朝ドラ「エール」第60話、プッチーニの自信作「蝶々夫人」、しかしその初演が最悪の評価。キャストを一新して起死回生を狙うことになり、環に再びチャンスがめぐってきて、ついに主役の座を射止めるが…。
一方、個展を開いても凡庸だと新聞記事で酷評された嗣人は、成功の道を駆け上がる環への嫉妬で苦しみはじめ、ついには禁断の言葉を口にするのだった。
君の…失敗を願ってる。どんなに喜ぼうとしても…心の底から嫉妬があふれてくる。俺は…君といる俺が嫌いだ。君といると…俺はどんどん やなやつになる。俺は…君という光の影でいるのは…耐えられない。環…。歌を…歌を諦めてくれ…。君を愛してる。頼む…頼む…。
大吉師匠が「大声出す男は嫌だ」みたいなことを言っていましたが、深く同意。そして批評家ピエールは、トルシエ監督の通訳だったフローラン・ダバディで、嗣人の友人の利彦は、竹下景子さんの息子の関口アナンでした。
エール(60話6月19日)セリフ
嗣人:フランスへは?
環:オペラ歌手になるため 2か月前に来ました。
♪
嗣人:世界を目指してるんだろ? 一緒に行こう。
♪
環:日本が舞台のオペラ?
里子:タイトルは「蝶々夫人」。
♪
環:よし。
里子:「蝶々夫人」のオーデションに押しかけた?
♪
嗣人:僕の絵を気に入ってくれた画商が現れたんだ。個展開けるかもしれない。
環:わ~すごい! すごいわよ!
♪
環:わ…私 一次審査 通ったの! うれしかったの!
●パリ・嗣人と環のアパート部屋
嗣人の待ち望んだ個展が開かれました。そして一夜が明け…。
(机をたたく音)
新聞記事「ただただ凡庸。すべてがものまね。若き日本人画家への期待は裏切られた」
秋
秋のある日 イギリスからアダムという男が訪ねてきました。舞台や展覧会をプロデュースする彼には ある目的がありました。
アダム:(英語で)イタリアでの二次審査は残念でした。しかし彼女には才能を感じました。紹介願えますか ミス双浦に。
嗣人:(英語で)もちろん。環 こちらアダムさん。君を紹介してほしいそうだ。
アダム:(英語で)はい 環。あなたにお話しがあってきました。あちらで詳しくいいですか?
嗣人:僕がやるから行きな。
環:ありがとう。
アダム:ハハッ カム カム。
利彦:君の奥さん 最近 話題だよ。
嗣人:妻じゃない。
利彦:…なら 早く妻にしといた方がいい。どうもプッチーニが目をつけてるらしい。
嗣人:えっ?
利彦:ほら 例の「蝶々夫人」自信作だったのに 初演 最悪の評価だったろう。起死回生に狙ってんのが日本人の役を日本人でやるってことみたい。あの外国人も それで来たんじゃないの? あっ 里子ちゃん この前のレストラン いつ行く?
♪
嗣人:環。
環:お酒はもう駄目よ。
嗣人:さっきの…何てったっけ? あの…アダムっていう外国人 何の話だったの?
環:ロンドンでオーデション受けないかって。
嗣人:うん…何のオーデション?
環:「蝶々夫人」。オペラハウスの公演はキャストを一新してやるんだって。どう思う?
嗣人:どう思うって何が?
環:受けていい?
嗣人:ああ…当たり前じゃないか。大きなチャンスだよ。
環:まだ先の話だけど 1か月くらい行かなきゃいけないし 大丈夫かなって。
嗣人:大丈夫って 僕が? 僕の何が心配なの?
環:ううん…許してくれるなら行く。
嗣人:結婚してるわけじゃないんだ。許すもへったくれもない。行きたければ行けばいいさ。
環:嗣人。
嗣人:何?
環:うれしくないの?
嗣人:あっ…。うれしいさ…うれしいに決まってるだろう!
(雷鳴)
冬
利彦:環さんはロンドン?
