朝ドラ「エール」第23話、裕一を福島に連れ帰ってイギリス留学に送り出したい三郎と、娘が傷つくことを怖れて裕一と別れさせたい音の母・光子、2人の思惑は一致していたのだったが…。
光子:諸手を挙げて喜べる男じゃない。それでも あなたに託すの。何でだと思う?
裕一:せ…接吻したからですか?
光子:バカ! 違う! あんたっていう人間を信じとるの。頭は駄目と言っとるけど心が行けって叫ぶの。だから…しょうがない。許す! 私は。
裕一の能天気ぶりが朝の時間には非常に心地よく、このままキャラが変わらないでと願う昭和の日です。
エール(23話4月29日)セリフ
●関内家・居間
吟:何しに来たのかしら?
梅:連れて帰るためでしょう。決まっとるじゃない。
吟:その割に穏やかじゃん。
梅:方や忘れさせたい 方や留学させたい。2人の目的は一致しとるもん。
吟:つまり?
梅:別れさせたい。
吟:ええ~っ!?
♪
光子:裕一さんのお父さんから頂いたお菓子。福島の名物 薄皮饅頭。
音:ありがとうございます。あの 私…。
三郎:お聞きしております。息子と文通して頂いたそうで。ありがとうございます。
音:まさか ファンレターの返事が来るなんて びっくりしました。
光子:どうして お返事くれたの? ファンレターはいっぱい届いたでしょうに。
裕一:皆さん 僕を賞賛したり励ましたりしてくれたんですが 音さんだけは僕の音楽に関心寄せてくれて。皆さんには申し訳ないんですが 手紙の返事書いたの 音さんだけなんです。
音:キャ~!
(ふき出す音)
裕一:あ…あの…お世話になりながらちゃんと言えてなかったんですが 音さんがすばらしい女性です。で…。お嫁に下さい! ど…どうか…お願いします!
吟:先を越されたわ。
光子:ハハッ…ハハハハハ…。おかしいわ 裕一さん。
三郎:ハハハハ…。あっ 冗談か。何だ 柄にもねえ。すっかり だまされちまった。ハハハハ…。
裕一:じょ…冗談ではありません。僕は…お…音さんと結婚したいです。
光子:どういうこと?
音:私も 今 初めて。
裕一:一緒に過ごして確信しました。僕にはあなたが必要です。僕の音楽には あなたが必要なんです! どうか…どうか 僕の申し出を受け入れて下さい。
音:裕一さん…。
三郎:おいおいおい!
光子:駄目駄目 駄目駄目…。
三郎:光子さん 話が違いませんか? あなた 先ほど言いましたよね。娘には別れろと言ってある。娘も了承してると。これ…どういうことだ?
裕一:えっ?
光子:そちらこそ 突然 言えに押しかけてきて えっ? 住まわせたあげくに いきなり結婚を申し込むなんて どういうつもり?
裕一:あっ…ご ご…ごめんなさい。あの…どうしても気持ちを抑えきれなくて。
三郎:謝んな。こっちは悪くねえ。
光子:悪いでしょう! 大事な娘をたぶらかして!
音:お母さん!
三郎:たぶらかしたのは そっちだろうが! ファンレターなんか書いてこなきゃ こだことになってねえんだ!
光子:何言っとんの。あんた ファンレターにのこのこ返事書く方がどうかしとるわ!
三郎:お~口の…!
音:あっ!
光子:もしかしたら 若い女は音だけだったからじゃない?
裕一:いやいや…。
三郎:おいおいおい! 口の減らねえ女だな。そんなんだからこんな娘が育つんだ。
裕一:父さん! ひ…ひどいよ!
三郎:裕一! いいか 目覚ませ。よく見ろ。一見 かわいく見えっけど 慣れりゃどこにでもいる顔だ。イギリスさ行ってみろ。比べもんになんねえ美人がわんさかいんだぞ。
裕一:父さん…。
三郎:こだどこで一生を決めることはねえ!
音:人を美醜で判断するな!
三郎:はあ?
音:お父さん 見かけの美しさなんて 本当の美しさではありません! 心のきれいな人が美しい人なのです!
三郎:性格は顔に出るって言うけどな。
音:そうです! 心がきれいだと顔にも出ます!
三郎:ハハハハ! 何だよ 結局 見かけってことじゃねえか。ハハッ! フッフッフッフ…。
光子:はあ~あなたも大変ね。この屁理屈は生まれつき?
三郎:屁理屈とは何だ! う~…。
裕一:あっ…ふだんはもっと穏やかで 優しい父なんです。
光子:そう? まっ とにかく外国へ行って いつ帰ってくるか分からない男に娘はやれません。
音:お母さん…。
光子:まあ せっかくだから みんな食べたら? うん…饅頭はおいしいわ。
裕一:音さんも食べよう。
光子:どうしたの? 食べないの?
