕一を権藤家の養子にすることを決めた三郎。
三郎:こんなこと言うのも何だけど… 諦めんなよ。
裕一:残酷だよ… 父さん。
確かに残酷。でも当時の昭和初期は大不況という事実。金持ちである妻の実家の養子は悪くない、そんな風に考えてもおかしくない三郎の判断で、親の心子知らずと、珍しく三郎の肩を持ってみました。
エール(13話4月15日)セリフ
●福島ハーモニカ倶楽部・公演会場
楠田:裕一 何かあったか?
裕一:別に。
♪
楠田:譜面の確認 終わりました。
館林:ありがとう。どうした?
楠田:裕一が…何か変です。
館林:いつも変だよ。
会員:そうだよ。
楠田:違うんです。いつもの変とは違う…変なんです。
会員:そろそろ時間です。ご用意願います。
(幕が開く音)
(拍手)
●呉服屋「喜多一」居間
三郎:おめえ 音楽が好きか?
裕一:何? どしたの?
三郎:好きだよな。好きなもんがあるっつうのは幸せなことだ。俺は兄ちゃんが2人死んでこの家を継ぐごとになった。別に不満でもねえ。好きなもん 俺にはながったからな。藤堂先生 覚えてっか?
裕一:う…うん。
三郎:先生 おめえをいっぺえ褒めでた。
回想・藤堂:裕一君には類いまれな音楽の才能があります。
三郎:おめえが初めて人に褒められて俺はうれしくてうれしくて…。
裕一:ねえ…な…何なの? さっきから。
三郎:俺…やっちまったんだ。
(福島縣福島市字大町四拾番地 古山三郎)
三郎:俺の悪い癖だ…つい 人を信用しちまう。
●福島ハーモニカ倶楽部・公演会場
館林:続いては 倶楽部で初めて作った曲を演奏します。作曲をしたのはまだ商業学校生の古山裕一君です。
(拍手)
館林:彼は独学で作曲の勉強をした努力家です。是非 彼のほとばしる熱意のほどをお聴き取り下さい。じゃあ 古山君 指揮を。
裕一:えっ?
館林:君の曲だ。君がやるべきだ。
(拍手)
裕一:はい。
●呉服屋「喜多一」居間
裕一:お…覚えてる? 運動会で転んだ時のこと。あの時…音楽ってすごいなって。いじめられっ子で根性のない僕にでも音楽は力 与えてくれんだって知ったんだ。ど…どうにもなんないんだよね? 母さん…母さん 何て言ってんの?
三郎:茂兵衛伯父さんと喜多一を救ってほしいと願ってる。
裕一:も…茂兵衛伯父さん 僕でいいって言ってんの? 僕…何もできないよ?
三郎:代々続く家だ。他人が家を継ぐことは許せねえ。その気持ちは俺にも分がる。喜多一を…おめえでも浩二でもなく 赤の他人に継がせるって考えっと嫌なもんだ!
裕一:家族にとって… 僕が養子に行くことが… 一番いいいんだよね?
三郎:ちっとだけだ。ここ ふんばれば また新しい可能性も見えてくる。
裕一:どんな? 分がった。今度の公演で最後にする。
三郎:こんなこと言うのも何だけど… 諦めんなよ。
裕一:残酷だよ… 父さん。
●福島ハーモニカ倶楽部・公演会場
(拍手)
公演終了後 裕一は倶楽部を辞めると伝え みんなに謝りました。その後は淡々と学校生活を送り 茂兵衛伯父さんの銀行からの融資で喜多一は急場をしのぎ…。
●呉服屋「喜多一」
三郎:しっかり 味気ねえな~。
ただ 時は過ぎていきました。そして 旅立ちの前日。
●呉服屋「喜多一」裕一の部屋
浩二:兄ちゃん いい?
裕一:うん? どした?
浩二:明日 見送れねえからさ お別れ 言いに来た。
裕一:何だ…珍しく感傷的だな。
浩二:だって 兄弟の別れだろ?
裕一:意外。もっと淡泊なやつだと思ってた。
浩二:俺 逆に…兄ちゃんのこと もっと感傷的な人間だと思ってたけどね。蓄音機 どうする? 持ってぐ?
裕一:あ…あれ お前 もらったもんだろ。
浩二:そうだけど…。お 俺…音楽聴く気はねえし 実質 兄ちゃんのもんだったし 持ってけよ。
裕一:いいって!
浩二:ごめん…。
裕一:なあ…。家族と店… 頼むぞ。
浩二:うん。兄ちゃん ありがとう。
●呉服屋「喜多一」店頭
裕一:汽車で1時間だよ。みんな並んで 大げさ。
まさ:荷物 銀行に送っておいたから。
裕一:あ…ありがとう。伯父さんと一緒に住むのは 息 詰まっから銀行に住み込みでよかった。父さん… 俺 もう大丈夫だから気にしないで。
三郎:申し訳ねえ。つれえことあったら いつでも帰ってこいよ。
裕一:ありがとう。皆さんもお世話になりました。行ってきます。
大河原:行ってらっしゃい…坊ちゃん 風邪ひかねえようにね。うん。
●川俣銀行・裕一の部屋
まさの手紙:「見ると辛いだろうけど 辛いとき支えてくれるのは音楽だと思うから。母より」。
落合:あ~初めまして! 支店長の落合です。
鈴木:行員歴15年の鈴木です。
松坂:2年目の松坂です。
昌子:事務の菊池昌子です。よろしく~。
そこで働く人たちは皆 底抜けに明るかったのです。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。