友人:環さんって美人だよな~。
友人:日本人界わいではかなり有名人です。
友人:ハハッ 冗談 冗談。環さんは嗣人にほれてるから。
利彦:お前いいな~。あんな彼女がいて。
友人:俺もあんな彼女 欲しいわ~。
嗣人:もう 環の話はいいよ。
利彦:そもそも 環さんとはどこで知り合ったの?
嗣人:もういいって!
利彦:何? どうしたの?
嗣人:はあ…悪い。今日はやめよう。
●ロンドン・ホテル
環はオペラハウス公演の最終オーデションに残っていました。
里子:探したよ~。
環:あった?
里子:いよいよ 明日だね。自信は?
環:ある!
里子:おっ!
環:ない。
里子:えっ?
環:ある!
里子:はあ?
環:ない。
里子:フフッ どっちよ。
環:どっちもない。ただ 楽しみなだけ。
里子:3人まで残っただけでもすごいけど。
環:う~ん…でも ここで負けたら一緒だから。
里子:実はね 私も昔 バレエで世界 目指してたの。
環:えっ そうだったの?
里子:二十歳の時 諦めた。差別と体格差がどうしようもなくて。
環:里子ならまだ目指せるよ!
里子:気休め 言わないで。
環:ご…ごめん。
里子:正直 悔しいの。あなたと私は違う。ごめんごめん。どうでもいいことだ。今 あなたの前にはオペラハウスがあるの。それをつかみ取る。それだけに集中して。ねっ?
環:里子…。いろいろ ありがとう。
里子:世界をギャフンと言わせて。
♪~(歌声)
●パリ・カフェ
(フランス語の会話)
フィリップ:座るよ。君は画家なの?
嗣人:はい。
フィリップ:僕も昔 画家を目指していたんだ。もしうよかったら このカフェで個展を開かない?
嗣人:えっ?
フィリップ:君さえよければ!
●パリ・嗣人と環のアパート部屋
嗣人:お帰り。
環:ただいま… 今 逆だけど。
嗣人:どうだった?
♪
嗣人:またチャンスはあるよ。
環:違うの…。合格したの。私…オペラハウスに立つ。
嗣人:フフフフ…。
環:どうしたの?
嗣人:アハハ…フフフフ…。
環:嗣人さん?
嗣人:傑作だ! 俺が…街のカフェで個展をやらないかって言われていい気分になってる時に 君はオペラハウスだ。バカみたいだ…。何を喜んでるんだ! 俺と君の何が違うんだ?俺は…。
環:やめて! やめて…やめて!
嗣人:くそ くそ くそ…。
環:嗣人 しっかりして! あなたには才能がある!
嗣人:うわべの言葉なんかいらない!
環:本当に思ってる! 心底思ってる!
嗣人:どうして分からないんだ…。その優しさが人を苦しめるのに! どうして…どうして…。
(すすり泣き)
嗣人:君の…失敗を願ってる。どんなに喜ぼうとしても…心の底から嫉妬があふれてくる。俺は…君といる俺が嫌いだ。君といると…俺はどんどん やなやつになる。俺は…君という光の影でいるのは…耐えられない。環…。歌を…歌を諦めてくれ…。君を愛してる。頼む…頼む…。
(すすり泣き)
●パリ・カフェ
(フランス語の会話)
フィリップ:おめでとう!
環:あったかい。
フィリップ:どうするんだい?
環:私は光でいたい。傲慢ですか?
フィリップ:自分に嘘をつくことが最大の罪です。それでいい。それが君の人生だ。
春
●パリ・カフェ
新聞記事「蝶々夫人が環によってよみがえる。オペラハウスに続きニューヨーク公演も成功!」
(フランス語の会話)
ピエール:この絵を譲ってもらえないか?
フィリップ:批評家のピエールだ。
嗣人:…その絵はだめです。
ピエール:他は凡庸だが この絵だけは素晴らしい。
嗣人:ありがとう。でもその絵はだめです。
ピエール:そう残念だ。僕は君のことをこき下ろしたが この絵を描けるならまだ将来はあると思うが。
嗣人:では無理です。もうそんな女性にはめぐり逢えませんから。
ピエール:そう…残念だ。
(つづく)
●字幕を追って書いておりますが、100%完全ではありませんので、どうかご容赦下さい。●セリフに関してはその著作権等、一切の権利はNHKさんにあります。
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