朝ドラ「エール」第34話、裕一と久志が再会。裕一がレコード会社の専属作曲家になっていると聞いた久志は、自分の目は正しかったと話す。曲が採用されない裕一に「いつか必ず道は開ける」と久志は励ますが、その機会は訪れないまま、さらに半年が流れて…。
来期の契約金は今期の半額の1700円と言い出した廿日市。しかし「私にはあなたの音楽家としての価値を守る義務があるの」と、音が廿日市に直談判。
裕一をコロンブスレコードに推薦したのは小山田耕三先生だと分かり、それを逆手に取って、前年同様に3500円で交渉成立。
思うに、小山田先生が裕一をコロンブスレコードの赤レーベルの専属作曲家に推薦したのは、西洋音楽のジャンルで確固たる地位を築いている自分の権威を守るためではないかと。
裕一のような有望な若者を西洋音楽を扱う青レーベルではなく、流行歌の赤レーベルに追いやって、西洋音楽をやらせないという思惑じゃないかと邪推してみました。
5月14日15日に微力ながら参加させていただきました。
志村けんさんのご冥福をお祈りすると共に、この作品に関われた事を感謝いたします。#志村けん#二階堂ふみ#窪田正孝#中野笑店 https://t.co/1EgJxbL0e8— 世志男 (@seshiospd) May 12, 2020
エール(34話5月14日)セリフ
裕一:本当に? いや…えっ?
木枯とカフェーに行ったことで裕一と音は大げんか。
裕一:あっ!
音:女! カフェーでやる必要はないでしょ!?
裕一:君がそんな わからず屋だったとは お…思わなかった!
♪
久志:古山? いや 僕だよ…佐藤久志。
そんな中 裕一は思わぬ形で久志と再会するのです。
裕一:えっ!? 久しぶり!
●古山家・居間
久志:まさか こんな形で君と再会するとはね。
裕一:本当にびっくりだよ。
音:どうぞ。
久志:ありがとう。いい器だ。すてきだ。
(せきばらい)
久志:あっ…誤解のないよう言っとくけど 音さんと会っていたのは あくまでも相談に乗ってただけだ。ただ単純に純粋に先輩として彼女に何か助言ができたらと。
裕一:ふ~ん。
音:そうよ 変な勘違いしないでよね。あなたとは違うんだから。
裕一:まだ そんなこと言ってんの?
久志:ちょっと どうしたの? けんか中? ちょ…いや…ねえ。僕に免じて 仲直りしてよ。
裕一:意地…意地張ってごめんね。
音:いいよ。
久志:フフッ そう それでいいの。夫婦は仲よくしなくちゃ。レコード会社の専属作曲家か。やっぱり僕の目は正しかったな。
音:えっ?
久志:5年生の時に作曲してくる宿題が出てね。
(回想)
裕一:曲作るなんて で…できないよね。
久志:西洋音楽聴いているなら作曲は簡単だ。やってみたらいい。
裕一:で…でも…。
久志:できるよ きっと。
(回想閉じ)
久志:彼が作った曲は先生に絶賛されて 学校でも一躍有名人になった。
音:へえ~。
久志:つまり あの時 僕が背中を押したからこそ今の君がある。
裕一:フフフ…久志 変わんないな。
久志:仕事の方はどうだい? 忙しいのか?
裕一:曲は毎日書いてっけど なかなかうまくいかないよ。
久志:まあ 焦ることないさ。君は選ばれし者なんだ。いつか必ず道は開ける。音さんだって そう思うでしょ?
音:はい。
久志:僕も応援する。
裕一:ありがとう。早く認めてもらえっといいんだけどね。
久志:うん。
でも その機会は一向に訪れる気配がなく…。
●コロンブスレコード・文藝部
裕一:えっ…。
それから半年が過ぎても 道は閉ざされたままで。そればかりか 更なる試練が待ち受けていました。
裕一:失礼します。
廿日市:来期の契約料…。
裕一:はい。
廿日市:1700円でいいかな?
裕一:1700…。い…今の半額ですか?
