朝ドラ「エール」第44話、千鶴子「私はね 子どもの頃から音楽のために全てを犠牲にしてきたの。なのに あなたは…音楽も家庭も友達も恋愛も 何でも欲しがって手を伸ばす。あなたみたいな強欲な人に私は負けるわけにはいかないの。私は…私の全てを懸けて ヴィオレッタを勝ち取ってみせるから」。
希穂子「お引き取り下さい。分からない? 迷惑してるの。本当のことを言いますね。福島を離れたのは あなたが重荷になったからです。勘違いされて困ってたの。お帰り下さい」。
女の意地と恋の機微。強欲な音と軟弱な裕一。全ての対比が美しく感じられる5月28日です。
エール(44話5月28日)セリフ
●東京帝國音楽学校・教室
(あくび)
潔子:音さん 今日も眠そうね。
和子:また カフェーの仕事で夜更かし?
音:ううん。昨日は主人の友達が泊りに来てて 酔って暴れて大変だったの。
(回想)
鉄男:最低だ! 俺がグズグズしてっから 希穂子に見限られたんだ!
裕一:お帰り。大将…。
鉄男:ああ~希穂子~!
(回想閉じ)
和子:えっ 主人?
潔子:今 主人って言った?
音:うん。
和子:まさか 音さん 結婚してるの?
音:うん。言ってなかったっけ?
潔子:聞いてない!
和子:うそでしょ?
潔子:えっ? 人妻で学生でカフェーの女給ってこと?
音:カフェーは今日で終わりだけどね。楽しかったよ。すごく勉強になった。ああ…。
●東京帝國音楽学校・レッスン室
千鶴子:最終選考まであと少しなのよ。必死で練習するのが普通じゃないの?
音:私だって必至だよ。
千鶴子:そういうの…必死って言えるのかしら?私はね 子どもの頃から音楽のために全てを犠牲にしてきたの。なのに あなたは…音楽も家庭も友達も恋愛も 何でも欲しがって手を伸ばす。あなたみたいな強欲な人に私は負けるわけにはいかないの。
音:強欲?
千鶴子:私は…私の全てを懸けて ヴィオレッタを勝ち取ってみせるから。
●喫茶店「バンブー」
恵:は~い どうぞ。
鉄男:ありがとうございます。
裕一:あっ トーストを2つ。
恵:うん。
鉄男:ホットケーキもつけていいぞ。ここは俺が持つ。
裕一:じゃあ…。
恵:フフッ。顔がいい人が言うこともかっこいいわね。
保:顔がいいから かっこよく聞こえるんじゃないか?
鉄男:昨日は本当に悪がった。
裕一:いやいや…みんな いろいろあるよ。
鉄男:会社は何時からなんだ?
裕一:ああ…出勤時間は自由だから。大御所になると出社しない人もいる。
鉄男:へえ~そういうもんなのか。
裕一:うん。
鉄男:…で どうなんだ? 仕事の方は。
裕一:うん…。
鉄男:「紺碧の空」のおかげで 評価 上がったんじゃねえか?
裕一:そうでもないよ。この前ね 地方小唄の話あったんだけど…うまいこといかなかった。
鉄男:地方小唄?
裕一:うん…。
●古山家・寝室
吟:人妻がカフェーの女給って あんた何考えとんの?
音:お母さんとか梅には言わんでよ。めんどくさいから。
吟:言うにきまっとるじゃん。こんな面白い話ないわ。
音:お姉ちゃんはどうなっとんの? 結婚の準備。
吟:式の日取りが決まったとこ。最近気付いたんだけど うちの人 何だかんだで亭主関白なんだわ。裕一さはいい旦那様よね。何でも あんたの好きにさせてくれて。
音:お姉ちゃん…。私って 強欲?
吟:やだ…今頃 気付いたの?
音:やっぱ そうなんだ。
吟:それがあんたのいいところじゃんか! 人間 欲がなくなったらおしまいよ。強欲上等!
音:強欲上等…。そっか…。あっ! ちょっと それ 高かったんだからやめてよ!
吟:いいじゃん ちょっとぐらい…。
音:ちょっと…本当駄目…。
吟:かわいい!
音:やめりん やめりん!
●カフェー「パピオン」休憩室
音:ああ…もう こんな減って…。
(ノック)
音:どうぞ~。あっ…。
希穂子:音江さん。ゆうべはお騒がせしてごめんなさいね。
音:いえいえ…あの…。
(ノック)
ママ:音江ちゃん いよいよ最終日ね。
音:一週間 お世話になりました。
ママ:残念だわ…。あなた 鍛えれば一流になれそうなのに…。
音:えっ? 怒られてばかりでしたけど…。
希穂子:見込みがあるから怒られたんじゃない?