三郎:裕一 食え。
裕一:いや 1個でいいよ。
三郎:俺はいいがら。
裕一:何で? 父さん 薄皮饅頭好きだろ?
三郎:い…。
裕一:うん?
光子:廊下の突き当りです。
三郎:何がだ?
光子:おなか痛いんでしょう。どうぞ。
三郎:うるせえ! おめえの世話にはなんねえ。
裕一:ほら 行ってきなよ。
三郎:今は俺のことより おめえのことだ!
裕一:漏れちゃうよ!
三郎:ヘ~ッヘッヘッヘッヘ! 漏れっかよ~。大人だぞ~。何言ってやがる。
(腹をくだす音)
三郎:ひい~! 突き当りだな。
光子:右にあります。
三郎:うっ…。
(腹をくだす音)
三郎:あっ!
(腹をくだす音)
光子:お茶 いれてきます。
音:どうして? 急に。
裕一:分がんない。勝手に言葉が出た。
音:本気?
裕一:ほ…本気。
音:いいの?
裕一:何が?
音:私で。
裕一:ぼ…。音さん 音さん ちょっと こっち来て。僕には君しかいない。音さん…や…やなの?
音:私にも あなたしかいない。
裕一:ありがとう。
音:裕一さん。
裕一:はい。
音:結婚しても歌手になる道は諦めない。それでもいい?
裕一:うん。僕も望んでる。2人で頑張ろう。お互いにエール送り合って音楽の道 極めよう。もう一度言います。僕と結婚して下さい。
音:はい。
裕一:やった~! アハハ!
(2人の接吻)
光子:あ~!
(お茶を廊下にこぼす光子)
(お茶ですべり転ぶ三郎)
三郎:あちっ! あちちっ! あちあち…。
音:あっ!
裕一:えっ?
(着替えた三郎)
音:お父さんの浴衣着て並ぶと 何か夫婦みたい。
三郎:冗談じゃねえ。俺にはまさっつう女房がいんだ。
音:どんな方なんですか?
三郎:優しくて思いやりがあって いっつも家族のことを考えてる女だ。俺にはもったいねえ。へへへ…。…で どうすんだ? 裕一。
裕一:音さんと結婚します。許して下さい。
三郎:留学はどうすんだ?
裕一:行く。
三郎:2人じゃ行けねえぞ。
音:私 努力して力つけて期待されるような歌手になって追いかけます。
三郎:お~見上げた根性だ。
音:本気です!
三郎:しかしな ここの家じゃ 女が生きてえ道生きんのが普通みてえだけど 世間は違うぞ。裕一が養子に行く親戚は特に頭が固い。
裕一:父さん…反対なの?
三郎:俺は男だからとか女だからとかでねえ みんな 人間だ。
音:お父さん…全くそのとおりです! ますます裕一さんと結婚したくなりました。
三郎:さっきも言ったが そういう考えしてんのは俺だけだ。歌手になりてえ女と結婚許すとは思えねえ。あんた…もし「結婚は許す。歌手は諦めてくれ」って言われたらどうする? 裕一「結婚は許すが音楽の道は諦めてくれ」と言われたら どうする?
光子:三郎さん あなたが頼りです。そちらのご一族を説得して下さい。2人のために 2人の夢のために。よろしくお願いします。
三郎:あ…あんた さっきまで反対してたじゃねえか!なして 急に変わったんだ?
光子:あの…2人が…あの その…。
三郎:何だ?
光子:せっ…。
三郎:何だよ はっきり言えよ。
光子:あの…2人が接吻しとるところを見ちゃったの!
裕一:いや…えっと…。
光子:汽車は走りだしました。もう止まれません。
三郎:どうにも あなたの言ってることが理解できねえ。
光子:裕一さん。
裕一:は…はい はい! あっ…はい?
光子:確かに あなたは未来を嘱望される作曲家かもしれんけど 私に言わせればまだ一曲しか認められてない ひよっこ。
三郎:おい!
光子:諸手を挙げて喜べる男じゃない。それでも あなたに託すの。何でだと思う?
裕一:せ…接吻したからですか?
光子:バカ! 違う! あんたっていう人間を信じとるの。頭は駄目と言っとるけど心が行けって叫ぶの。だから…しょうがない。許す! 私は。
裕一:あ…ありがとうございます。
三郎:支離滅裂だけど…。
音:気持ちは伝わるでしょう?
三郎:お父さん 大変だったろうな。
音:黒蜜が出たって いつも言ってました。
(笑い声)
光子:音を幸せにすると誓って。
裕一:は…はい。
光子:「私 古山裕一は」。
裕一:わ…私 古山裕一は 音さんを幸せにすると誓います!
光子:音。
音:はい! 私 関内音は 裕一さんを幸せにすると誓います!
光子:よし! あとは三郎さん 古山家の許しを頼みます。
三郎:何だか分かんねえが…まあ 俺に任せとけ。ハハハ…なっ!
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。