廿日市:初年度の契約金3500円。あれ 印税の前払い金。知ってるよね?
裕一:は…はい…。
廿日市:君はさ~この一年 レコード一枚も出せてないわけよ。本来 会社はその金 返せって言える権利あるのよね。っていうか 普通 クビだよ。
裕一:はい…。
●古山家・玄関
裕一:ただいま。
音:お帰りなさ~い!
裕一:うん? 何…どうしたの?
音:フフッ。
裕一:うん? 何?
音:ほほほ…。
裕一:うん? うん?
●古山家・洋間
音:はい どうぞ。
裕一:うん? な…何これ?
音:何だと思う?
裕一:いや 分かんない。えっ?
音:ジャ~ン!
裕一:ち…蓄音機!?
音:そう! 裕一さん 欲しいって言っとったでしょう。
裕一:い…ああ ああ… うんうん!
音:音楽の仕事に必要なものだし 裕一さんの気分も上がるかなと思って。…で せっかくだから奮発して最新型にしました。
裕一:ふ…奮発…奮発?
今のお金にすると さ…30万円ぐらいです。
♪~(レコード)
音:うん?
(回想)
廿日市:来季の契約料…。
裕一:はい。
廿日市:1700円でいいかな? 2年目も契約続けるなんて これ すっごい温情だと思わない?
裕一:まあ…。いや でも あの…。
廿日市:そろそろ利益出してよ~。そのための専属作曲家でしょ?
(回想閉じ)
(翌朝)
裕一:頂きます。
音:頂きます。
裕一:音。
音:うん?
裕一:昨日ね…。(小声で)会社で あの契約の話されて…。
音:うん?
裕一:えっ? うん? えっ? ああっ…蓄音機 あれ いいね。すごくいいよ。ありがとね。
音:よかった! やっぱり うちで音楽が聴けるっていいよね。
裕一:いいよね! うん。
音:そうだ…この際だから 頑張って 新しくピアノも買う?
裕一:ピ… いや ピアノ!? いやいや大丈夫…それは大丈夫だよ。それは大丈夫だから うん。
音:どうしたの?
裕一:えっ? うん?
音:裕一さん 変。
裕一:そ…そんなことないよ。魚の干物 これ 大きいね。
音:普通のアジの干物だけど。
裕一:いや…いつもより大きいよ うん。これ ちょっと ぜいたくすぎるな うん。
音:ぜいたくかな~?
裕一:うん ぜいたくだね! 大きいもん。うん…大きい 大きい…。
音:本当 どうしたの?
裕一:音…ら…来年から…契約が…。
音:うん?
裕一:ら…来年から…契約金が減らされっことになりそうです。
音:えっ…どういうこと!?
裕一:きょ…去年の3500円から今年は1700円になりそうです。
音:はあ!?
裕一:いや…本当にごめん!
音:何考えとるの!?
裕一:ほ…本当に…本当にごめんなさい!
音:何で裕一さんが謝っとるの?
裕一:だって これもひとえに 僕がふがいないせいだから!
音:違うよ!
裕一:えっ?
音:私は会社に怒っとるの。半額なんて冗談じゃない。その話 まだ承諾しとらんよね?
裕一:正式な契約は…ま…まだだけど…。
音:よし…今から行ってくる。
裕一:ちょちょ…音 音! が…学校は?
音:こういう時はすぐ動く! こっちの本気を見せなくちゃ。
裕一:音 音 音…。ねっ 音。ひとまず落ち着いて。ごはん食べよう。
音:裕一さん 私にはあなたの音楽家としての価値を守る義務があるの。
裕一:はい…。
音:行ってきます!
裕一:ちょ…音…音~! 音~!
●コロンブスレコード・第一スタヂオ
音:失礼します。
杉山:何ですか?
音:廿日市さん 少々 お時間よろしいでしょうか?
廿日市:よろしいでしょうかって そんな急に来られましても…。
小山田:こちらは?