ママ:さすが希穂子ちゃん そのとおりよ。それぐらい 言われなくても察しなさい。ここで何勉強したのよ。
愛子:ママ 大変です! この前の人が…。
<<鉄男:話すだけですから。
●カフェー「パピオン」ホール
鉄男:何でですか!
ボーイ:出てけよ!
鉄男:別にいいでしょ 話すくらい!
ボーイ:出てけって言ってんだよ。
鉄男:少しですからお願いします!
ボーイ:無理なんだよ。
鉄男:希穂子…。ちゃんと話がしてえ。少しでいいから時間くれねえか?
希穂子:お引き取り下さい。
鉄男:希穂子…。
希穂子:分からない? 迷惑してるの。本当のことを言いますね。福島を離れたのは あなたが重荷になったからです。勘違いされて困ってたの。お帰り下さい。
(ドアが開く音)
恋愛の機微を目の当たりにした音のカフェー勤務最終日でした。
●古山家・居間
久志:どうぞ。
裕一:よいしょ…はい 出来たよ。
久志:おっ!おいしそうだ。鉄男君 頂こうよ。
裕一:ほら! 大将 ほら…食べよう ほら!
久志:まあまあ…。
裕一:ああ…ありがとうね。飲もう 飲もう。
♪
鉄男:おっ…そうだ! あん時もおめえが一番に逃げたんだ。
久志:覚えてないな。
裕一:いや 久志の逃げ足の速さはね 学校…いやいや 宇宙一だよ!
久志:危機対応能力にたけていると言ってほしいね。
裕一:あの先生 怖かったけどさ 4年の時 藤堂先生になってくれたの うれしかったな~!
鉄男:ああ…藤堂先生には頭が上がんねえ。
裕一:懐かしいね~。
久志:いいもんだね ふりさとの友達と飲むのは。
裕一:うん!
久志:裕一が鉄男君を東京に呼ぼうって言いだした時はさすがに驚いたけどね。
裕一:あっ ごめんごめん。あの時はね もう本当に舞い上がってました。
鉄男:いや…うれしかったよ。ここ最近 詩 書くことなんて忘れてたから。
裕一:いや…しかたないよ。仕事だってあるしね。
鉄男:実は…書いてみたんだ。
裕一:えっ? 歌詞書いたの!? えっ? み み…見せて 見せて! えっ?
久志:「福島行進曲」。
鉄男:俺なりの福島を書いてみた。
裕一:いい…すごくいい。す…すごくいいよ これ! ねっ?
久志:ああ いいよ! 恋の歌だな。
鉄男:ああ。
裕一:「紺碧の空」書いた時ね 歌詞に共感するって すっごく すっごく大事なんだって分かったんだよ。こういう…こういう…心にグッて グって来る こういうの ずっと待ってた! 俺ね…福島捨ててここに来たんだ。でも…忘れたことは一度もない! 大将が思い乗せたこの歌詞で もう一度…もう一度 ちゃんと福島と向かい合いたい! 大将 いや…鉄男。僕に…この詩で…この詩に曲をつけさせてくれ!
鉄男:分がった。いい曲つけてくれよ!
裕一:ありがとう! ありがとう…。久志 歌ってくれるよな?
久志:僕以外…いるの?
裕一:クッ フフフ…。
♪
鉄男:んん…。
(いびき)
●コロンブスレコード・文藝部
廿日市:「福島行進曲」。
裕一:はい。地元で新聞記者やってる友人が書きまして…。あっ もともと作詞家志望でかなり才能のある男なんです。
廿日市:ふ~ん…。
裕一:歌い手は今 東京帝國音楽学校で声楽の勉強してる 僕の友人 佐藤久志に頼もうかなって…。
廿日市:ちょっと黙ってて。
裕一:あっ はい。す…すいません。
廿日市:そうねえ…。
杉山:私はとてもいい曲だと思いますが。
廿日市:えっ そう?
杉山:横浜の地方小唄は結局 流れてしまいましたし ほかのレコード会社がまだ目をつけていない 東北方面の地方小唄なら話題にもなりやすいかと。
廿日市:あっ そう… じゃあ これで作ってみようか。
裕一:えっ?
こうして 裕一の初めてのレコードが吹き込まれることになりました。
●コロンブスレコード・第三スタヂオ
裕一:あっ…今日はよろしくお願いします。
杉山:よろしくお願いします。スタジオへご案内します。
ただし 歌うのは久志ではなく廿日市が連れてきた女性歌手。無名の学生をいきなり起用するのは さすがに難しかったようです。
小田:いつでも始められるよ。
裕一:では…。
川野三津代:♪「福島行進曲」
胸の火燃ゆる宵闇に
恋し福ビル引き眉毛
サラリと投げたトランプに
心にゃ金の虹愛の影
上京して2年 ついに裕一はプロの作曲家デビューを果たしたのです。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
「エール」ネタバレあらすじとセリフを最終回まで!キャスト紹介も。