音:私 専属作家としてお世話になっております古山裕一の家内でございます。
小山田:古山…。
廿日市:奥さん… 小山田先生 申し訳ございません。
小山田:いや~構わんよ。帰るところだからね。じゃあ また明日。
廿日市:あっ よろしくお願いします。今日はお疲れさまでした。あ~そこまで お見送りいたしましょう。お見送り…。
♪
杉山:大変失礼いたしました!
♪
音:なぜ 契約金の減額なんて話になるんでしょう?
廿日市:立派な賞を取ろうがどうしようが 庶民が喜ぶ音楽を作れなきゃプロとして失格なんですよ! うちの会社が出してるレコードが赤レーベルと青レーベルに分かれてることはご存じですよね? 赤レーベルは流行歌。青レーベルは西洋音楽。古山君は赤レーベルの作曲家です。この赤レーベルは居酒屋のおじさんたちに聴かせる音楽なんです。彼はそこんところが分かってないんじゃないかな~?
音:どういうことでしょう?
廿日市:余計なことをするんですよ。普通に盛り上がるメロディーを作ればいいんです。それを西洋音楽のこざかしい知識をひけらかし音楽を台無しにしている! そういうところが鼻につくんです!
音:分かりました! その点につきましてはご要望にお応えできるようにします。ですから…。
廿日市:やっぱり 向いてないんじゃないかな~? 小山田先生はどうして彼なんかを推薦したんだろう?
音:小山田先生って…もしかして 先ほどの?
廿日市:去年の夏 奥さんが売り込みに来たじゃないですか。そのあと 小山田先生から突然言われたんです。
回想・小山田:君のところでな 契約してほしいんだよ。
音:でもなぜ 小山田先生が?
廿日市:こっちが聞きたいですよ。というわけで 契約金の件は了承して下さい。もういいですか?
音:ということは つまり…廿日市さんは小山田先生を随分と軽く見ていらっしゃるってことですよね?
廿日市:はあ!?
音:だって そうじゃないですか。先生のご紹介で専属契約した主人を こんなぞんざいに扱うなんて。
廿日市:いやいや ぞんざいって…。
音:そうだ。いっそ 先生に直接お願いした方が話は早いかもしれませんね。私 お話ししてきます。まだお近くにいらっしゃいますよね?
廿日市:ちょちょ…ちょっと待った!
●古山家・居間
音:というわけで 無事 去年と同じ3500円で交渉成立しました。
裕一:お…お…音! す…すごいな!
音:だけど 今回ははっきり言われちゃった。契約金は前払い金だから レコードが売れんかったら返済しろって。
裕一:借金が増えたってことだよね?
音:そうとも言うよね。
裕一:うん…だね。
音:大丈夫! なんとかなるよ!
裕一:うん…だといいんだけど。
音:あのね…今日 小山田先生に会った。
裕一:えっ えっ えっ!?…うそ!
音:裕一さんが専属契約できたのは 私の売り込みじゃなくて 小山田先生の推薦のおかげだったみたい。
裕一:推薦? えっ? ぼ…僕を? だて ぼ…僕 先生に会ったこともないよ。
音:裕一さんが国際作曲コンクールで入賞したこと 先生 ご存じだったんじゃないかな? それで将来有望な若者がいるって思ってくれたんじゃない?
裕一:せ…先生が…僕を?
●東京帝國音楽学校・廊下
久志:へえ…あの巨匠に目をかけてもらったのか。
音:見てくれとる人は ちゃんと見てくれとるんですね。
久志:でも 音さんもすごいな。会社に直談判しに行くなんて。大した行動力だよ。
音:じっとしとれんタチで。
久志:その行動力 自分のためにも使ってみたら?
音:えっ?
久志:鷹ノ塚記念公演の選考会 募集始まるみたいだよ。
(「椿姫」出演者募集の張り紙 募集期限 昭和六年九月)
●コロンブスレコード・作曲家ルーム
作曲家A:やっぱり そうですよ…。
作曲家B:ああ…。貫禄あるよな…。
作曲家A:ええ。
裕一:小山田先生…。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。